1064 旨味

 細川君が作った【眞子のPVソフト】

だが、その全貌は、ただの眞子のPVを見せるだけの代物ではなく。

なにやら、恋愛シュミレーションゲームの様な様相を呈していた。


***


「オイオイ、アンタ。なんだよこれ?」


そんな風に衝撃を受けながらも。

あれからもズッと俺の横で淡々と咥えタバコで作業をしていたモジャ公に声を掛ける。



「おっ?なんだい?結構、嵌ってたみたいだが。一区切り付いたかい?」

「いや、つぅか、一区切り以前に、これ、なんなんだよ?」

「『なに?』って聞かれてもなぁ。ただの眞子助のPVを兼ねた『擬似恋愛システム』さな」

「はぁ?イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待てよ。こんなもん。現代科学では、常識的に考えても無理じゃねぇかよ」

「そうかい?もしそうだと思ってるなら、そりゃああまりにも見解の低いこったな」

「なんでだよ?」

「どうやら旦那は、世間の表に出てる商品だけが、その時代の最先端だと考えてるみたいだが、本来は、そうとも限らないんだよな」


裏商品だと言いたいのか?

いや寧ろ、これが今現在の科学で出来る最新の技術だとでも言いたいのか?


けど……それにしたってよぉ。

この技術は余りにも飛び出過ぎてるだろうに……


未来予想図かオマエは!!



「いや、それにしたってよぉ。どうやったら、たった5億で、こんな代物が造れんだよ?」

「なぁにね。仲居間の家で言った『GUILDのサーバー増設』の話があっただろ。あれ+以前から俺が使っていたスパコンにも繋いで、まずはデータ演算能力を上げてだな。これもまた以前から開発に着手していた『人工知能』で処理しちまえば良いだけの事だから、これは別に、旦那が言う程、そんな大したもんじゃないのさな」


うん……君は、本当に馬鹿なんだね。

たかだかPVを作るだけなんなら、なにもそこまで徹底的にしなくても良いんじゃないのかい?


この頭のイカレたモジャ公め!!

地球で変な科学の進歩をさせてねぇで、サッサとモジャモジャ星に帰れ!!



「けどよぉ。例え、スパコンとやらでデータの処理出来たとしてもだな。受けて側のパソがショボイと、このシステム自体が使えなくなっちまうんじゃねぇのか?」

「そうだな。それについてはまさに正論だな。だからもし、これが市販された場合、今、旦那が使ってるパソ位の性能がないと話にもならない。言わば、今このゲームが出来るのは、極限られた人間って事だな」

「じゃあ、意味ねぇじゃん」

「本当にそうかい?旦那は、なんか忘れてるんじゃないかい?」


ワシが、なにを忘れとるって言うんじゃい?



「いや、なんも忘れてねぇけど」

「そうかい。そいつはまた、わかってねぇなぁ旦那。コイツは、俺のビジネスに繋がる美味しい話なんなんだがな」


それって……金儲けに繋がる話なんか?

だったらオィちゃんにも、なにか協力出来る事が有ったらその儲け話に寄せてくれ。


俺は、政治家並に金儲けは好きだからな。



「ビジネス?これが一体なんのビジネスになるんだ?いやまぁ、そんな事より、これが金儲けの話に成るんなら、俺も一丁噛みさせてくれよ」

「ハハッ、そうストレートに来るかい。なら、まずは、概要を説明してやるさな」

「おっ、おっ、なんだよ、なんだよ?」

「良いかい旦那。まずコイツの名目は、何所まで行っても『PVを作る』のが目的に開発されたソフトだって事は解ってるよな?まさか、そこは履き違えてないよな?」

「おっ、おぅ」


うん、解ってなかったな。



「だったら、これが、限られた人間だけが作れる『眞子のPVソフト』って言うのが正しい認識に成るのも同時に解るよな?」

「あぁ、まぁ、自動的にそうなるわな」

「だろ。なら、このソフトの存在を知って、自分の感性で『眞子助のオリジナルPVを作りたい』っと思う奴は、俺からしか販売されていない様なハイスペックなパソコンを買わなきゃならなくなるんじゃないのかい?俺にとっちゃあ、そこが一番美味しい所になるって話さな」

「オイオイ、って事は、まさか……」

「そういうこった。最初に仲居間に家で見せた『GUILD配布用の眞子助PV』は無料配信。故に、見るだけならタダで済む。ただ自分達で、眞子助のPVを作りたければ、それ相応の対価を払えって話だ。因みにだが、パソコン一台の値段は500万位だがな」


ブッ!!パソコン一台で500万とは、そりゃあまた、とんでもねぇボッタクリな商売だな。


つぅかよぉ!!

俺、そんな高い物を貰ってたのか?



「オイオイオイオイ、ビジネス以前によぉ。知らなかったとは言え。俺、そんな高級品を、何食わぬ顔をして貰ってたのかよ?」

「いや、今となっては、そのパソも、そんなに大した物じゃないから、そこまで気にする必要は無いさな。実際の話で言えば、今なら50万位で作れるもんだからな」

「いや、それにしたってよぉ。当時は、もっと金が掛かったんだろ?」

「まぁそうさな。あの時点では、結構な最新型だったから、それはそれなりだったんじゃないかい」


コイツ等って、本当に金銭感覚の無い連中だな。


どういう感覚で生きてるんだよ、それ?



