1060 何故、崇秀は、眞子とバンドを組まないのか?
眞子争奪戦と言うイベントを開催する=崇秀が眞子とは一緒にバンドをしないと言う意思表示。
それを聞かされた倉津君&眞子は、慌てて、崇秀は問い質そうとするが。
本人は、細川君に丸投げして、素知らぬ顔をし始めた。
***
「ふむ。それにしても、全く仲居間には困ったもんさな。とんだ投げっぱなしだな。どうしたもんだ、こりゃあ」
「なぁ、アンタ。不躾で悪いんだが。あの馬鹿が、なにを企んでるのか知ってるなら教えてくれよ。これじゃあ眞子が、あまりにも不憫過ぎるだろ」
「真琴ちゃん……」
「いや、教えるのは一向に構わねぇよ。けど、それになんの意味が有るんだい?仲居間は、そう言う所の馴れ合い的な感覚の話を指摘してるんじゃないのかい?……人に頼る様な事をするなってな」
「そう言われちまったら、そうだけどよぉ。眞子の立場ってもんも考えてやってくれよ。コイツは、俺とは違って、自分の出来る限りの事を、毎日一生懸命やってきたのによぉ。この言われ様は、流石にないだろ。中々此処まで、必至にやれる奴なんざいねぇぞ」
……だと思うんだがなぁ。
そりゃあよぉ。
人間だから、ちょっとした失敗なんかは、絶対に有るだろうし。
人から見て一生懸命じゃなきゃ、努力とは認められないのかも知れないけどよぉ。
俺は、コイツが、それを怠ったとは思えない。
自分の出来る限りの事は、常に尽くしてると思うんだがなぁ。
違うのか?
「まぁなぁ。その見解自体は、的を得てて、なにも悪くないさな。確かに眞子助は、なにも努力を怠っちゃいないし、それに世間の評判も悪くない。なら、なんで逆に気付かないんだい?」
「なにをだよ?それ以外、なにに気付けって言うんだよ?」
「解んないかなぁ?あのなぁ倉津の旦那。それ=眞子助は、世界中のGUILDランカーから大量にバンド参入のオファーが来てるって話になんないかい?だから仲居間は、眞子助の才能を、自分が独占しちゃいけないって思って、あんな事を言ってるんじゃないのかい?」
オイオイまさか……自分の『眞子と一緒にバンドをやりたい』って欲を自らの意思で完全に抑え込んで、心で抑制してるって言うのか?
もしそれが事実なら、なんて奴だ。
俺には到底真似の出来ない行為だな。
「そんなの……有り得ねぇだろ。心底有り得ねぇって」
「普通なら有り得ないだろうが。それをやっちまうのが仲居間って人間なんじゃなかったっけ?コイツが、一番嫌う事は『人の才能が潰れる事』だろ。それをさせない為なら、自分の感情なんか平然と抑えちまうんじゃないのかい?」
「そっか……これ自体が、全部、私の為だったんだ。……でも、でもね。私1人ぐらいなら独占しても良いんじゃないの?私自身も、それを望んでるんだし」
こう言う状況になった以上、今となっては、なんとも言えねぇ意見だな。
眞子は、今、自分を、崇秀の彼女と言う立場のみで、自分を見てやがるから。
完全に女の視点のみでしか、自分を捉えられないで居るのは相違ない。
だが、この件に関してのみ崇秀は、多分、眞子を彼女としてみてるのではなく、1ミュージシャンとしてしか眞子を見ていない。
だからって訳じゃないが。
この視点の違いから、お互いに齟齬が出ている感じなんだよな。
眞子をフォローしてやりたいのは山々なんだが、なんともフォローし辛い状況だな。
「それはそうさな。さも有りなんな話なんだが。真実は、そうじゃないんじゃないかい?」
「なんで?」
「そりゃあ眞子助。アンタが、崇秀の為だけに音楽を奏でちまったら、他の観客を無視しちまうからさな。みんなの為に音楽を奏でるのが目的なのに、個人に向けての音楽を奏でたんじゃ本末転倒。……まぁ俺は、そこまで音楽に詳しい訳ではないが。感情ってのは音に出やすいもんなんだろ?だったら、今のままの眞子助じゃ、自らの手で才能を潰す事になる。それもまた本末転倒なんじゃないかい?」
「あぁ……」
深いなコイツも。
それに奇人変人の崇秀の事を、俺や、眞子なんかよりも良く理解してやがる。
流石、悪魔達がこぞって求める『悪魔の腹心』だけの事はあるな。
こりゃどうも、まだまだ俺等2人は、崇秀に対する認識が甘かったみたいだな。
「なぁ、だったらよぉ。どうすりゃ眞子は、崇秀とバンドが組めるんだよ?」
「オイオイ、旦那。ソイツまで俺に聞いちまうのかい?そりゃあ、幾らなんでも野暮が過ぎるってもんだろ。本当に、眞子助が仲居間とバンドを組みたきゃあ、その辺を自分で考えるしかないんじゃないのかい?大体、俺は、音楽には詳しくないって、ちゃんと言った筈だぜ。餅の商売は餅屋が考えれば良い。……そう言うこっちゃないのかい?」
「うん。……そうだよね。餅は餅屋で正しいよ。確かに、その通りだよ。今あわよくば、良い解答が貰えるかなって思ってた事自体が、私の甘えなんだよね」
あぁ……眞子の奴、早くも自己修正しやがったな。
まぁ今回、俺が全体的なものを見渡した限りで解った事と言えば。
恐らくは眞子が、今の幸せに満足し始めてるのを注意するのが目的の行動だったんだろうな。
その為だけに、眞子を突き放したとも言える行為だったとも思える。
けど、それは、決して眞子を蔑ろにしている訳ではなく。
大切に想うからこそ、こう言った事が平然と出来たのだとも思える。
中々厳しい愛情表現だが、眞子にとっては、人生のプラスに成る事なんだろうな。
自分の欲求を抑えてまで、良く考えてやがるよ。
