1061 帰り道

 眞子の新作PVも観て、崇秀の思惑もある程度見えた倉津君。

だがその時点で、日付変更線を越えていたので、細川君と帰路に着くのだが……


***


 ……まぁ、そんなやり取りを最後に。

モジャ公と2人で、崇秀の家を後にして外に出たんだがな。


流石は11月だけあって……外は寒ぃな。

此処から実家に帰るだけでも、直ぐ様、凍え死にそうな勢いだ。


しかしまぁ、そう考えると。

此処から何所まで帰るのかはシラネェけど、家に帰るのが、明らかに俺より遠いモジャは大変だよな。


だったら、一応、建前上だけでも、ウチの家に泊まるか聞いてやるか?


まぁ、厳ついオッサンの集落であるヤーさんの本家だから、喜んで泊まる様な奇特な奴は、早々に居ないとは思うけどな。



「よぉ、アンタ。今から、何所まで帰るんだ?」

「あぁ?あぁ俺かい?俺は、此処からタクシーを拾って川崎まで帰るつもりだが。それがどうかしたのかい?」

「そうか。なんなら帰るのが面倒なら、ウチ泊まってくか?」

「うん?……あぁ、そうだな。そりゃあ良いさな。此処からじゃあ、タクシー代も馬鹿にならんからな。邪魔にならないんなら、面倒にならして貰おうか」


一瞬の躊躇を感じられたものの。

それ以降は、特になにも考えていないのか、なんの変哲も無い態度を取る。


ウチの家の職業がわかってのか、コイツ?


まぁそりゃあ、当然、わかってるわなぁ。


……モジャだし。



「おぅ、構わねぇぞ。あぁ、けど、一応確認ッスけど。俺の実家が、ヤクザに家って事は解ってるよなぁ」

「あぁ、重々に承知はしてるつもりだが?それが、なにか問題でも有るのかい?」


ヤッパリ解ってやがるなよなぁ。


そりゃそうだわな。


……モジャだしな。



「なんとも思わねぇのか?」

「思わないさ。高々ツレの家に泊まりに行くだけの事なのに、なんで、イチイチそんな面倒な思考を持つ必要性があるのさな」

「ツレだと?3~4回しか逢った事のない、俺とアンタがか?」

「あぁ。旦那が、どう思ってるかは知らないが。3~4回も逢ってりゃ、俺にとっちゃあ、十分にツレさな。俺が、そこまで人に逢うのは稀なケースだからな」

「なんだよ?アンタは人嫌いなのか?」


そう言いながらも、外は寒いので、チャリを押しながら実家に向かって歩き始める。

本当にモジャ公がなんとも思ってないなら、一緒に付いて来る筈だからな。


……なんて思っていたら、案の定、平然とした顔で付いて来やがった。

流石、悪魔達の腹心と呼ばれるだけの事はあって、中々肝の据わった良い根性をしてやがる。


もし俺が一般人だったら、アソコには、絶対に、なにがあっても近付かねぇけどなぁ。



「人嫌いねぇ。……まぁ、人間関係は煩わしいから、あまり好きな方ではないな。それに普段は、ネット回線でのみの付き合いが多くてね。直接、人に逢うのは、矢張り稀だからな」

「なんだ?そんなんだけで、人付き合いが成立するもんなのかよ?」

「あぁ、上手くやれば、結構成立するもんさな。……まぁ、俺の場合は、徹底的に相手を調べ尽くすから、相手の人と成りは、全て理解してるつもりなんだけどな」

「人と成りが解るだと?探偵でも雇うのか?」

「いいや。そんな面倒な事はしないさな」

「じゃあ、どうやって相手を知るんだよ?」

「ネットだよネット。ネットで、相手のパソにハッキングを掛けるんだよ。そうすりゃあ、パソコンの履歴から、ソイツの趣味や趣向、経歴。それに銀行口座や、カード番号なんかが全て割り出せる。だから、相手に対して、恐れる物などなにもない訳さな」


うわっ!!なんだそりゃあ?

