1035 スタファちゃんに感する眞子の思惑

 実家に銭湯並みの大きなお風呂を作った理由は、地方出身者のランカーが『孤独に苛まれない為』の保険だった。

それに納得した眞子は、その後ものんびりと崇秀の部屋に居たのだが。

とあるベースの話が持ち上がって来て……


***


「あれ?崇秀さぁ。あのベースって、なにか知らないの?」

「いや、詳しい話までは知らないが。ある程度ならジムのオッサンから聞いてるから知ってるぞ。……あれって『イワク付きだったベース』だろ」

「そぉそぉ、そのイワク付きの……って、なんですと!!」


ちょ……そんな話聞いてないよ。



「オイオイオイオイ、なんちゅう顔してるんだ、オマエ?」

「えっ?えっ?えっ?ちょっと待って!!ちょっと待って!!『だった』って、どういう事?『だった』って!!……あの、『だった』って事は、もぉ『イワク付きじゃない』って認識で合ってるって事?」


……嘘でしょ。



「まぁ、そうだな。ある意味、その認識で間違ってないな」

「でっ、でも、どっ、どういう事?なんでベースの呪いが解けちゃってる訳?」

「いや、なんでって、俺に聞かれても困るんだがな。ジムのオッサンに『オマエが、まだ欲しがってる』って言ったらな。あの馬鹿親父、バチカンまで、あのベースを持ち込んで、呪いを解いて貰ったらしいんだよ。……だから今じゃ、あのベースは呪い商品どころか、ありゃあ、バチカンの洗礼を受けた神聖なベースだぞ」


えぇ~~~っ!!ジムさん頼むよぉ……

なんで寄りにも拠って、そんな余計な真似をしちゃったんですか……


そんなの『スタファちゃん』じゃないよぉ……



「嘘でしょ……」

「いや、嘘もなにも、在りのままの事実なんだがな」

「じゃあ、なんの意味無いじゃん」


今日一番のガッカリな情報だよ。


折角『スタファちゃん』が届いて喜んでたのにさぁ。

これじゃあまるで、別物になってるんだもん。


そりゃあないよ。



「オイオイ、意味ないってなんだよ?オッサン、オマエの事を気に入ってるからこそ、そこまでやってくれたんだぞ」

「まぁ、そうなんだけどさぁ。あのベースって、それが有るからこその価値なんじゃないの?それが無くなっちゃったら、意味無くない?」

「オマエなぁ。あんま馬鹿な事を言ってんじゃねぇぞ。そんな訳のわからねぇ呪いとか言う奴が、オマエに良い影響を及ぼす訳が無いと判断したから、ジムのおっさんは、そこまでしてくれたんだろうが。……それに大体なぁ、そんなおかしな呪いなんぞに期待するから、そんな反応になるんだよ。……ホント、なんも解ってねぇな」


確かに……仰る通りですけど。

スタファちゃんは、真琴ちゃんの高校受験の最終兵器にするつもりだったからショックが大きいよ。


今、真実を聞いて眩暈しちゃったもん。



「あぁまぁ、意見としては正当だよ。……でもね。私としては、あの『なにも満足しない呪い』の効力が欲しかったのよ」

「馬鹿じゃねぇのオマエ?物に頼って、物事を成功させようと思ってんじゃネェよ。人間の意志なんてものは、自分で構成するもんだぞ」

「うん。……それも解ってるんだけどね。使うのは私じゃなくて、受験が終わるまで真琴ちゃんに使って貰おうと思ってたのよ」

「あぁ、そう言う事か。だからベースが届いた筈なのに1度も確認しようともしなかった訳だな。……しかしまぁ、とんでも無い事をやらかしてくれたもんだな。最悪だぞオマエ」


えっ?最悪って……


そんな言い方しなくても……


それに私、まだなにもしてないよ。



「なんで、そんな言い方するのよ?」

「あのなぁ。まずにしてジムのオッサン、オマエの為だけに『自腹』を切ってまでバチカンまで行ったんだぞ」

「えっ?自腹でバチカンって……嘘?」

「それによぉ。あのベース、オッサンがスゲェ渋ってたのに、半無理矢理に頼み込んで譲って貰ったんだぞ。オマエ、そんなオッサンの気持ちすら、全然理解してねぇじゃねぇかよ」


そんなに嫌だったんだ……


でも、普通に考えてもそうだよね。

ジムさんも商売をしている以上、お客さんに呪いの商品を売ったとあっては世間体が良くないもんね。

それを少しでも払拭する為にも、わざわざバチカンまで足を運んでくれた訳だし……


それなのに私、早急に自分が使う訳のでもないのに、ジムさんに無理を言っちゃったんだ。



「ごめんなさい。それに余計な出費をさせて、ごめんなさい」

「このアホタレが。どうも、まだ解ってねぇみてぇだな」

「解ってるって。ちゃんと解ってるよ」


崇秀に余計な出費をさせたのも。

ジムさんが、私なんかの為に、わざわざバチカンまで行ってくれた事も重々解ってるよ。


だから重々に反省してるよ。



「いいや、オマエは、まだなにも解っちゃいねぇよ。まずにして、金の話なんぞが出る時点で、オマエは、なにも解っちゃいない証拠じゃねぇかよ」

「どうして?」

「あのなぁ眞子。あのアホなオッサンはな。オマエが、どうしても『GUILD 67 STAR-FIRE4が欲しい』って言うから、短期間で心血を注いでオマエ専用の完全なカスタム・ベースに仕上げてくれたんだぞ。……自分で使う気が無いオマエの為だけにな」

「あっ……」

「オマエさぁ、あのカスタムされたベース1本に、一体どれだけの労力が注ぎ込まれてるのか考えた事はあるか?」


……本当だ。


私……本当に最悪だよ。

人の必至な気持ちや、親切な気持ちも考えず。

調子に乗って『意味無いじゃん』なんて言っちゃうなんて、一体、何様に成ったつもりだったんだろ……


私、なんで、あんな人の親切を蔑ろにしちゃう様な馬鹿な言動をしちゃったんだろ……


救いがないぐらい最悪だよ(´;ω;`)ブワッ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


眞子の心境も解らなくもないんですが。

これは、もぉ完全に怒られても仕方がない案件ですね。


まぁまぁ、眞子自身も本当に『スタファちゃん』が欲しかったのは間違いないのですが。

ジムさん自体が嫌がってた上に。

それを自分が使う為じゃなく、別方向で使おうとしてたのでは流石に人の道を外れてますからね。


……っとまぁ、そんな状況の中。

この後も崇秀の説教が続く訳なのですが。

眞子は一体、この案件について、どう言う決断を下すのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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