「そう言う事さな。まぁ、俺が此処で本当の解答を言わなくても、眞子助なら、いずれは自分でその回答が見付けられる筈さな。その時に初めて仲居間とバンドを組めば良いんじゃないのかい?それが筋ってもんだろ」
「ははっ……全然、笑えない答えだけど、本当にそうだよね。こりゃあ、お恥ずかしい限りだよ。崇秀が、私と一緒にバンドを組みたいって言う位にならなきゃ、本当の意味なんてないもんね。妥協で組まれたって、虚しいだけだもんね」
「ハハッ、そう言うこったな。それに眞子助は、そうでなっくちゃあな。ウジウジ考えてないで頑張んな」
「あぁうん。いっぱい頑張る♪だから、細川君も協力してね」
「ほぉ~~~っ、それはまた上手い事を言ったもんだな。この期に及んで、俺を利用しようなんざ大したもんさな」
「へへぇ~~~」
眞子の表情は一気に明るくなった。
でもそれは、恐らく、また頭の中でロクでもない事を思い付いた証拠でも有るんだろうけどな。
まぁそれが、崇秀との関係を潤滑に深めて行く事なら、それはそれで有りだろ。
そう思っていると……
「さてと。話も一旦付いた事だし。俺のお節介も此処までさな。俺もそろそろ帰って、本格的に仕事をしなきゃならないからな。いつまでも、此処で遊んでる訳にも行かないんでね」
そう言ってモジャ公は、コタツから出て立ち上がった。
時間は1時30分。
良い頃合と言うか、かなり時間はオーバーしたが、俺も、そろそろ家に帰るとするか。
「あぁ、じゃあ、俺もそろそろ帰るわ。宿題もあるしよ」
けど、俺が帰ってからやる事は、学生らしく宿題。
決して、モジャや、崇秀の様に仕事ではない。
でも、学生の仕事は勉強だから、これもまた仕事と言えなくもない。
されど結論から言えば、歴史ゲームをするだけだから、勉強ですらない様な気がする。
要するに、同じ仕事であっても格が違うって話だな。
宿題かぁ……
はぁ~~~っ、虚しいのぉ。
「あぁ、真琴ちゃん。今日の宿題は無しの方向で良いよ。こんな時間から勉強したって効率が悪いだけだしさ。歴史については、明日また改めて考えるよ」
「いやまぁ、宿題つぅっても、家に帰ってから30分程ゲームするだけなんだけどな」
「うん、まぁ、それでもさぁ。例えゲームであっても、注意力散漫で、妥協しながらやっても意味が無いから、今日は宿題無しな方向で。だから今日は、家に帰ったら、ゆっくり休んで貰って、明日から、また頑張ろ♪」
「そうかぁ?そんじゃま、此処は甘えさせて貰って、今日は帰って、さっさと寝るとするわ」
「うん。そうして、そうして」
はぁ……眞子の奴。
崇秀の件が片付いたら、なにもかもが一気に冷静になりやがったな。
けど、それってよぉ。
言い替えりゃ、それだけ酷く、崇秀に依存してるって事だもんな。
順風満帆に見えて、コイツの人生も大変そうだな。
「さて、ほんじゃま旦那。本格的に引き上げるとすっか」
「あぁそうだな。……あぁっと、最後に1つだけ聞いて良いか、眞子」
「うん?いいよ。なに?」
「あのよぉ。オマエさぁ。此処に来た時『今日は泊まらない』って言ってたけどよぉ。オマエの家に居るチビッ子との約束は良いのか?」
さぁ驚け。
実はオマエ、静流さんと風呂に入って、幸せに浸りすぎてて、この事をスッカリ忘れてただろう。
でも、案ずる事はないぞ。
それは倉津家伝統の『うっかりさん』って、余計な技能だからな。
俺と同じ細胞を持つオマエにも、キッチリと引き継がれてる筈だ。
だから、取り敢えず驚け。
そして、己の中に流れる、間抜けな血の運命を呪うが良い。
偶には、オマエも、俺の代わりに、そう言う間抜けな役回りもしろ。
それもまた人生経験だ。
「あぁ、それなら大丈夫だよ。飯綱ちゃんとの約束はバスケの朝錬の話だからね。それにね。お母さんと風呂に入る前に、飯綱ちゃんには、ちゃんと連絡してあるから、明日の早朝、学校で練習する予定になってるんだよね。心配してくれて、ありがとうね♪」
「そっ……そうか」
チッ……眞子がドタバタするオチ無しかよ。
そして俺は、自分にだけ間抜けな血が流れている事に落胆しながら、モジャと一緒に崇秀の家を後にした。
……俗に言う、独り相撲で誤爆しただけだ。
あぁ因みにな。
モジャ公は、例の依頼された眞子のPVを入れたDVDを崇秀に渡してた。
本チャンの5億の映像を、少し見たかった様な気もするな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
崇秀の思惑と言うか、このイベントの真意と言うか。
眞子を自身のバンドに誘いたいオファーが殺到してたからこそ、このイベントを始めたみたいですね。
まぁ、そうは言っても、事実だけを追及すれば、崇秀が眞子を鍛えるのが一番効率が良いのは間違いないのですが。
それだと『ただただ崇秀に教えられるだけの存在』に成ってしまい『自分で考えて音楽を構成する』っと言うクリエーティブな部分が欠如してしまうから、こう言う結果に成ったとも終えると思います。
さてさて、そんな事がありながらも。
細川君と一緒に、崇秀の家を去った倉津君。
時間も時間ですから、このまま外で別れてしまうのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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