1033 人間カイロ(笑)

 静流お母さんとのお風呂場でのスキンシップの話をしようと、崇秀の部屋にやってきた眞子だったが。

まだ崇秀は仕事が残っているらしく、その間、ファッション雑誌なんかを読みながら情報収集をして待っていたら……


***


 ……そのままの状態で、小一時間程経過。

ズッとパソコンに向って集中し続けてた崇秀が、漸く此処に来て1度伸びをした。


終わったのかな?



「よっしゃ、これで取り敢えずは終了」

「あぁ、終わったの?」

「あぁ、今日、明日分の雑用は終わったな」

「雑用?雑用ってなに?」

「まぁまぁ、そう慌てるなって。ちょっと、その前に茶を淹れ直してくるから待ってろ」


あぁイケナイ!!

私は、なにを呑気に終わった事を確認しようとしてるのよ!!


もぉ……私って、なんて気遣いの出来無い女なんだろう。


崇秀は仕事で疲れてるって言うのに……



「あぁ、ごめん!!直ぐに私が淹れ直してくるから、崇秀はコタツに入ってなよ」

「んあ?あぁ、んな事ぐらい、気にしなくて良いぞ。自分の事ぐらい、自分でやるからよ」

「そんな事を言わずにさぁ。お願いだから、私にお茶淹れさせて」

「んあ?なんだよ、どうしたんだよ、オマエ?」


どうもこうもないよ。



「だってだって、こんなにイッパイ気遣いして貰ってるのに、私が、崇秀になにもしてないのなんて変だよ。私もなんか、崇秀にしてあげたい」


じゃなきゃ、余りにも女として情けな過ぎるよぉ。

本来なら仕事中にお茶を淹れて上げなきゃイケナイ処なのに、優しくされたからって、それさえも怠ってしまった。

その上で、此処で崇秀にお茶まで淹れて貰ったんじゃ、立つ瀬も、なにもあったもんじゃ無い。


ミットもなさ過ぎるにも程があるよぉ。



「いや、お茶ぐらい、別に、どうでも良くねぇか?」

「ヤダよ。崇秀にだけは、気遣いが出来無い女なんて思われたくないもん。それに甘えてばっかりじゃ、また甘える悪い癖が付いて馬鹿になっちゃう。……だから、お願い、崇秀にお茶を淹れさせて」

「あぁっそ。じゃあ頼むわ」


ヤタ!!

崇秀が折れてくれたから、お茶を淹れてあげる事が出来る!!

……でも、これからは、こんな事が無い様に出来るだけ気を付けるね。


ホント、少しでも甘える環境があったら、そこに直ぐ甘えてしまうこの性格だけは、早めになんとかしなきゃだしね。



「あぁ、うん♪あっ、あっ、あの、それとね。私の座らせて貰ってた座椅子に座って。少しぐらい暖かくなってると思うから」

「いや、そこまでしてくんなくても良いぞ。オマエ、さっきから気ぃ遣い過ぎ」


えっ?なに言ってんの、この人?


ドッチがよ?



「あの、嫌かなぁ?私が座ってたんじゃ嫌かなぁ?」

「オイオイ、座椅子如きで、なんちゅう顔するんだ、オマエは?」

「だって。……今は、本当に、これ位しか出来無いんだもん」


ごめんね。



「あぁ、もぉ解った、解った。座るから、そんな顔すんな」

「本当!!やった!!」

「なんだかなぁ」


あの……今日、何度も聞いたセリフなんですが。


阿藤海さんですか?


『なんだかなぁ?』


……なんて、思いながら。

コタツから素早く出て、お茶の用意をするんだけど……本当に寒いね、この部屋。

さっきは風呂上りで、体が火照ってたから気付かなかったけど、本当に寒い。

私にとっちゃあ、極寒だよ極寒!!


それにしてもまぁ、こんな寒さの中で、良くも平然とした顔で仕事が出来るもんだね。


そう感心しながらも。

寒さに弱い私は、手際良く、お茶の用意をして、パタパタとコタツに戻ってくる。


そんで、借りていたドテラを崇秀の背中に掛けて。

崇秀の前にチョコンと座って、私の背中の体温で体を暖めてあげる。


序に、崇秀の手を私の前で交差させて、その手をぎゅっと持ってね。



「えへへ、人間カイロ♪」

「ははっ、なにやってんだかな?オマエって、ホント、これ、好きだよな」


なんて苦笑いを浮かべてくれてるけど、崇秀の体は、完全に芯まで冷え切ってる。


その証拠に、私の背中が凄く冷たい。

その他にも手なんて凍ってるんじゃないかって位、冷たくなってる。


これは、もっと早く崇秀を暖めてあげなきゃね。



「うん、好きだよぉ。だって、これ、暖かいじゃない」

「いや、そりゃあ俺自身は、かなり暖かいけどよぉ。オマエは寒くないのか?確かオマエって極度の冷え性だっただろ」

「全然寒くなんかないよ。1人でコタツに入ってるより、こうしてる方がズッと暖かいもん」

「強情な奴だな。そうやって体を冷やしても知らねぇぞ」

「良いもん。冷えたら、また崇秀と一緒に風呂に入れば済む問題だもん」

「そう言う問題か?それに風呂ばっかり入ってると、仕舞いにオマエふやけるぞ」

「そう言う問題です。それに半身浴にしますんで、ふやけません」

「あっそ。じゃあ、それで良いわ」

「じゃあ、そう言う事にしとこう」


今、フッと思い付いただけなんだど、それも有りと言う方向で。


でもさぁ。

そう考えると、広い風呂より狭い風呂の方が、体が密接するから良いよね。

意外と、小さい風呂にもメリットが有るなぁ。



「あぁ……それはそうとオマエ、なんの用事で来たんだ?」


なにもないよ。


ただ来たかっただけ。


まぁ実際は、お風呂場でのお母さんとのスキンシップの話をしようと思って来たんだけど。

私が何も言わなくても、こんなにも私を大切にしてくれてる崇秀なら、このお母さんとのスキンシップの話を聞いて喜んでくれるのは間違いなさそうなので、もぉ話さなくても良いかなって感じだしね。


って言うか、将来、本当の家族に成るんだから。

お母さんと仲良くするもの『嬉しい事じゃなくて、当たり前の事』なんだと認識出来るように成らなきゃいけないんだろうしね。



「えぇっと……特に、これと言っては」

「あっそ。ホント、なんだかなぁ」


……とは言ったものの。

このまま、なんの話題もないのも問題なのかもね。


だったら、別方向で気に成った話題の方を振ってみようかな?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


恋人に甘やかされると、ついつい嬉しくなって甘えてしまうのは仕方がない事。

ですが逆に言えば、相手に甘えて貰える様な行動を取れば、相手に喜んで貰えてる証拠にも成るので、この辺は逆転発想してみるのも良いかもしれませんね(笑)


さてさて、そんな中。

お母さんとのスキンシップを図った話は、崇秀が言わずとも納得してるだろうと考えた眞子は、なにやら別の話題を振る様な素振りを見せているのですが……


この話題が意外にも重要な話にも成って行く可能性がありますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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