1059 眞子争奪戦の真意

 完璧に作られた『眞子争奪戦のPV』

去れど眞子の意志としては、崇秀とバンドを組みたいから『そんな風に争奪される意志はない』と言うのだが……


***


「あぁ、そうなのかい?まぁ、その辺については、俺は、仲居間の依頼を受けただけに過ぎないからな。故に、詳しい情報を求められても解らないさな。そこを知りたければ、直接、そこに居る本人に聞いてみる事さな」

「あぁ、そっか。じゃあさぁ崇秀。そう言う訳なんだけど。どういうつもりよ?」

「んあ?なんだ、やけに間の抜けた質問をするんだな。これ自体が、俺はオマエとは一切バンドは組む気はないって意思表示に決まってんじゃんかよ。なに言ってんだオマエ?」


ヤッパリ、そう来たか。

予想に反する事無く、そう言う悪い展開になるんだよなぁ。


でも、そうなると解っててもだな。

自分の彼女なんだから、眞子を守る為にも、ちゃんと一緒にバンドを組んでやれよ。

眞子は、ベースの実力も申し分無い筈だしよぉ。

好きな者同士がバンドを組むのが、世の常ってもんだろうが。


……けど、此処は口出し無用だな。

幾ら兄弟とは言え、二人の問題に口出しするのは、あまりにもタブーだからな。



「なんで?なんでなんで?どうして、そんな事を言うの?」

「『なんで?』って。そりゃあオマエ。オマエとバンドを組んじまったら、ツマンネェからに決まってんじゃんかよ」


……ツマンネェって。

そりゃあ、理由としては、あんまりな言い分なんじゃねぇか?

これだけ申し分の無い眞子に、一体なんの不満があるのか全くわからねぇぞ。



「えっ?……ツマンナイって……私とじゃ、そんなに嫌なの?あっ、あの、精一杯、精一杯ね。崇秀が楽しくなる様に頑張るからさぁ。そんな冷たい事を言わないでよ」

「あぁ、じゃあ、その情熱を、自分のバンドの為に使えな」

「ヤダ。ヤダよ。一緒にやろうよ。ねっ、ねっ、お願いだから、一緒にやってよ」

「うん。だが断る。なにを言われても、オマエとは一緒にやらない」

「そんなのないよ。それに、この間、一生一緒に大暴れしようって約束したじゃない。あれは、なんだったの?嘘なの?」

「いいや、嘘でもなんでもねぇよ。紛れもない事実だな。……但し、俺にとっちゃあ、オマエの実力は、まだまだ不満で一杯だ。だから一緒にはやらない。ただ、それだけのこった」


……不満って。


だから、なにが不満なんだよ?

眞子に不満なんてなにもある訳ねぇじゃねぇかよ!!


2人の間の話だから黙ってるつもりだったが……これはもぉ我慢の限界だ。


いい加減にしろよ!!



「オイ、崇秀。さっきから聞いてりゃ。一体ウチの眞子に、なんの不満が有るって言うんだよ?ふざけた事を言うのも大概にしろよ!!」

「真琴ちゃん……」

「んあ?なんだなんだ?耳が悪くて、今の話が聞こえなかったのかポンコツ?『実力』が不満だってハッキリそう言ってんじゃねぇかよ」

「だから、どこがだよ?眞子は、全米GUILDランク3位なんだろ。何所にも、実力不足なんて感じねぇじゃねぇかよ!!申し分無いだろうがぁ!!」

「オイオイ、なにを勝手に熱くなってやがんだよオマエは?たかが全米3位だろ。全世界でのランクで見れば10位県外。それも、一葉の助けがあるからこそ、今の順位をキープしてるだけに過ぎねぇ。んなもん引き合いに出されても、なんの自慢にもならねぇつぅの」


ふざけんなよ!!


例えそうで在っても、十分だろうがよぉ!!



