1057 眞子の新作PV鑑賞会

 全員が崇秀の部屋に揃ったので『眞子の新作PVの鑑賞会』スタート♪


***


 データーロード後。

真っ黒だったテレビの画面から【GUILD・Presentation】っと言う、文字が、ゆっくりと浮かび上がり。


その後に『緊急企画【鞍馬争奪戦】のお知らせ』なる、不可解な文字が出て来る。


『なんの話だ、これ?』って、思ったのも束の間。


再度、画面が真っ暗なったと思ったら。

イキナリ迫力のある大音量で『太棹(ふとざや)』の三味線の音が鳴り響く。


しかも、その直ぐ後に、ステージ上に一筋のスポットライトが当たり。


着物姿の眞子が映し出される。


その姿は、なんとも優美で、得も言えぬ美しさがある。


だが、そこから突然、場面転換が起こり。

ほぼ暗闇だったバックが、冬景色に変化し。

何所を、どうやってるのかは知らないが、着物姿のまま、冬の山道を【鞍馬】を三味線を演奏しながら、歌を唄っている。


……その声は、悲しくも、切なく、それでいて破壊衝動に駆られる様な歌声。


まさに【鞍馬】って曲を体現する様なPVだ。


まぁ勿論、眞子の歌自体には、奈緒さん程の強烈な実力は感じられないものの。

歌声自体は、まだまだ真っ白で『伸び代の残っている』強烈な才能を感じる。


そして……一曲目が終わり画面がフェードアウトした。

恐らく此処は、眞子の『三味線の腕前』と『歌唱力』を、全面的に前に打ち出す為の映像だったんだろう。


……っで、この後、歌唱力や、三味線の余韻を残してまま、今度は、全く違った画面が映し出された。


この映し出された場所は、恐らくニューヨークの街並み。

まずは街の雑踏が映したされた。

その後15秒程して、そこに少し緊張気味な表情を浮かべて、イヤホンで音楽を聴きながらベースを背負って、街を歩く眞子がクローズアップされる。


向った先は『B・B・C』

ニューヨークに数あるライブハウスの中でも、かなりの老舗なライブハウス。

壁の落書きや、ポスター、それにタバコのヤニに薄汚れた店内が、わざと映した出され、このライブハウスの歴史を物語っている。


それと同時に、ライブハウス独特の少し薄暗い感じが、なんとも言えない様な良い雰囲気を醸し出している。


そんなライブハウスに入った眞子は、ステージ上で演奏しているバンドに一瞥をくれてから、一旦、腰を据える為にカウンターに向って行き、着席。

腕に刺青の入ったバーテンダーに、なにやら飲み物を注文し、少しづつ、それを飲み始める。


そうやって、バックのバンドの無駄にウルサイだけの音の中、飲み物を飲みながらステージ上のライブを見ていたんだが。

一分も経たない内に眞子は、なにやら悲しそうな顔をして、カウンターに居るバーテンダーに英語で話し掛ける(此処は日本語での字幕付き)。



『ねぇ、バーテンダーさん……『B・B・C』からは、もぉ新しい火は見えなくなっちゃっいましたね』

『あぁ?』


一瞬、そんな眞子の言葉に少々不機嫌そうな表情を浮かべる店員。


だが、それと同時に……



『……ふぅ。あぁ、全く持って、アンタの言う通りだ。確かに今の『B・B・C』じゃ、精々、あの程度のしょぼくれたバンドが幅を利かせてるのが関の山になっちまってるな。反論も出来やしない。『ラモーンズ』や『パティ・スミス』が演奏してた頃が懐かしく思えるぜ』

『過去の栄光……って奴ですか?』

『そうだな。過去の栄光、まさに今の『B・B・C』にはピッタリの言葉だ。今じゃあ、昔の見る影もない、ただの観光スポットに成り下がっちまったからな。アンタの言う言葉通り、此処じゃあ、新しい火は、なにも見えて来ないな』

