第7話 『初任務』
俺は『一角獣』のメンバーとなり、安い宿に一泊した。一晩明け、今日は『初出勤』だ。俺が冒険者ギルドに顔を出すと……
「おはようござい……って、え……?」
「うぃ~
鼻をつく臭いがすると思ったら、ダイヤモンドがテーブルに様々な瓶を並べていた。こいつ、朝から飲んでるのか……!?
「元気だな……って、何やってるッスか?」
「あン? 見りゃ分かるだろ? いやぁなーんもせず、飲む酒は格別に旨いなァ!」
ぷはぁ! 一息を吐くダイヤ。周りも顔をしかめるが、誰も注意しない。
「えっと……? 仕事はしなくていいんッスか?」
「仕事ぉ……? マジメか! 俺らに見合う仕事があんなら、いつでも引き受けるぜ?」
「いや……向こうの壁一面に、貼り紙が貼ってあるじゃないッスか? あれって『依頼』なんじゃないッスか?」
「はぁ? あんな『誰でも出来る』仕事なんて、やるワケないだろ? 『一角獣』の名が廃るってモンだぜ、ヒック……!」
ダメだこいつ……なんだかんだで、働きたくないだけだろ。
「ダイヤモンドくぅん? 朝からご機嫌だねぇ……!?」
ロゼさんが満面の笑みを浮かべながら、バケツ一杯の水をダイヤの頭から被せた。
「あ……アンだぁ!? 敵襲か……!?」
「目が覚めたかい? 依頼だよ、君たち一角獣に『王都』から
目の前に、一枚の書類を突きつけるロゼさん。それを見た瞬間、ダイヤの酔いが一気に覚めた。
「勅令だぁ……!? これまた珍しいな」
「そーいうこと! きっちり働いて、溜まりに溜まったツケを払ってもらうからね!」
ツケまで溜め込んでるのか……ホンマ、大丈夫かいな?
「案ずるなッ、ロゼよ! きっちり出世払いしてやろうッ!」
「朝から何を騒いでいるの?」
レティシアが、ギルドに顔を出した。
「あっ、レティシアさん。ダイヤ……さんが、朝からどんちゃん騒ぎをしてまして……」
レティシアは「またなの……?」と呆れ顔だ。
「あのぉ……皆さんは普段、何してるんッスか?」
「……誤解があるみたいだけど、私は稽古をしてるわ。セレナは研究所にこもってるみたい。必要最低限、ギルドには顔を出さないもの」
まぁ普通、そんなもんだよな。
「うしッ! 滅多にない王都からの依頼だ! 報酬をたんまり貰って、浴びるほど飲む……あ"ばばばばっっ!?」
「キミは◯ぬほど働いて、一年分のツケを払おうね? 借金してでもね!」
ロゼさんに電撃グリグリをされ悶絶するダイヤを他所に、俺はレティシアが「王都からの……!?」と呟いたのを見逃さなかった。
「レティシアさん……? どうかしたんッスか?」
「い……いえ、何でもないわ」
……なら、いいんだが。依頼の内容はダンジョンに潜って、凶悪な魔物の討伐だ。
決行は三日後、万全な準備には十分な時間だ。さて、俺にとっては初任務。他の『異邦人』みたいにならないよう気をつけるか。
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