第6話 『帰還者0』

 俺は『一角獣』のリーダーのレティシアから一本取り、見事にメンバーに正式加入した。


 ◇ ◇ ◇


 冒険者ギルドの片隅の席。俺とレティシア、パンイチの元金ピカ(服着ろよ……)、それに初めて見る魔術師風の女性がいた。

 レティシアの紹介で彼女は、魔術師ウィッチのエレナ。『一角獣』メンバーの内訳は前衛がレティシア、壁役タンクが元金ピカ、後衛をエレナが担当している。


 そこに俺が加わるわけだが、既に完成してるよな。ってことは、新人らしく『荷物持ち』からか? なんか『追放フラグ』が立ったような……(汗)


「さて……改めて紹介するけど、今日からウチに正式加入するタクミ・セナよ」

「タクミです。冒険者初心者ですが、よろしくお願いします」


「「…………」」


 俺が挨拶あいさつするも、元金髪もエレナも黙っていた。明らかに歓迎されてないな、これ。


「……まぁ貴女が強く推すなら、反対しないわ。でも本当に戦力になるの? この坊や」

「セレナ、そこは保証するわ。なにせ彼、私との戦いでスキルを同時・・展開したもの」


 これを聞いたセレナは「……なんですって?」と、やや引きぎみだ。


「……あり得ないわ。そんなの人間わざではないもの。あなた……タクミだったかしら。本当に何者なの?」


「どっからから、迷い込んできた『異邦人』サマだとよ」


 俺の代わりに元金ピカが、皮肉たっぷりに答えた。


「あの……気になってたんですが、その『異邦人』って何ッスか?」

「呆れた……あなた、何も知らないのね」


 いやいや、勘弁してくれ。異世界こっちに来て、まだ『初日』なんだから。


「セレナ、異邦人については私から説明するわ。タクミ、この世界には稀に『迷い込む』人がいるのよ。あなたみたいにね」


 なんと……俺以外・・にも、異世界に来てるのがいるのか?


「私たち現地人は、彼らを『異邦人』と呼んでるわ。彼らが『どこから』来たのか、定かではない。でも『共通』しているのは、いずれもこの世界で『名を上げよう』としたことよ」


「バカげてるよなぁ。選ばれた『特別』な人間とでも思ってたのか? 自惚うぬぼれんなってな」


……まぁそうなんだろうが、元金ピカに言われたくない。


「ダイヤモンド、話の腰を折らないで。でも『現実』は甘くないわ。彼らの多くは冒険者になったものの、ほとんどの者は任務中に命を落としたわ」


「それならまだマシよ。中には街にもたどり着けず、無惨に魔物に喰い殺された者も多数いるわ。自警団も、身元不明の遺体に手を焼いてたしね」


「まー中には冒険者から、都の騎士団に行った奴もいるけどな。音沙汰がないところを見ると、やっぱダメだったみてぇだ。ざまぁってな」


 元金ピカが、不謹慎な笑みを浮かべた。俺は無視して、最も重要なことを訊いてみた。


「えっと……その異邦人の中で、無事に元の世界に還れたのって……」


 レティシアは目を瞑りながら、静かに首を横に振った。


「残念だけど『0』よ、私が聞く限りはね。それでもあなたは、還りたいのかしら?」


……マジかよ。だが、同時に『目標』が出来たな。俺が帰還者『第一号』になってやるよ。


「もちろんッスよ。俺はここで、野垂れ死にたくないッスからね」


「面白いじゃない? あなたのやることに干渉はしないわ。私たちの邪魔さえしなければね」


「せいぜい気張れよ、新人ルーキー。ちなお前が脱落すれば、記念すべき『百人目』だ。腐れ縁で、骨くらいは拾ってやる」


 まぁ言いたい奴は、言わせとけばいい。俺もタダでくたばるつもりは、サラサラないしな。



 こうして俺の『異世界ライフ』は、本格的に始まった。

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