1058 コイツも大概イカレてやがるな

 今回の新作PVを5億も使って作った理由は『眞子争奪戦』なるイベントを立ち上げる為のPRでもあった。

勿論、その内容は納得のモノだったのだが、何故か、妙に引っ掛かりを感じる倉津君であった。


***


 そんな疑問を持ちながら。

完成度の高いDVD鑑賞が終わって時計を確認したら、時刻は、既に日付け変更線を越えていた。


俗に言う0時過ぎだ。


けど、これは俺にしたら、実に有意義な時間を過ごさせて貰ったもんだ。

何故なら、この映像で見せて貰った眞子のベースの実力は、言い換えれば、俺にも出来る可能性を示唆したものだとも考えられからな。


まぁそうは言ってもだな。

これだけのベース技術を身に付けるのは、簡単なものじゃないのも確かだ。

俺なんかじゃ、この域に達するまで何年掛かるか解ったもんじゃねぇがな。


けど、それが解っただけでも、良い時間を過ごさせて貰った。


鑑賞会を待った甲斐が有ったってもんだ。


……だがな。

そんな俺に反して、眞子は、ズッと何かを納得出来ない様な表情を浮かべている。


なんだ?

こんなに完璧な物を作って貰ったって言うのに、なにか不満でもあるのか?



そう思った瞬間、眞子が口を開いた。



「あっ、あのさぁ。私、こんな事を、崇秀に頼んだ憶えがないんだけど……」


はい?



「オイオイ、なに言ってんだよ?誰が聞いても、明らかにオマエが喋ってたじゃねぇかよ」

「あぁうん。まぁ確かにね。画面の中の私は、どうも私みたいなんだけどさぁ。私、ヤッパリ、こんな事を言った憶えがないよ。……これって、どういう事なの崇秀?」

「さぁな。詳しい事情は、これを作った本人に聞くのが一番早いんじゃねぇか?」

「あぁ、まぁそうだね。……あのさぁ細川君。これって、どういう事?」

「CGさな。全編、オールCGで作っただけの事さな。大した話じゃないさな」


はい?


これが……CGとな?


それはまたモジャ公も、異な事をおしゃいますなぁ。

これが全編フルCGだなんて、普通に考えても有り得ないだろうに。


そりゃあ確かによぉ。

最近じゃあ『ヴァーチャファイター』や『鉄拳』なんてゲームで、3Dポリゴンを使った作品なんかがチョロチョロ出始めてはいるがよぉ。

それらは全部、明らかにまでとは言わないが、結構ポリゴンだと直ぐに解る代物。

此処までのクォリティの物は、世間には出回っちゃいない。


それを、オマエが作ったって言うのかよ?


それが、無駄に5億も費用が掛かった理由か?



「オイオイ、これがCGだって言うのか?有り得ねぇだろ」

「そうかい?それは、思い過ごしなんじゃないのかい?」

「なんでだよ?」

「今の眞子助の言葉が、それを、全部語ってるんじゃないのかい?言った記憶に無い事を、本人が言った風に作られてる。これをCGだと言う証拠と言わずして、なにを証拠だって言うつもりさな」


まぁ……確かになぁ。


けどよぉ、例えそうであったとしても、技術面は、どうなるんだよ?

もし仮にだが、これをオマエが作ったとしてもだな。

オマエはオペレーターであって、クリエーターじゃないんじゃないのか?



「だとしてもよぉ。このクォリティーの物を、素人のオマエが作ったって方が少々無理が有るんじゃねぇのか?」

「ははっ……旦那。俺の事を舐めてるな。ってか、もぉ忘れちまったのかい?俺は、パソコンを管理するだけの、ただのオペレーターじゃねぇぞ。……去年、旦那の依頼で作った2B-GUILDの面子のダイエットデーター及び、グラフィックデーターを作ったのは、誰だっけ?」


あぁ!!そう言えばそうだった。

コイツは、去年の文化祭の時に、完璧なまでのCGデーターを作ってやがったんだった。


そう考えると、この絵空事の様な話も強ち信用出来なくもないな。



「あぁ!!そう言えば、そうだったな!!けっ、けどよぉ、それにしちゃあ、進歩が早過ぎねぇか?あれと、これとじゃ雲泥の差じゃねぇかよ」

「なになに。日進月歩、毎日パソでそう言う作業をしてれば、嫌でも技術なんざ進歩するってもんさな。それに今回は、強力な助っ人も居たしな」

「助っ人だと?」

「あぁ、助っ人だ。ハリウッドで、CGを扱ってる集団が居てな。そいつ等を自陣に引き込んでの作業だったからな。背景グラフィック、モブキャラ、モーション、音声スタッフ。その他諸々の面子が10人程集まって作ったもんだから大した苦労はなかった。それだけで俺は、眞子助のCGを作る事に専念出来たからな。故に、このクオリティーで物を作れたって話さな」