「オイオイ、仲居間。無駄に旦那の敵対心を煽ってないで、今回位、本当の事を教えてやんな。眞子助が立ち直れなく成っちまうさな」


ヤッパリだ。

このアホンダラァは、ヤッパリ、まだなんか隠し事をしてやがった。


どこをどう考えても、眞子に不満なんざ有る訳ねぇんだよな。



「本当の事だと?なんだよそれ?なんかあるなら言えよ!!」

「チッ……余計な事を」

「へへっ。偶には、素直になりなって事さな」


……素直になぁ。

まぁ、素直に言わないから、崇秀らしい所業だって、巷の噂もあるがな。


ただ今回に関しては、俺の大事な兄弟である眞子の話だから、此処は正直に言って貰わないと困る。


コイツが、崇秀の我儘で、悲しい想いをするのだけは間違ってるからな。



「……っで、その本当の事ってのは、なんなんだよ?」

「あぁダルィ。んなもん、教える訳ねぇだろボケ」

「あっ、あの、崇秀。私にね。なにか気に入らない所が有るんだったら、全部治すからさ。あっ、あの、一緒にバンドをやらせて下さい」

「だから、ヤダね。オマエと付き合うのはOKだが、バンドを一緒にやるとなると話は別だ。俺は、その辺の公私混同するつもりは微塵も無いからな」

「なんでだよ!!一体、なにを隠してやがるのかは知らねぇけどよぉ。やってやれよ!!減るもんじゃなしよぉ」

「ハァ~~~ッ、もぉ面倒臭ぇなぁ、オマエ等馬鹿兄弟は。大体にしてなぁ。なんで俺がコイツと組まにゃあならんのだ。俺が、昔言った言葉を忘れたのか?俺は『自分より劣る奴とはバンドは組まない』……そうハッキリ言った筈だがな」


確かに言ったがよぉ。

その割には、オマエ、ホイホイ誰とでもバンドを組むじゃねぇかよ。


あれは、どう説明するつもりなんだよ?



「ふざけんなよ!!オマエ、直ぐに、誰とでもバンドを組むじゃねぇかよ!!なんで眞子だけ、そんな扱いしてやるんだよ!!」

「なんでかってか?自分の彼女だからだよ。オマエさぁ。俺が馴れ合いが嫌いなのは知ってるだろ。それになぁ。実力のねぇ奴等は、直ぐに、なんでもかんでも頼ってきやがる。鬱陶しいんだよ、そう言うの。だから実力の無い奴と組むのは、お断りだ。……その証拠に、俺は、本当に、誰かが困った時にしかHELPもやんねぇだろうが。……なんか反論はあるかボンクラ?」


反論は……ねぇな。

此処を言われると、特に俺は、なにも言えねぇ。


崇秀に頼る事はあっても、なにも返せていない現状だからな。


それに、人が誰かに頼る悪い癖は、普通は、誰しも持っているんだが、コイツに関しては、それを持ち合わせていない。


常に『与える側の人間』で『与えられる事』を望んでいない。

だから、こう言う発言をされると、誰もなにも言えなくなってしまう。


口惜しいが現実だ。



「ふぅ。オタク等2人。落ち込んでる暇があったら、考え方を変えてみな。仲居間の話は、一方向から見るもんじゃないさな。それに、コイツが人を悪く言う時は、必ずしも、なにかを期待しての事。そこを理解すべきなんじゃないのかい?」

「オイオイ、一葉。そりゃあ、あまりにも、お節介が過ぎるぞ」

「いいや。お節介じゃないさな。俺は、眞子助に幸せを願ってるだけの事さな」

「よく言うぜ」


……確かになぁ。


モジャ公の言う通り、崇秀が人を悪く言う時は、なにかしろの理由が有る時なのは十分に解っていたんだが、今回に関しては、それがなんの為なのか全く見当も付かねぇ。


まぁ言い分からして、眞子を鍛え様としてるんだろうが、それだったら自分で鍛えりゃ良いのによぉ。


なんか全体的に腑に落ちねぇんだよな。



「まぁ、此処からは、オマエ等の好きに解釈してくれ。正直、もぉアホらしくて、付き合いきれん。俺は自分の仕事に戻るからよぉ。……後、一葉。今回、余計なお節介をしたのはオマエだ。事後責任は、自分でとれな」

「ハァ……、そう来るか。まだ帰って仕事が残ってるって言うのに。全く持って、面倒を廻してくれる。やれやれだな」


崇秀は、そう言ってからパソコンの画面に向い始めて、それ以降は一切なにも言葉を発しなくなる。


モジャ公は、それを見て、大きな溜息を付きながら、俺と眞子を見ている。


どうなるんだこれ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


争奪戦込みの話にしても、眞子にその意志がなければ、これは成立しないもの。

かと言って、今までの経緯からしても、崇秀は言い出したら他人の意見なんて聞かないのも周知に事実。


さてさて、これは一体、どうしたもんでしょうかね?


そんな訳なので次回は、崇秀の真意を探るべく倉津君や眞子が細川君に説明を求める話になるのですが。

果たして細川君は、何処まで話しをするのでしょうか?


次回は、そんな感じのお話なので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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