1041 到着が早いか、ナンパされるのが早いか?(笑)

 親切に勉強を教えてくれる眞子が居ないと、イマイチ勉強に気が入らない倉津君。

そんな眞子からの連絡で、今日は、いつもとは違う場所で勉強をすると言う通達が入ったのだが、一体、どこでやるつもりなのか?


***


 ……まぁ、そうやって眞子には最低限度の注意だけはして置いたものの。

矢張り待ってる相手が眞子なだけに『駅前で俺を待ってる間だけでもナンパをされるんじゃないか』っと言う不安は拭えない。

なんせアイツは、一見したらシッカリしてる様に見えるんだが、そのくせ、結構なお間抜けさんな所もあるからなぁ。

そんな奴を駅前なんかに1人で放って置いたら、直ぐにでも馬鹿な男共にナンパされかねぇ。


そんな訳も有ってだ。

此処からは出来る限り急いで自分の部屋で今日の勉強の準備だけ済ませて、駅前までチャリで100%全力ダッシュをするのが懸命の様だな。


俺が駅前に到着するのが早いか。

はたまた、ナンパ野郎共が眞子に声を掛けるのが早いか。


此処からは、そう言った時間との勝負になるだろう。


……そんな感じの到ってシンプルな結論に行き付いた俺は、眞子から掛かって来ていた電話の受話器を荒々しく戻したと同時に、そのまま、慌てて部屋に戻り。

今日使うであろう勉強用具の一式を一気に鞄に詰め。

愛車であるチャリに飛び乗って、ケイデンス(回転数)MAXの猛ダッシュで駅前まで繰り出して行く。


眞子、頼むから、この短時間で変な男に捕まってるなよ!!


***


 ……そんな息をするのも忘れる位の回転数で駅前まで立ち漕ぎをしながら、出来る限りの全力ダッシュを試みてみたんだが。


その苦労は、矢張り報われなかった。

俺の必至な苦労なんて物は、即座に水泡に帰していた。


駅前で待ってる眞子には、早くも野郎共が数人集まって、案の定アイツはナンパされてやんの。


まぁ、この結果は、眞子の容姿から考えれば、当然の結果と言えば当然の結果なんだが。

あまりにも予想通りの展開に、一瞬、俺はアングリと開いた口が閉じなくなっていた。


……けど、このまま放って置く訳にも行かないので、ナンパ師諸君の近くまで一気にチャリを走らせて、その場に乱入を試みる。



「お~い、眞子。悪ぃな。豪く待たせて悪かったな」

「あぁ、来た来た。……あぁ、それじゃあまた、良かったらライブに来てね」


あれ?

そうやって急いでチャリで、その場に突っ込んではみたものの。

これって、今、聞いてる範囲じゃ、眞子がナンパをされてたって雰囲気じゃねぇな。

なんだか眞子自身も、相手の事を良く知ってるみたいだし。


それにライブに来てね?って、なんじゃそりゃあ?


( ゚д゚)ハッ!

あぁ~~~~!!これって、ひょっとして……


……って事は、なにかい?

俺は、ただの『お間抜け突撃隊』な役回りだったって訳かい?



「おぉ、行く行く。前以てライブの告知さえしてくれたら、絶対にいつもで行くからさぁ。出来れば、前以て告知だけはヨロシク」

「あぁ、うん。出来るだけ、ネット上での告知は早く出す様に心掛けるね」

「ホント、頼むよ。鞍馬のライブは、いつも突然過ぎるからなぁ。前以て告知だけはして欲しいんだよな。チケットが手に入り難いんだからさぁ。その辺だけは考慮してくれよな」

「いつもギリギリになって、ごめんね。……でも、最近ちょっと受験勉強とかで忙しくてね。どうしても不定期に成るから、ライブの告知とかをするのが中々出し難い状況なんだよね。……本当に、いつも突然になっちゃって申し訳ない」


あぁ……これは、やっぱりナンパなんかじゃなくて、ライブに来てくれる客との、ささやかな交流をしてただけみたいだな。


じゃあ、ダッシュまでして、そこに割り込んだ俺って……なに?


ダッサぁ~~!!

うぅ~~~わっ、真相が明らかに成ったら、マジで俺ダッサァ~~!!


……それにしても、あれだな。

眞子の奴、本当に申し訳無さそうな表情をしてやがるな。


こう言う表情にさえ、人間性ってもんがキッチリと出るもんなんだな。


妙に感心した。



「あぁ良いって、良いって。俺等は、鞍馬のライブに行きたいだけだから」

「そぉそぉ。そんな顔しなくても良いって。次のライブも必ず行くからさ」


おぉ……眞子の誠心誠意が相手にも通じたらしく。

ファンの奴等との交流の中で、次のライブに来て貰える約束まで取り付けやがったよ。


まぁ、奴等は、元から行く気満々だった様な気がしないでもないが……


しかしまぁ、こうやって眞子を見てると。

ヤッパ、人間って誠心誠意、相手に対して接する事も大切なんだな。


まぁ、そうは思ってはみたものの。

俺にゃあ、こんな真似、地球が逆さに成って西から太陽でも登らない限り、度台無理な話だろうけどな。


オィちゃんには無理。



「ありがとう。じゃあ、今度のライブも、期待に応えられる様に精一杯頑張るね♪」


そう言いながらも眞子は、また表情を変えて今度はニコッと微笑むんだけど……


うわっ、コイツ!!

なんて可愛らしい笑顔をファンに向けやがるんだ!!

一瞬にしてファンの奴等も、そんな眞子の表情に見蕩れてやがるぞ。


男にとっちゃあ、この万華鏡の様に変わる女の表情ってのは、反則技に等しいからな!!


……まぁそうやって、眞子の笑顔にやられたファンの連中は少し照れた様な表情を浮かべたまま、この場を立ち去って行くんだが……


眞子って……天然のクセに、おっかねぇ女だな。


いや寧ろ、天然だからこそ、おっかないって認識が正しいのかも知れねぇけどな(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


眞子の知名度って地味に高いので、矢張りファンに囲まれてしまいましたね。

ただ、この辺の知名度を、まだよく解っていない倉津君からしたら『ナンパされるんじゃないか?』なんて心配する気持ちが解らなくもないですね。


でも実際は、知名度が高ければ高い程、相手が委縮しちゃうので、道端でナンパされる事なんて言う事はないんですけどね(笑)


さてさて、そんな中。

勉強する為に真琴の街合わせ場所にやって来た倉津君なのですが。

今回の一件が気に成った様で、眞子とこのまま少しだけ話をするようです。


次回はその辺のやり取りを書いて行きたいと思いまうので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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