『そっか。……じゃあ試しに、私が、もぅ1度、火を付けさせて貰って良いですか?』

『ははっ、アンタがかい?そいつは、中々気の利いたジョークだ。……けどな。アンタが、もし、本気でそれが出来るって言うなら、是非とも、お目に掛かりたいもんだな』

『わかりました。……では、共に、古き良き時代に……』


言葉を発すると同時に、バーテンダーには飲み物代+チップで100ドル札を手渡し。

眞子は、ハードケースから『Music-man 1979 Sting -ray bass』を取り出す。


そして、近くにあった、古ぼけたアンプにシールドを突き刺し。

ゆっくりとした動作で、その席に座ったままベ-スを弾き始める。


……すると。

眞子が音をが出始めて数秒。

なにかの技を繰り出してるのかして、ステージ上の演奏は格段なまでに音の質が上がり。

完全に冷え切っていた筈のステージに、一瞬にして火が入る。


誰も彼もが聞いていなかった筈のステージの演奏に、ジワリジワリと、ライブハウスに居る人間達が注目して行き。

見る見る内に、ライブハウス全体が盛り上がって行く。


……ただ、ライブハウス自体は、そんな大きな盛り上がりを見せているものの。

それに反して、ステージ上で強制的に演奏レベルを上げられた者達は、見る見る内に強烈なまでの苦悶な表情を浮かべ、大量の汗を掻き。

そのまま白目を剥いた状態で、ただ只管、演奏だけを続けさせられている。


たった一曲を演奏し終わるだけで、ステージ上の者は口から泡を吐き出しながら、そのまま倒れた。


此処は、音楽に対する冷酷さを強調し。

眞子の最も得意とする『拷問ブースト』をピックアップした感じの映像の様だ。



『なっ……』

『ふふっ、ご清聴ありがとうございました。……もし、今後も私を御所望の際はGUILDまで』


そして最後には……

見ているだけで、幸せになりそうな満面の笑みで『B・B・C』を後にした。


呆気に取られてるバーテンダーを尻目に、扉から立ち去る眞子の後姿が、妙に渋い。



……その後も。

各州にある有名なライブハウスや、老舗のライブハウスでのライブ映像が、様々な形で盛り込まれ、ドキメンタリー形式で14曲もの曲を演奏されており。


そのどれもが、迫力満点のライブ映像で、全ての面で、凝った演出に圧倒される。


……その他にも、オマケ映像として、時折、ライブ前の楽屋風景なども入っており。

子供らしく、はしゃいでいる眞子の素の姿なども写し出されていた。


こういったライブステージとは全く違う。

眞子の魅力も満載に詰め込まれて、PVは製作されている。


まさに圧巻の120分だった。



そして……最後の告知。



『映像を、最後まで見てくれた皆様。本当にありがとうございました。元【GREED-LUMP】のベーシスト向井眞子です』


そう言って画面の中の眞子は、椅子に座ったままだが、深くお辞儀をする。


そして、間髪居れずに、このPVのインタビュアーが声を掛ける。



『こんにちわ。今日は宜しくね。向井さん』

『あぁっと、こんにちわ。こちらこそ、今日は宜しくお願いします』

『じゃあ、挨拶も済んだ事だし。……早速で悪いんだけど。今回、向井さんが立てた企画の趣旨はなんなんだい?』


どうやら、話の脱線を少なくする為に、直ぐに本題に入るらしい。


DVDの残り容量からも考えて、5分ぐらいが良い所。

そう長い尺が残っていないのだろうしな。



『あぁ、はい。それはですね。私【GREED-LUMP】を脱退してから、もぉ一年近くになるんですけどね。未だに新しいメンバーが決まらなくてですね。ズッとHELPバカリしてたんですよ。……でも、いつまでもそれじゃあ、流石にマズイかなっと思いまして。崇秀に相談をしたところ、彼が、この企画を立ててくれたんですよ』

