1056 価値観の違い

 細川君の手によって製作された眞子のPV。

早速、その上映会を始めようとしたのだが、なんでこんなものを作ったのかが気に成った倉津君が……


***


「なぁ、オイ、アンタ。なんで新作映像の中に衝撃映像なんかが含まれてるんだよ?それって、眞子がやったライブの総集編じゃねぇのか?」

「ふぅ。旦那なぁ。そいつは酷い勘違いをしてるぞ。俺は、総集編なんて一言も言っちゃ居ない筈さな。俺が仲居間に依頼されたのは『眞子助のPVソフト』さな」

「『PV』だと?なんの為にPVなんか作る必要があるんだよ?眞子の知名度は、んな事をしなくても、もぉ十分に高いだろうに」

「まだまださな。いや寧ろ、そんな程度の知名度で満足して貰っちゃあ困る。眞子助には、世界中、何所を歩いてても、誰もが振り返る位の人間に成って貰わなきゃならないからな」


なにが故に?



「あの~~~、ちょっとだけ良いかな。君達はなにを企んでるのかな?……特に、私のPVを依頼した崇秀」


俺が、そう思ってた瞬間。

眞子も同じ疑問が脳裏を過ぎったらしく、先に質問をした。


まぁ……PV自体が本人の事だから、此処での優先権は、明らかに眞子に有るな。


なら、黙ってよぉ~~っと。



「おっ、なんだよ。直接ご指名か?」

「うん、ご指名。あのさぁ、なにやってても怒んないから、なに企んでるのか言ってみてよ」

「なぁにぃ、ちょっくら『彼女自慢』がしたいだけの話だ」

「はい?……あぁ、なんだビックリした。いつもみたいに、私をからかってるんだね。そう言う嘘は良くないよ」

「所が、嘘じゃねぇんだよな。この話自体が、本当に本当の話だったりするんだよな、これが」


眞子の言う通り、こりゃあ、完全に嘘だな。


オマエ、ワザとらしいにも程があるぞ。

大体、オマエみたいな効率しか考えない人間が、そんな無駄な真似をワザワザする事自体が、如何にもおかしな話だろうが。


そんな与太話、誰も信用しねぇつぅの。


……つぅか、マジで、なにを企んでやがるんだ?



「う~~ん。本当って言われても困るねぇ。リアリティが無いし。……なにより崇秀だし」

「いや……そうは言われてもなぁ。これ自体は、どこまで行っても真実は真実。何を言われても、そこは曲がらねぇし、曲げ様がねぇだろ」

「そぉ?……でもさぁ。仮に、そうだとしてもだよ。なんの為?そんなの、なんの意味が有るの?」

「大きな意味なんてねぇよ。大体、彼女の自慢をするだけなのに、自慢以外に、なんの意味が有るってんだよ?それこそ意味がわかんねぇぞ」

「うぅ、そうだけどさぁ。崇秀が、私を自慢なんてする事自体、なんか変じゃない?」

「あぁ、だから、さっきから意味はねぇつってんだろうに。自己満足だよ自己満足」

「じゃあ、やんなくても良いじゃん」

「ヤダね。やりたいからやる」


なんだかなぁ?

崇秀にしては、理屈もヘッタクレもない話だな。

今回に至っては、まるで駄々っ子みたいな言い分にしか聞こえない。


なんか変だな。



なら……



「オイオイ、馬鹿秀。本人が嫌がってるんだから、ヤメテやれよ」

「あぁ、いや、あの、別に嫌がってる訳じゃ……」


眞子が小声で、なにかボソッと言った様だが。

それ自体が、話を阻害しそうだから、取り敢えず無視しとけ。


此処まで隠されたんじゃ、どうしても崇秀の口から、その意図を聞いて置きたいからな。



「アホかオマエは?なんで、物が出来てるのに、今更辞めにゃあイカンのだ。大体にしてオマエなぁ。軽々しく辞めろとか抜かしてるが、これ1本作るだけでも、一体、幾ら掛かってると思ってんだよ」

「幾らって。……モジャ公に支払う分だけじゃないのか?」

「だ~か~~ら~~~っ、それ自体が、幾ら掛かってると思ってんだよ」


罷り也にもPVを作ったんだから、相場で考えたら500万位か?

若しくは、同志であるモジャに依頼したから、友達割引とかも含めて1/10で50万位か?


けど、崇秀の馬鹿だけに。

眞子に対しての事だから、かなりの金額を投資してる可能性もある筈だしなぁ。


此処は1つ、多い方を言うのが定石だな。



「500万位か?」

「惜しいな。5億だ」


はい?


はぁあぁぁ~~~?



「ちょ!!オッ……オマエ、馬鹿じゃねぇのか?なんで彼女を自慢する為だけに、5億も掛ける必要がある訳?頭イカレテやがるのかオマエは!!」

「あぁ、ご存知の通り頭はイカレテルが」

「いやいやいやいや、そう言う問題じゃなくてだな。5億だぞ5億。オクションが5部屋も買える金額だぞ」

「だからなんなんだよ?大体オマエ、オクションなんか買ってなにすんだよ?んな無意味な事に、金を使う気はねぇぞ」

「いや、オマエの方こそ、それどうよ?今さっき、これ自体も意味が無いって言ったじゃんかよ。じゃあ、同じじゃんかよ」

「あぁ、言ったな。だが、同じ無意味でも、眞子のPVは、俺が自慢出来る。それだけで、俺には価値が有るって事だ。要するに、そこは価値観の違いって奴だな」


騙されねぇぞ。

絶対に、なんかロクでもない裏が有る筈だからな。


いい加減に、本当の事を吐け!!

此処で直ぐに自供したら、後でカツ丼食わしてやっても良いからよ。



「いやいやいやいや。おかしいだろぉ。そんなもんの為に、普通は、そこまで金を使わねぇってばよ」

「あっそ。そう思っちゃう訳な。……けどオマエ、それ、完全に、自分で金を稼いだ事の無い、貧乏人の発想だぞ」

「なんで、急に、そんな意見が出てくんだよ?自慢する為だけに眞子のPV撮って、自己満足だけじゃ話になんねぇだろが」

「アホ臭ぇ。結局、言葉に惑わされて、いつまで経っても、本質が解らねぇで居やがる。もぉ話す気も失せたわ」


なにがだよ?


そりゃあよぉ。

オマエみたいに金持ちなら、そう言う発想に成っても、なにもおかしくはないがよぉ。


幾らなんでも、5億は、些かヤリスギだろ。



「まぁまぁ、仲居間。そう言ってやりなさんなって。価値の有る、無しは、その本人が決める事さな。強制するもんじゃないさな」

「まぁ、そりゃあそうだな」

「それに、物を見てから、価値を決めた方が良いんじゃないのかい?百聞は一見にしかずって言葉もあるしな」

「だな。それが、尤もらしい正解だ」

「なら、早速、試写会に行ってみるかい?御代は、見てのお楽しみって話でな」


そう言った後。

モジャは、不敵な笑みを浮かべて。

変わった形の鞄から、1枚のDVDのでディスクを取り出し。

部屋にある50インチは有ろうかと言う、無駄に馬鹿デカイテレビの下にあるDVDデッキにディスクを差し込む。


すると……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


はい、眞子のプロモーションだけに5億掛けた馬鹿が居ましたね(笑)


ただそうは言っても、その金額を掛けたのは崇秀。

なら、それ=5億出しても採算が取れる、っと言う目算がなければ、そんなアホな真似はしない筈。


果たして、どう言う方法で採算を取るつもりなのか?


次回は、その辺を書いて……っと、その前にPVの内容を発表していきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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