第10話 『とっておき』

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 ◆ ◆ ◆



「――熱閃ファイアボルトっっ!!」


 俺はありったけの弾幕を張ったが、闇竜は全く意に介してなかった。こりゃ薄くて何やってんの!? って、レベルじゃねーな……。


 この様子じゃ風刃エアロカッター蜘蛛糸ウェブシュートも通じないだろう。ったく、常時アーマー状態とか反則だろ……。


 闇竜が大きく息を吸い込んだ! ブレスか……!? だが、吐かれたのはただの吐息で、それでも俺は猛烈な風圧で吹き飛ばされた!


……完全に舐めプされてんな、お前ごときにブレスは勿体ないってか?


 尚も闇竜は、ノッシノッシと緩慢に近づいてきた。トドメすら、面倒だと思われてんのか? その瞳は「まだ女の方が楽しめた」と物語っていた。


「……なんでだよ」


 俺は拳を握り締め、闇竜を睨んだ。


「なんで俺が、こんな目に遭わなきゃならねぇんだ!? 俺は『被害者』だぞっ!? 一方的にこんな世界に飛ばされて、お前みたいな奴に殺されろってか!? 意味が解んねぇよ!!」


 グルルル……闇竜は目を細め、低く唸った。まるでわらっているようにも見える。それが俺のきん線に触れた。


「……救いはねーのかよ? 誰か答えろよ……答えろよぉおぉおおおおおおおおおおおおっっ!!」


 闇竜が大きく口を開けた。一思いに喰ってやろうってか? まるで憐れみすら感じた。



――今だ・・っ!


熱閃ファイアボルトっっ!!」



 奴の大口に、最大熱量の熱閃ファイアボルトをお見舞いした! これには、流石の闇竜もけ反った!


「こうも上手くいくとは。少し遊びが過ぎたみてぇだな?」


 闇竜はグルルル……! と、俺を鋭く睨んだ。


「おっと? 卑怯とか言うなよ。お前はいつでも俺を殺れたにも関わらず、敢えて・・・そうしなかった。そーいうのを油断スキって言うんだよ。まーお陰さまで、俺も新しい『創作』が出来たしな」


 頭の上に「……????」を並べる闇竜。


「あー分からねぇならそれでいい。威力はその身で確かめてくれ。虚空渦ブラックホール……!」


 ボッ……! 俺の掌に超小型の『闇』が生まれる。闇竜に放つと、着弾と同時に『穴』は肥大化し『全て』を飲み込み始めた!

 これには闇竜も慌てて、もがき始めるがもう遅い。俺の『とっておき』だからな。


 このスキルの欠点は、射程圏内の対象を全て飲み込んでしまう。なので間違っても街中では使えないし、当然味方も巻き込むからレティシアは安全な場所へ避難させている。


――グォオォオオオオオオオオオオオオッッ!!


 闇竜が怒りの咆哮ほうこうを上げ、大きく息を吸い込んだ! 野郎っ……最後の悪あがきで、俺だけでも始末しようってか!?


 マズい……! スキルの展開中は、一切他の行動は出来ない!


「クソッ、爪が甘かったか……!?」

「……そう思う前に半歩、脇に逸れなさいっ!」


 この声はレティシア……!? もう意識を取り戻したのか。俺は迷わず、指示通りにした。


終の秘剣ラストシークレット……光の螺旋オーロラっ!」


――ゴォオォオオオオオオオオッッ!!


 虚空渦ブラックホールに負けず劣らずの光の放流が、俺の脇をかすめた! ラストって事は、これがレティシアの切り札か……。今さらだが、彼女が敵でなくてよかった。


 光の螺旋オーロラはブレスを真っ二つに斬り裂き、闇竜はそのまま虚空へと呑まれた。俺たちの勝利かちだ。


「闇竜よ、お前の敗因は至って単純シンプルだ。俺たちを開幕ハナから甘く見た。お前の行き先は、誰にも判らん。けど、二度とこっちに出てくるなよ?」


 あんなのがダンジョンから出てきたら、おちおち眠れねぇからな。闇竜は完全に飲み込まれ、ダンジョンに静けさが戻った。


「あーレティシア……その色々とあってだな」


「……とりあえず、ギルドに戻って報告しましょう。タクミ、私もあなたに色々と話がある。長くなるから、今日はじっくりと休みましょう」


 流石にレティシアの提案に、反対はしなかった。俺も立ってるのがやっとだし。こうして、俺のハードな『初任務』は完了した。

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