1042 もぉ余計な事は言わんとこ……
今日の勉強場所に移動する為に、眞子との待ち合わせ場所である駅前に向かう倉津君。
ただ、眞子は可愛いので、ややこしい男にナンパでもされたら困ると思い。
慌てて待ち合わせ場所に行ってみたら、案の定、男性に声を掛けられていたのだが、ただのファンとの交流だった。
しかもそのファンの男性を、眞子は天然で魅了しているのを目の当たりにして『コイツ、おっかねぇ女だな』っと思う倉津君であった。
***
……っとまぁ、そんな一幕がありながらもだな。
その場では眞子と一緒に、何度も振り返って、こちらを見ているファンの奴等を見えなくなるまで見送った。
それを確認した眞子は、現状に少し驚いている俺に声を掛けてくる。
「うん?なになに?その顔?どうかしたの?」
「あぁ、いや、別に、なんでもねぇよ」
「なによなによ。やだなぁ、隠さなくても良いじゃない。……っで、なによ?」
いや実は、ただ単に『コイツ、意外とおっかねぇ女だなぁ』って少々動揺してただけなんだがな。
此処でそんな事を言って、眞子の機嫌を損ねて『もう勉強を見ない』とか言い出したら面倒だから、此処はダンマリだ。
こう言う時こそ、人間、打算を打つって事も必要だからな。
「あぁ、いや、別になんも隠してねぇけどよぉ。今の奴等、なんなんだありゃあ?『オマエのファンって奴なのか?』って思ってよ」
そして話を逸らして誤魔化す。
完璧だ。
「あぁ、そう言うのを疑問に思った表情だったのね。でも、あの人達は、別に私のファンって訳じゃないと思うよ。偶然、私が出演させて貰ってるライブには、よく来てくれてるみたいだけどね」
「いや、オイ……俗に、それをオマエのファンって言うんじゃねぇのか?」
「あぁ、違う違う。そんなの全然違うよ」
「なんでだよ?」
「偶々、あの人達が見たいライブに、私が出演させて貰ってるライブが被ってただけの事。そう言うんじゃないと思うよ」
いや……それってよぉ。
誰がどう聞いても『100%ファン』って言わねぇか?
大体オマエなぁ。
アイツ等の見たいライブと、オマエの出演が偶然に重なってるみたいな事を言ってるけどよぉ。
オマエさぁ……基本的にバンドに所属してないから『HELP』じゃん。
それをどうやったら、そんな偶然が何回も生まれるんだよ?
俺には、そんなそんな上手く、アイツ等の見たいライブに、オマエが出演してるなんて奇跡は起こらないと思うぞ。
ならこれって、明らかに故意的じゃねぇか?
……まぁけど、当の本人の眞子が、そう言うなら、特に、そこは追求しねぇけどよぉ。
俺は、多分、違うと思うぞ。
「ふ~~~ん。……じゃあ、ファンじゃない奴等と、なに話してたんだよ?」
「いや、なに?って。一緒に写メ撮ったり。サインを書いてたりしただけだけど」
うん。
アホだ……コイツ。
人それを『ファン・サービス』って言うんだぞ。
此処はテストや受験には出ないだろうが、一般常識だから、最低限憶えて置いた方が良いぞ。
「あのなぁ眞子」
「うん?なによ?」
「オマエと一緒に写メ撮ったり。サインを書いたりするって事はな。明らかにオマエに興味が有るから、そんなもんを求めてるんじゃねぇのか?」
「まぁ、一般的には、そう言う捉え方もあるね。でも、私は、そう捉えない。何故なら私は、直ぐに調子に乗っちゃう癖があるからね。だから、そうは捉えないの」
なにを言っとんじゃコイツは?
「はぁ?……いや、別によぉ。オマエのファンだったら、オマエのファンって捉えても良いんじゃねぇの?問題なくね?」
「なに言ってんのよ。そんなの問題大有りだよ。だって今の私が、厚かましくそう考えて、それに満足しちゃったら困るじゃない。まだまだ私なんか物足りない実力でしかないんだからさ。慢心は良くないよ」
……うん。
確実にアホだコイツは。
頭が良いのに、どうやったらそんなアホな発想に成るんだよ?
