第5話 『異邦人』

 俺の前に突如現れたレティシア。棒立ちしているが、隙はまるでない。俺の中で、一気に警戒度が跳ね上がった。

 そんな俺をよそにレティシアは、他の冒険者から事情を訊いていた。


「成程……つまりあなたは、ウチのメンバーに加入したいと?」

「そうなんッスよ。これって、一応『合格』ってことでいいですかね?」


 まぁ結果はどうあれ、金ピカはKOしたしな。レティシアは少し考えた後に……


「そうね……悪いけど、“追試”をしてもいいかしら? ウチのメンバー、『一角獣』のリーダーは私なのよ。あなた……えっと?」


「タクミ・セナです」


 俺は迷わず『本名』を名乗った。下手に偽名を使って、後で足がついても面倒だしな。


「ではタクミ。私から一本取れたら、あなたを正式にウチに加入させるわ。それでいいかしら?」


「別に異存はないッスよ。お手柔らかに」

「こちらこそ。“全力”を出して構わないわ」


 微笑むレティシア。決して『余裕』を見せているわけではなく、確固たる『自信』故だろう。

 レティシアは、いつでも抜刀できるように剣の柄に軽く触れていた。近接タイプか……距離を詰められたら厄介だな。


 あれこれ考えてても仕方ない。俺は牽制で熱閃ファイアボルトを放った!


――ザンッ!


 熱閃ファイアボルトは、レティシアの直前で消失・・した。なっ……!? なんだ今のは? レティシアの手元が微かにブレたから、抜刀したのは分かるのだが……


「出たぜ! レティシア十八番オハコの『スキル斬り』っ!」


 観客ギャラリーが一気に沸く。スキル斬りだぁ!? 厄介なモノを持ってんな! レティシアが動く! ヤベッ……俺は熱閃ファイアボルトを複数展開して、段幕を張った!


「……っ!? 秘剣壱シークレットソードワンッ、白鳥の湖スワンレイクッ!」


――ザザザンッッ!!


 レティシアは立て続けに熱閃ファイアボルトを斬り伏せて、俺に肉薄した! あの物量をさばくんかいっ!?

 こうなったら一か八かだっ! 俺は蜘蛛糸ウェブシュート背後・・に展開し、ロープの要領で反動をつけレティシアに突っ込んだ!


「なっ…………!?!?」


 レティシアの対応が遅れる。まさか『本体』が突っ込んでくるとは、想定外だったようだ。突撃した俺は、そのまま二人揃って組んずほぐれずで倒れ込んだ。


「イテテ……大丈夫ッスか?」


「え……ええ。あなた何者なの? あんな戦い方、初めて見たわ」


 何者って言われてもな……俺も色々と必死なんですわ。


「……とりあえず、約束通りあなたをウチに『スカウト』するわ。よろしくね、タクミ」

「ありがとうッス。色々と世話になります」


 俺は倒れてるレティシアを、助け起こそうと手を伸ばした……が、アーマーがポロリと剥がれ、あろう事か露になった巨峰に触れてしまった……。


――モニュン。


 確かな手応え・・・、あっ……


「いやぁあぁああああああああああああっっ!!」


――バチンッ!


 街の広場に響き渡る悲鳴。俺の頬には、クッキリと浮かぶ手形。なんでやねん…………(泣)

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