「だったらよぉ」

「なぁにぃ。パソなんぞ年単位でスペックが上がって行くから、直ぐに物が古くなっていくもんさな。だから中古品を貰った程度の認識でOKさな」

「オマエ……金銭感覚が、完全にバグってるぞ」

「まぁ、その辺については色々儲けてるんでな。問題なしだ。……まぁ、そんな訳だから、今回の件も、良かったら流通ルートだけでも作ってくれると楽で有り難いがね。言うまでもなく、誰彼にこのソフトの情報を流す訳でもないんでね」


うん……そりゃまぁな。

これだけ高い買い物が余裕で購入出来る様な人間じゃなきゃいけないから、情報を流す相手も自動的に限定されるだろうな。

それ故に、色んな金持ちの知り合いが多いウチの組を利用するのもよく解る。

ぶっちゃけ、金のない奴に、こんなトンデモナイ情報を流した所で顰蹙を買うだけに成っちまうだろうしな。


それに、普段から、そんな相手ばかりにアコギな商売をしてるなら、相当儲かってるだろうから、このモジャ公の金銭感覚がバグってても何もおかしくはない。


それも良く解った。


けどな。

それ以外にも、もぅ一点だけ解った事が有るぞ。


『馬鹿に付ける薬が無い』のと同様に『天才の暴挙を治す薬も無い』んだな。


ダメだコイツ。


ルートの件は了承するし、貰ったパソの件は、もぉ諦めよ。



「あいよ、あいよ。後日連絡で良かったら、流通ルートは確保して置いてやるよ」

「御利口さんなこったな。……さてさて、これで旦那との話も付いた事だし、日も明けた。始発も走り出してる頃だろうから、そろそろ俺は、お暇すっかな。……世話になったな旦那」

「いや、なんも世話してねぇけどな。まぁ暇な時は、いつでも遊びに来てくれ。アンタなら、世間体も、そんなに気にならないだろうしな」

「違いない」


悪党なら、此処に出入りしてても問題無しだからな。

寧ろコイツと仲良くしておくのは、他の組との抗争があった時に、なにかと便利そうだしな。


まぁまぁ……それ以前に、意外と面白い奴だしな。



……ってな感じで、俺は、モジャを門の外まで送ってから部屋に戻る。


此処からは、今日も眞子の補習があるから、学校までの時間はグッスリ睡眠を取るつもりだ。


じゃなきゃ、体がもたないからな。



……なんて言いながら馬鹿な俺は。

ある事が気になって、直ぐには寝ずに、再びパソコンに向ってクリックをした。


だが、此処は、敢えて、なにをしてるかは何も聞くな。


『モジャの映像マジック』に嵌って。

プロデューサー気取りで『眞子を、どういう演出をすれば良いPVになるか?』な~~~んて考えてないからな。


ちょっとだけ『モジャの手伝いになるかな』っと思っただけだからな。


だから、学校の時間ギリギリまで、パソコンなんて弄ってねぇからな。



「さて、入力モードにするのは、確か『Shift+ Windowキー』だったな」


あぁうん……今の言葉は嘘な、嘘。

あぁは言ったけど、実は、直ぐに、グッスリ寝たってばよ。


ちょっとした、冗談じゃんかよ冗談。



ハァ~~~、ダメだなぁ俺って……

こう言うの漫画臭いの好きだから、ガッツリ、ドップリ嵌ってるじゃんかよぉ……


受験勉強があるんだからよぉ。

この時期に、こう言うの渡すの辞めてくれよな……



まさに『モジャの魔法の虜だな』


***


―――次回予告。


倉津「はい。アホのおっちゃんですよ」

眞子「ホントのアホだね。受験中になにやってるのよ。死ねば良いのに」


倉津「いやいや、そうやって、イキナリ辛辣な言葉を吐き出すなよ。勉強も、ちゃんとやってんだからよ。息抜きじゃん息抜き」

眞子「あのねぇ。ゲームとは言え、自分の兄弟で息抜きしないでくんない?奈緒ネェに仕舞いに怒られるよ」

倉津「いや、だってよぉ。オマエは軽々しくそう言うけどよぉ。画面の中のオマエって、滅茶苦茶可愛いんだぞ」

眞子「うわ~~~っ、なにそれ?気持ち悪い。……それに、それってさぁ。現実は可愛くないって、遠回しに言ってない?」


倉津「言ってねぇよ。オマエは十分可愛い。心配すんな」

眞子「なんの心配だかね。……まぁさて、それを踏まえて次回は……」


『Many live and invitation』

「多くのライブと勧誘」


眞子「……を、お送りします。真琴ちゃんの言う通り。息抜きも大切だからね」

倉津「……早い話。眞子がサボりたいだけと言う噂もあるけどな」

眞子「うるさいよ!!ゲームばっかりしてないで、もっと勉強しろちゅうの」

倉津「やってるちゅうの。……チッ!!画面の中の眞子は、こんな事は言わねぇのによぉ(ボソッ)」

眞子「……死ね。百回以上死ね。もうそのまま塵芥になれ」

倉津「……ひでぇ」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>

これにて第一章・第六十二話【Mojya magic(モジャマジック)】はお仕舞に成るのですが、如何でしたでしょうか?

……っと、先程次回予告までしたので、そう言いたい所ではあるのですが。

ちょっと今回のお話は、ややこしい面や、謎な部分を残したままに成ってしまっているので、後一回だけ、その辺の解説を入れて行きたいと思います。


なので疑問に思われてる面が多い方は、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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