脳味噌が腐ってんじゃねぇのか?
そう言うのは『慢心』って言わねぇの。
それを敢えて、なんて言うかって言うとだな……
「オイオイ、眞子。それ……『仲居間病』って、世界で一番性質の悪い病気の酷い重症患者の言葉じゃねぇかよ。治療不可に成る前に、早急に、精神科のある大きい病院に行った方が良いぞ。取り返しが付かなく成るぞ」
「ホント?ヤッタね!!」
はぁ?何故にオマエさんは、そんな喜ぶ?
今バッチリと『仲居間病の重症患者だって言う【ダメ人間の烙印】を押されてる』んだぞ。
なので此処は、人として、どんな事が有っても喜んじゃダメだろ。
「オイオイ、なんで喜ぶんだよ?俺は、治り難い悪性の病気に罹ってるって言ってんだぞ。だったら、なんも喜ばしい事なんかねぇじゃねぇかよ」
「うん?そぉ?でも私は、それでOKなんだもん。寧ろ、その病気に、もっと罹りたいって思ってるよ。重症じゃなくて、末期症状になってみたいね」
「なに言ってんだよオマエは!!そんな訳の解らん病気に罹ったらダメだっての。死ぬより苦しい目に合うぞ!!」
「なんでよぉ?なんで、そんな事を言うのよぉ」
「なんでってオマエ。……そのまま病気が進行したら、崇秀みたいになっちまうんだぞ。普通ヤダろ」
それは……『人としての終焉』
そして『新たなる魔王の誕生』を表す言葉。
……うん。
そんなもんは、世間にとっちゃあ、ちっとも良く無い事だから辞めとけ。
寧ろ、迷惑この上ないだけだ。
それにだ。
大体なぁ、オマエは可愛いんだから、そんな究極のアホが患う様な至らん病気には罹っちゃイカンよ!!
折角、自分の体を得たんだから、もっと女の子らしい、誰もが羨む様な良い人生を送るべきなんだぞ。
だから、心して置け……アイツはダメ人間だってな。
「うぅん。なにも嫌じゃないけど」
「お~~~い、頼むぜ眞子。女の子なんだから、そんな病気はダメだろ」
「うん?それこそなんでよ?ひょっとして男女差別?」
「違ぇよ。つぅかよぉ」
「つぅかなに?……あぁ、因みにだけど真琴ちゃん。この病気って、奈緒ネェも長期間に渡って罹ってる病気なんだけど。……知ってた?」
「オイオイ、あんま馬鹿を言うなよ!!奈緒さんは、そんな奇妙奇天烈な病気に罹ってねぇっての!!あの人は、普通の人より少しだけ向上心が高いだけだ。んな珍妙な病気には罹ってねぇわ!!」
……多分だけどな。
自信は、全くと行って良い程、皆無な状態だけどな。
なんせ、この1年間で、なにがあって、奈緒さんが、あんな大それた事になってるのか、俺も深い所は、なにも知らねぇもんよ。
だから、この件の置ける自信は皆無だ。
「でも、真琴ちゃん。向上心が高かったら『崇秀病』の初期症状だよ。それだけでも十分罹ってるって言えるんだけどなぁ」
「だから、罹ってねぇよ!!」
「あっ、そぅ。じゃあ、罹ってないで良いや。……でも、奈緒ネェ可哀想。一生懸命頑張ってるのになぁ。罹ってないんだぁ」
いや……そうじゃないだろ。
その病気に感染される事は、人として、全然喜ばしくねぇっての!!