『ほぉ……じゃあ、この企画自体は、向井さんが立てたものではなくて、GUILDの長である仲居間さんが、直接立てたものなのかい?』

『あぁはい。そう言う事になりますね』


話が一気に上手く運んで行き。


後は、企画の内容を残すだけとなった。



『へぇ、そうなんだね。それにしても向井さんは、GUILDの長に企画を立てて貰えるなんて、仲居間さんとは、相当、親しい仲なんだね』


……でも、何故か此処で脱線する。


まさかとは思うが、ここで眞子と、馬鹿秀の関係をハッキリさせてしまうつもりなのだろうか?



『そうですね。小さい頃から、彼の事は良く知ってますし。私にとっては、掛け替えのない大の親友ですね♪』

『親友?男女間なのにかい?恋心とかは?』

『勿論、有り有りですよ。……全然、相手にされてませんけど』


うん……事実はラブラブな2人なだけに、大嘘の凹みなんだろうが、演技が上手いな。


流石、女子だな。



『あぁっと凹まないで、凹まないで。取り敢えず、今の話はなしにして、企画の話に戻そうか』

『ハァ~~~、そうですね。ハァ~……』


片想いの演技は継続か。


大したもんだな。



『あぁ、じゃ、じゃあ。再度、企画の内容を教えて貰って良いかい?』

『ははっ……そうですね』


……っで、最終的な内容が伝えられる。



『えぇっとですね。この映像を、最後まで見て下さった皆様。今まで見て頂いた映像が、今の私の全てです。……ですので、それでも『私を、皆さんのバンドに入れてやっても良いぞ』っと思われた奇特な方が居られましたら、是非、私を仲間に入れて下さい。宜しくお願いします』

『そんな訳なんで、詳しい内容を知りたい方は、GUILDのホームページにアクセス!!奮ってご応募下さい!!……では、向井眞子さんでした。ありがとう』

『あぁはい、ありがとうございました』


そう言いながら、画面の中の眞子は1度『ペコリ』とお辞儀をしてから、笑顔で、両手を振り『バイバイ』をする。


後は、画面が段々とフェードアウトして行き。


GUILDのホームページアドレスが表記され。


最後に注意書きが出る。



『本映像商品は、一般家庭に置いて個人が視聴される事を、用途に限っておりますが。別にダビングしたり、コピーしたりして、友人に手渡して頂いても結構です。但し、ダビングやコピ-される場合は、GUILDへの登録が必要となりますので、必ず、登録されて、専用のダウンロードソフトをインストールされてから、ダビング、及びコピーをして下さい。不用意にコピーされますと、パソコンに支障が出る可能性が有ります。故に、勝手にダビング、及びコピーをされて、パソコンに支障が出た場合、当方は、一切の責任は取れませんので、ご注意下さい。勿論、最初に、なにも見ずにコピーされた場合も、責任は取れませんので、宜しくお願いします。……てか、無断で焼くなボケ』


……最低だな。

いつも通り、なにもかもが『ボケ』の1言で、全てが台無しな終わり方だ。


まぁ、ただな。

このPVは、全体的に眞子の魅力が伝わって、スゲェわ!!



けど……これで5億か?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


今、眞子の持つ実力は余すことなく伝えた新作PVの鑑賞だったのですが。

どうやらその内容は『眞子争奪戦』なる、自身のバンドに眞子を引き入れる為の告知でもあったみたいですね。


ですが、これ、翌々考えると【余りにも矛盾してる点】があったのですが、皆さんはお気付きに成りましたか?(笑)


まぁまぁ、お気付きに成った方も、お気付きに成らなかった方も。

次回は、その矛盾点について書いて行きたいと思いますので、良かったら、答え合わせをしてみて下さいねぇ♪


では、またお会いしましょう。

さよなら、さよなら、さよならぁ~~~(*'ω'*)ノ(故・淀川長治氏の真似(笑))

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