1032 崇秀の部屋に報告に行っただけなのに

 静流お母さんと一緒に入浴をし、更に親密度が深まった眞子。

それが嬉しくて、早速、崇秀の部屋まで報告に向かうのだが……(笑)


***


『コンコン』



「崇秀。まだ起きてる?」

「んあ?あぁ、起きてるぞ。なんか用か?」

「あぁ、うぅん。別に用って程の話じゃないんだけど。邪魔にならないんだったら、少しだけお部屋にお邪魔しても良いかなぁ?って」


出来ればダメとか言わないでね。

お母さんが気を使ってくれてた面があるにしても、お風呂場で本当の親子の様なスキンシップを取れた事を、崇秀にも知って貰いたくて仕方がないんで報告させて下さい。


勿論、これは私個人の我儘だから、当然、忙しかったら諦めるけど……



「あぁ、じゃあ勝手に入って来いよ。別に遠慮する間柄でもねぇだろに」


ヤタ♪

特に断る雰囲気もなく、入室許可が貰えた♪


じゃあ、お言葉に甘えて、早速遠慮せずにお部屋にお邪魔しますね♪



「じゃあ、お邪魔しちゃうね♪」

「おぅ。風呂上りで体冷えちゃあイケネェから、入るなら入るで、さっさと入って来い」


うわっ、来た。

扉のノブに手を掛けた瞬間、早速、優しい言葉を掛けて貰っちゃったよ。


これを聞いただけでドキドキするね。

それを証拠に、顔が赤くなって行くのがわかる。


どうしよう、どうしよう?


普通に開けようとしてただけのノブから、ついつい手を離しちゃったし……


ホント、女性脳は大変だね。

些細な事でも、体全身が喜んじゃうんだもんね。



『ガチャ』



「ひゃ!!」

「なにが『ひゃ!!』だ。つぅか、扉の前で、なにやってんだオマエ?」

「あぁいや、あの、その……なんて言いますか……」

「なんだかなぁ。その様子だと、長風呂し過ぎたか?顔が真っ赤だぞ」

「へっ?……あぁ、うんうん、そぉそぉ、そうなんだよね、そうなんだよね。お母さんと話し込んじゃってさぁ。風呂場で茹っちゃったのかなぁ?間抜けだよね。ははっ……」


この赤い顔は、もうそう言う事にして置いて下さい。

幾らお母さんとの話がしたいからと言っても、この気持ちまで崇秀にバレたら少し恥ずかしいしね。


それにしても、自分で言うのもなんなんですが、なんとも乙女心がMAXな発想ですね。


……私って、本当に男だったのかなぁ?なんて疑問が湧いてくるぐらい此処まで顕著に感情が出るって事は、元から女なんじゃないのかなぁ?


そんな疑問すら、自然に湧いて来るよ。



「まぁ良いや。兎に角、部屋に入れ。風呂上りで、体を冷やすのは良くないからな」

「あっ、うん。じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔しますね」

「なんだかなぁ」


この気持ち、男の人には解んないと思うよ。

この感情だけは、女性特有のものだと思うしね。


そんな事を思いながらも、崇秀の部屋に入れて貰う。


そんで部屋の中に入ったら。

さっき来た時とは違い、コタツには、新品っぽい座椅子が用意されており。

見るからに、ふかふかの座布団まで敷かれている。


これって、まさか……



「まぁ、ちょっとの間、コタツに入って適当に寛いでろ。どうしても、今日中に片付けとかなきゃイケネェ案件が有るからよ」

「あぁうん、わかった」


でも、敢えて、その置かれている真新しい座椅子には座らなかった。


だってさぁ。

崇秀が自分の為に買って来た物だったら、そこに座ったら厚かましく見えるだけじゃん。

大体にして、そう言う自意識過剰なのって格好悪いし、そう言う神経の図太い無神経な女だと崇秀には思われたくないからね。


なので、此処は大人しく他の席に座りましょう。



「オイオイ、折角、座椅子を買って来てやったんだから使えつぅの」

「えっ?これって、私用に買って来てくれたの?」

「あぁ、さっきプリンターのインクが切れたから、序に買って来ただけだ。だから気にせず使って良いぞ。……なんなら、さっきのお茶のお礼だとでも思っとけ」


・・・・・・


私には、もぉなにも言う事がありませんので。

此処は素直に、崇秀の言葉に甘えて座椅子に座らせて貰お。



「あぁ、うん、ありがとう。ふかふかで暖かいよ」

「そっか。そりゃ良かったな。あぁそれとな。さっき、読み終えた女性用のファッション雑誌が、そこら辺に転がってるから、俺の案件が終わるまで、それでも読んで退屈凌ぎしとけな」

