第15話 『闇の皇女』

「さてと……だいぶ・・・、予定が変わっちまったな」


 俺は半壊した王城を眺めて、ため息交じりに呟いた。定番ならレティシアと共に魔族の対策を練りつつ、帰還方法を探っていく流れだがそう上手くはいかんか。


「タクミ、すまない。エレナは逃がしてしまったわ」


 レティシアは、負傷者の手当て等の指示をテキパキこなしていた。こっちの方が、よっぽど国のリーダーに向いてるな。

 とっ捕まえて、色々と訊きたかったのだろう。あのウスラトンカチ(ダイヤ)では、訊いたところでロクな答えが返ってこないし。


「まぁこれだけの損害で、死者が出なかったのは奇跡だろ。エレナもそのうち、ひょっこり出てくるんじゃねーか?」



「それなら、お言葉に甘えさせてもらうわ」


 なっ……!? 驚いて振り向く俺たち。そこには、手負いのエレナの姿があった。レティシアにやられた傷が、まだ癒えてないのだろう。


「……さっきの雪辱戦リベンジマッチってか? アンタはダイヤと違って、明敏めいびんだと思ってたがな」

「エレナ、止めておきなさい。私とやっと互角の貴女が、タクミに敵うはずがない」


 レティシアもかなり強いけどな。エレナは動じるどころか、不敵な笑みを浮かべている。


「……何を笑っているの?」


「フフ、こんなに早くレティシアが認めるなんてね。あの娘・・・もさぞ喜ぶわ」


……あの娘? 確かダンジョンでも、そう言ってたな。前から気になってはいたが……っ!?


「……タクミっ!」

「レティシア、警戒しろ! 何か・・来る……!」


 俺たちが身構えると、空間にヒビが入った! これは……!? 何よりこのプレッシャー、闇竜に匹敵するぞ!

 やがて、ヒビから一つの影が見えた。女……!? 銀髪ロングに朱色の瞳……異世界モノって、こういうキャラも多いよな。


「ふぅ……やっと抜けたのね? どうも『次元渡航ロード』は慣れないわ」


「お待ちしてました。我らが闇の皇女、アリシア・グレイス・ヴェルサス様」


 なっ……!? 闇の皇女だと? まさかボス級が、直接乗り込んでくるとは……。


「闇の皇女……!? なんでここに……それ以前にどうやって……!」

「まぁ落ち着きなさいな。一つずつ答えるから」


 苛立つレティシアを、アリシアはせせら笑った。この二人、見るからに相性悪そうだな。


「まず私は異界の居城から、次元連結で道を『造り出して』ここまで来たわ」


 次元を連結……!? 簡単に言ってるが、そんなことが可能なのか?


「何を驚いているの? 私の膨大な魔力を持ってすれば容易いわ」


「……で? 闇の皇女様が、我が城になんの用かしら」


 アリシアはレティシアをガン無視して、俺を直視した。なんだ……?


「事の顛末てんまつは、エレナから聞いたわ。タクミ・セナ……あなたを『スカウト』しに、私が直々に出向いてあげたわよ?」



…………は?

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