ハァ~~~ッ。

どの分野にでも、世の中には、凄いエキスパートな奴等が居たもんだな。


もぉ、こんなものが出来る世の中なんだな。



「ほぉ~~~っ」

「まぁ、それにだな。GUILDの事業拡大により。サーバー増設用に設置したスパコンが数台まっさらな状態であったから、稼動までの期間、ソイツを上手く利用させて貰ったのも、スムーズに製作出来た理由の1つだな」


……スパコンって。


まぁだからこそか。

ソレって、普通のパソと違って、演算能力に、ほぼ限界が無いって事でも有るもんな。


しかしまぁ、たかがPV作るだけに、そこまでするか?


流石5億だな……並じゃねぇな。



「……にしてもよぉ。期間は、どれぐらい掛かってるもんなんだ?」

「まぁ、そうさな。ざっと3ヶ月って処さな。……とは言え。実際の準備期間や、シナリオ製作の時間を入れれば、もぅ少し長くはなるがな。その程度の話さな」


ハァ~~~ッ、3ヶ月ですか……

 

それにしてもコイツだけは、毎度毎度、驚かさせられる事バッカリだよな。


人間ビックリ箱みたいな奴だな。


だってよぉ。

たった10人と言う少数精鋭で……しかも、この短期間で、こんなものを作れるなんて、人の所業じゃねぇよな。


そんなに無駄に技術が有るなら、さっさとゲーム会社にでも就職して、誰もが考え付かない様な面白いソフトでも作って、俺に提供しやがれつぅのな。


ご祝儀で1本位買ってやるからよぉ。



「ハァ~~~ッ、スゲェな。こりゃあ、その一言に尽きるな。圧巻だ」

「そりゃあ、どうも」


いや……さも当たり前の様な顔をしてタバコ吸ってるけどよぉ。


マジで、オマエはスゲェわ。


ギャフンだギャフン。



「あぁ、因みにだがな。メインであるPVソフトの方は、まだ見せてないさな。……旦那、良かったら、見てみるかい?」

「はい?なっ、なんだと?今なんつった?」

「いや、だからだな。今はまだGUILDの仕事を優先したから、まだPVソフトの発表はしちゃイネェって話さな?だから、見るか?って確認しただけの事さな」


アホちゃうかコイツ?


こんな馬鹿げた映像を見せて置いて、まだ、これがメインのPVじゃないだと……



「なんだそりゃあ?まだ、これ以上の物があるって言うのかよ?」

「そりゃあそうだろ。今、見せたのは、GUILDでの広報用の眞子助のPVであって、決してプライベートな物じゃない。これからが本番って奴さな」

「ちょっと待って細川君。私には、それ以前に、どうしても納得出来無い問題が有るんだけど」

「ほぉ、そりゃあなんだい、眞子助?」

「あぁ、いや。なにって言うかさぁ。私、バンドのメンバー募集なんかした憶えないんだけどなぁ。それに、バンドのメンバーなんかイラナイよ。だって私は、崇秀としかバンドを組む気はないもん」


そりゃあ、まぁそうだわな。

冷静に眞子の気持ちを考えりゃあ、この言い分は正しいな。


けど……この馬鹿共が、こんな物を作っちまった以上、あの手この手で、その願いは、きっと捻じ曲げられるぞ。


そして、儚く散っていくだろうな。


そうあって欲しくはないが、此処は100%そうだと思うぞ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


今回のPVは、細川君の技術によって作られて全編フルCGの映像だったのですが。

本編でも語らせて頂いた様に、この年代で作られていたCG作品と言うのは『バーチャファイター』や「鉄拳」などの作品ですので、実際は、そこまでCGの技術が発展していた時代ではありません。


ただまぁ、なんと言いますか。

そうやって表に出ている技術って言うのは、実際、その時代に開発されている先進技術ではなく。

『その最新技術から、約10年後退させた物が世に出回っている』っと言う事実もありますので、こう言う風に書かせて頂きました♪


さてさて、そんな中。

崇秀とバンドをする気満々の眞子が、この『眞子争奪戦』っと言うイベントに対しての不満があるのは当然なので、なにやらクレームを入れて良いるみたいなのですが。


此処は、どう解決していくのか?

そして、そこに対する崇秀の思惑と言うのは、一体、なんなのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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