2 ベールを脱ぐガイアキーパーゼロ

タンデムマシン ガイアキーパーゼロ

 (型式 TTMー000G)


 全高二十五メートル

 本体重量二十九トン

 全装備装着時七十トン


 主要兵装 レーザーライフル

      超振動サーベル

      全方位ホーミングミサイル

      左右腕部二連六十ミリバルカン


 追加兵装 バックパック一体型ロングレンジビームキャノン等


 田坂博士が開発したガイア合金に覆われたこの機体には、超音速ミサイルの直撃でさえ傷一つつけられない。


 胸部コックピットにはタンデム型のシートがあり、これがタンデムマシンの名称の由来となっている。

 シート上部にはパイロット、下部にはアンドロイド型OSが搭乗し、二人での運用が必要とされる。

 パイロットが操縦、火器操作等を行うが、そのすべての行動はアンドロイド型OSの制御アシストが加わるので、煩わしい補正などは全てOS任せでよい。

 その一方で、パイロットとOSとの適合率が重要であり、その値の高低によりタンデムマシンの性能は一変する。



「どうじゃ! このわしの自信作は!」

 ここまで一気に言い切った博士は、ドヤ顔で胸を張る。


「は、はあ……」

 だが、一介の高校生の僕には何のことやら、である。

「う~ん? うすいうすいっ! 沙恵くんの前では内容を言えない本のようにうっすいぞ~いっ! なんじゃその反応は?」

「い、いや、すごいとは思いますけど……」


 もう一度、タンデムマシンを見上げる。


 アニメとかで見るような、派手な塗装はされていなかった。黒とかグレーとか、とにかく『兵器』といった趣だ。

 太すぎず、細すぎず、締まったように見えるその機体は、素人の僕にでもわかる機能美と言うやつを兼ね備えているみたいだった。


「か、かっこいいです!」

「む~、まあ良いか……」


 何だかしぼんでいく博士。もっとテンション爆上げで言った方がよかったのかな?


「じゃあ沙恵くん、アレを渡してくれたまえ」

「はい」


 博士の指示で、沙恵さんがカートを僕の前に押してきた。


「ではこれを」

「え? なんですか、これ?」

「はい、パイロットスーツです」


 形でなんとなーくわかったけど、あえて聞いてみたのだが、正解ですか……。


「ささ、早く着替えて下さい」

「そうじゃ! パイロットたるものグズグズするでない!」

 猛烈にせかす二人。だが。

「あ、あの、僕はまだ、これに乗るなんて言ってませんが……」


 えー、と冷めた視線が二つ、僕を貫いた。


「そ、それに、このパイロットスーツ、サイズ合わないんじゃないかなー?」

 僕のその言葉に、沙恵さんが肩を震わせながら言う。

「大丈夫です。気絶している間に……採寸しましたから……」

 そしてなぜだか再び頬を染めた。

「パイロットスーツは命を守る大切な物じゃ。しっかりとにして採寸したのかね、沙恵くん?」

「……はい」

 チラチラと僕を見るクール美女。そこで気づいた。

「あ、ああっ! ええーっ!?」


 み、見られた……僕のすべてが……あんな美人さんに……。


 両肩を抱き、その場に崩れ落ちる僕。


 しかも、意味深に笑いをこらえているし……しばらくは立ち直れそうにないよ……。


「どうした? 早く着替えんか?」

「更衣室は、あちらです」


 何事もなかったかのように、二人は更衣室を指さしている。


 このまま僕は、従っていいのか? いや、よくないだろう? こんな怪しいバイト、お断りだ!


「す、すいません。今回は、辞退させて頂きます」



 あ、あれ? 無言が怖いよ?

 あ、博士がすんごく睨んでる! 沙恵さんも軽蔑したように睨んでて……ひっ!


「それで良いのか、タケルくんよ?」

 一転優しい目で、諭してきた!?

「は、はい……僕にはこんなすごいロボット、操縦できそうにありません」


 きっぱりと言ってやったぞ! ちょっと悪い気もするけど、とっとと帰ろう!


「そうか……沙恵くん。彼女を連れてきたまえ」

「はい」


 しずしずと格納庫から出ていく沙恵さん。


「のう、タケルくんや。君はギャルゲーが、好きなんじゃろう?」


 か、懐柔作戦か? その手に乗ってたまるか!


「はい、好きです!」

 ってあれ? 僕は何で元気に答えているんだ?

「そうかそうか」

 その言葉に、博士がにやりと微笑んだ。


「で、今までのベストゲームは何かね?」

「ベスト……ですか……」


 うーん、なんだろう? ありすぎて、決められない……よし、ここは……。


「そうですね。どの作品も僕の心に深い感動を刻み込んでいるので、決められません」


 ほう、と博士。


「強いてあげるなら……全部です!」

「ぬ、ぬおーっ! 君、やっぱいい! いいぞ~いっ! そんな君にだからこそ、彼女を任せたいのじゃ!!」


 その叫びと同時に、沙恵さんが戻ってきた。


「博士、連れてきました」

「うむ。さあタケルくん、紹介しよう! 彼女がガイアキーパーゼロのアンドロイド型OSみさきじゃあっ!」


 沙恵さんの後ろから、僕と同年代に見える女の子が、もじもじと現れた。


「あ、あの、みさきです……よ、よろしくお願いします!」


 え? ええっ!? こんなかわいい子が、アンドロイドだってーっ!? しかも、OS? と言うことは、ガイアキーパーゼロには、彼女と乗るの?


 様々な感情が噴き出して、僕はみさきちゃんから目が離せなかった。

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