「オイオイ、眞子。仲居間病は、なんの自慢にはならねぇんだぞ」
「なんで?凄く自慢になるよ」
「いや、それこそなんでだよ?」
「えっ?そんなの簡単じゃない。崇秀が世間に認められてるからだよ。あの年齢で、崇秀程、世間に認められてる人間なんて早々居ないし、全世界が欲してる人材だよ。その人と一緒だったら。それは寧ろ、誇らしい事なんじゃないのかなぁ」
……うん。
オマエの言いたい事は、重々にしてわかるがな。
それを認めたら、幼馴染の俺の立場が全く無くなっちまうから、絶対に認めねぇよ。
大体なぁ、あんな狂気を纏ったアホンダラァを、誰が認めるかぁ!!
「アホか?アホなのか?」
「なんでよぉ?」
「つぅか、一緒程度で喜んでてどうするんだよ?」
「へっ?」
「そんなもんはな、自分の限界を語っちまってるのと同じじゃねぇか。『私は、アイツ以上には成れません』って、自ら宣言してるのと同じなんだぞ。そんなもん、ダメに決まってんだろ」
「あぁ……そっか。そう言う捉え方もあるね。そっか、そっか。でも、それって良い考えだよね。じゃあ私も、これからは、他の人から『向井病』だって言われる様に、もっと頑張るよ。ホント、それ、良いと思うよ♪」
がぁ……ダメだコイツ。
俺が余計な事を言っちまったから、更に上を目指す気になっちまいやがった。
なんなんだよコイツは?
「いや、眞子。頼むからよぉ。女の子にとしての普通の幸せを掴んでくれよ。……それ、確実に、可愛げが無いから、女として終わってるぞ」
「ふむ。……なるほどねぇ。女として可愛げがないのは大きな問題だね」
「だろだろ!!なんだ解ってくれたのか!!」
「うん、解ったよ!!じゃあ『崇秀病』って呼ばれるんじゃなく『向井病』って言われる位に成った上で、可愛げがあれば最強って事だよね。流石、真琴ちゃんだよ!!完璧なアドバイスだね!!『良い勉強』をさせて貰ったよ」
……アカン。
この子は完全にアホやから、なにを言うても良い方向に捉えよるわ。
コイツ、俺以上のポンコツな精神の持ち主だな。
だったらもぉ、余計な事を言うの辞めよ。
このまま行ったら、コイツの危険度が増す一方だからな。
「あぁっそ。……そりゃあ、良かったな。だったら精々世の中に迷惑が掛からねぇ程度に頑張ってくれ」
「うんうん♪ありがとう。真琴ちゃんの期待に応えれる様に、精一杯頑張るね♪」
うん……だから、その笑顔は止せ。
確かに、何でも出来て、可愛かったらマジ最強だって思えるからよぉ。
変に立証せんで良い。
……つぅか、オマエ、今の時点で、かなり最強の部類の女の子だな。
まぁ……つっても。
俺にとっちゃあ、何所まで行っても『奈緒さんが№1』な事だけは、絶対に揺るがねぇけどな。
それにしてもコイツって、マジで天然なのに、オッカネェ女だな……
……いや、違うな。
やっぱり『天然』だからオッカネェんだな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
さてさて、今回のお話、何か感じて頂けるものはあったでしょうか?
まぁまぁ、極々当たり前の事を書いてるだけなので『特になにも感じなかった』っと思って下さるのが一番良いのですが。
今回のお話では『謙虚な気持ち』と『向上心』について少々書かせて頂きました。
まぁこれに関しましては【上を目指す者であるならば、必ずしも持っていないとイケナイ気持ち】なんですがね。
どんな事で上を目指すのであっても『現状で満足してる様では先が見えなくなる』
所謂【慢心しちゃいけない】【謙虚な気持ちでいた方が良い】って事を倉津君にお伝えしたかったんですよ。
実際、これがないと上手くいきませんし、本編の中であっても、崇秀、奈緒さん、眞子なんかは一切慢心はしてませんしね(笑)
さてさて、そんな中。
漸く、その手の話も道端で解決しましたので、此処からは眞子が言う目的の場所に移動して行く訳なんですが。
一体、眞子は、何処に行くつもりなのでしょうね?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
【ちょっと蛇足(笑)】
この謙虚な気持ちって『受験勉強にも関係のある事』なので、敢えて此処で収録させて貰いました♪
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