あまりにもおっかねぇ人付き合いの仕方だな。


なんかよぉ。

お互いの秘密を知っていて、関係を崩さない様に努力するしかないって方程式が嫌過ぎるぞ。


此処まで行くと、友達と言うより、無理矢理付き合ってる感じだな。



「ふ~~~ん。じゃあアンタも、そう言う情報を、相手側に盗まれてるって可能性も有るって訳か」

「さもありなんだが……まぁ、恐らくだが、そりゃあないんじゃないか」

「なんでだよ?」

「まぁ、簡単な所で言うとだな。そうやって他人にアクセスする時は、絶対にダミーアドレスしか使わないからさな。ネット上で、自分の正体を晒す様な間抜けな真似はしない」


はて?おかしな事を言いやがるな。


じゃあなんで、あのバカタレの崇秀には、オマエの正体がバレたんだ?



「そうか。けどよぉ、じゃあ、なんで崇秀に正体がばれたんだ」

「いや、それについては未だに謎でな。なんでアイツにだけは、俺の正体がバレたのかが不明のままなんだよな」

「それは、アイツが異常だって事か?」

「異常と言うよりは、執念だろうな。普通の奴なら、途中で行き詰って諦めるもんなんだがな。アイツだけは、最後の最後まで突き詰めやがったからな。あぁ言うタイプは、非常に珍しい。……まぁ本来は、突き詰めた所で、見付かる筈がないんだけどな」

「そりゃあ、どういう事だよ?」

「なぁにな。さっき言ったダミーを使いながらも、使ってる回線も、まずは他方向に飛ばしてからしか、俺は回線を開かないんだよ。だから普通は、そのネットの海から、俺と言う人間を探し当てるのは不可能に近いのさ。だがアイツは、それを何故か探し当てて、俺に直接メールを送ってきやがった。……こんな事は、生まれてこの方一度もなかったから、あの時は俺も驚いたもんさな」


そう言いながら、モジャはタバコに火を着けて、タバコをふかし始める。


銘柄は『キャメル』


俺もそれに見て、何だか口が寂しくなったので、それに倣ってタバコに火を着ける。


オィちゃんは『セッタ』


まぁそれにしても、なんだな。

……あの馬鹿だけは、ホントどうしようもねぇな。


多分アイツ、モジャの事が、自分の人生に置いて、なにかの役に立つ人物だと踏んで、手段も選ばず、強引に探し当てやがったな。


ホント、呆れた野郎だ。



「ハァ~~~、アイツだけは、トコトン救い様の無い馬鹿だな」

「まぁ、相当な馬鹿なんだろうな。けどな。アイツは、矢張り、それだけに面白い。あんなに、なにをやらかすか解らない奴は、本当に珍しいからな。俺は、アイツの事が気に入ってるぜ」

「オイオイ、アンタ正気かよ。アイツを気に入るなんて、それ、どんな物好きだよ。アンタも、相当な奇人変人の類だな」

「まぁな。けど、そこは言うなれば、必然的な類友って奴さな。俺も、全うな人生を歩んでないから、そういう感覚が、お互いを惹き合せるんじゃねぇか」

「おっかねぇな」

「そうかい?けど、アイツのお陰で、面白い奴と色々出会える。これは中々乙なもんだぞ。それがGUILDの正体とも言えるしな」


まぁ確かになぁ。

誰が見てもGUILDは変人の集落だな。


それに、あの馬鹿とつるんでりゃ。

嫌でも、おかしな奴とはドンドンと知り合いになっていくわな。


それも一興と言えば一興なんだが。

誰も彼もがインパクトが有って個性が強烈過ぎんだよな。


コイツも含めて、マトモな奴が居た試しがないもんな。


全員病気だ病気。

(↑奈緒さんは、除……けないな)



「なるほどなぁ。そう言う風に良い捉え方もあるか」

「って言うか。そう言う捉え方しかないな。……いや、そう捉えぜるを得ないってのが、正確なのかもな」

「そうか。やっぱ、オマエ等おっかねぇわ」

「そうかい?」


しかしまぁ、なんとも悟った意見だな。

此処まで割り切って、アイツと付き合える奴は珍しいからなぁ。


色んな意味で感心した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>

これが本年最後の更新に成りましたが、如何でしたでしょうか?(笑)


まぁ、受験の話を書いてる筈のシリーズなんで、なんでこんな展開になるのか、またまた不思議に思われるかもしれませんが。

ちゃんと、これにも訳がありますので、その辺は『オチ』を楽しみに見して頂けると有り難いです♪


……ってな訳で、来年一発目は。

その布石と成る物を投下しようと思いますので、良かったら、また来年も遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


本年も、ご愛顧頂き誠にありがとうございましたぁ。

来年も毎日更新を続けていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致しますです♪


皆様、良いお年を♪(((o(*゚▽゚*)o)))

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