「あぁうん、ありがとう。……なんか至れり尽くせりだね」

「違ぇよ、このカラパカ」

「へっ?」

「俺は、その雑誌を読んで最新ファッションの情報収集をしろつってんの。オマエに無駄な時間なんか使わせねぇよ」

「あぁ、そう言う事でしたか」


あっ……そっち。


じゃあ、仕事の邪魔になら無い様に、大人しく雑誌を読んでるね。


……って思ってると。

崇秀は着ていたドテラを脱いで、背中からふわっと掛けてくれる。


崇秀の体温が残ってて……暖かいや。


でも、このさり気ない気遣いは、幸せすぎて死んじゃうね。

簡単に『ポテッ』って死んじゃうね。


だけど、これは、流石にダメだ……



「あぁ、いいよ、いいよ。コタツに入ってるから、此処までしてくれなくても大丈夫だって。風呂上りだから、そこまで寒くないし」

「まぁそう言うなって。この部屋は暖房を入れてないから、結構、寒いんだよな。そんな状況で、オマエに風邪でも引かれたら堪ったもんじゃねぇから、嫌じゃなきゃ着とけ」

「でも、それだと崇秀が寒いじゃん」

「うっせぇなぁ。ゴチャゴチャ言ってねぇで、大人しく着てろつぅの」

「あぁ、はい。じゃあ、着てます」

「バカタレが。最初から、素直にそうしとけよな」


うんうん。

じゃあ、お言葉に甘えて、崇秀の独特の香り好きだから着てるね。


私、生粋の匂いフェチみたいだし。


それに、このドテラを着てるだけで、崇秀に背中から抱っこされてるみたいな感覚になるから色んな意味で暖かいしね。


でも、そんな幸せな感覚とは別に、どうしても1つだけ疑問が有るんだよね。



「ねぇねぇ。……でもさぁ、部屋が寒いとわかってるんなら、なんで暖房を付けないの?」

「あぁ、なんてこたぁねぇよ。少しでも部屋の中が暑いと、頭がボケッとするから暖房を付けてねぇだけのこった。温度が高いと、頭の効率が悪くなるんだよ」

「あぁ、そう言う理由なんだぁ。……それにしても、そう言う部分も徹底してるんだね」

「まぁな。けど、本音を言えば、結構、寒かったりするんだけどな。でも、頭も、体もシャキッとしてる方が、仕事がスムーズに進む。それに、こうやって時間の無駄を避けられる方が、後でゆっくり出来るだろ」


なるほどねぇ。

こうやって色々なやり方を試しながら細かい点までチェックして、徹底的に効率を上げてるんだね。


凄く感心はしたんだけど……此処だけは、絶対に真似は出来無いね。


だって私……極度の冷え性だから、こんな事をしたら、簡単に凍え死んじゃう。



「まぁ、つぅ事だから、ちょっとだけ待ってろな。さっさと終わらせちまうからよ」

「あぁうん。じゃあ、邪魔しない様に大人しくしてるね」

「いや、別に普段通りにしてりゃ良いぞ。基本的に、なんも気になんねぇから」

「そうなんだ。……相変わらず、凄い集中力なんだね」

「まぁな」


そう言った後、ポンポンっと私の頭を軽く叩いてから、どこからともなく温かいお茶を出してくれた。

それを出し終えると崇秀は、咥え煙草をしながら、仕事用の机に向って一心不乱にパソコンを叩き始めた。


まぁ、この作業スタイルは、いつもの事なんだけど。

今見てる感じでは、以前と比べて、大分、余裕が出来たのか、前みたいに鬼気迫るものは感じなくなっている。


その代わり、外界との接触を、完全にシャットアウトしてるのが手に取る様に解る。

なんて言ったって、今、淹れて貰ったお茶のお礼を一言添えたんだけど、全くの無反応。


このお礼すら、なにも聞こえていない様子だったからね。



……でも、此処で一番感心した事は、煙草の煙がコッチに来ない様に、空気清浄機を灰皿の横で掛けている事。

あれって、自分の真横で電源を入れただけでも、結構、寒くなるのにね。


どこまでも凄い気遣いだよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


皆さんは、自分の大切な彼氏や彼女に対して日頃から気遣いをしてますか?


まぁまぁ、こう言うのって、思ってても中々出来ない事が多いのですが。

ほんの些細な事でも良いので、少しいつもとは違う気遣いをしてあげると相手には喜んで貰えるものなんですよ。


まぁそうは言っても、この手の感情って言うは一過性の物なので、相手も直ぐに忘れてしまうかも知れないのですが。

それを積み重ねる事によって『思い出』になり。

自分が如何に相手を大事にしているかが伝わり、絆に成って行きますので、是非是非、少し冷め気味に成ってるカップルの皆さんにはお薦めの行為でございますよぉ♪


冷めてないなら、尚更お薦めですが(笑)


さてさて、そんな中。

崇秀の仕事の終わりを、雑誌を読みながら待つ眞子なのですが。

その間に、自身が話したい事は纏められるのか?


次回は、その状況下でどうなって行くのか?を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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