1025 相手を想えばこそ起こりえる弊害

 崇秀が自身のツボ的に眞子の気に入ってる点。

それは見た目なんかではなく『人に対して自然に気遣いが出来る点』ではあったのだが。

こう言う話をするにしても、その他にも、なにかありそうな気がした眞子は……


***


「ねぇ、崇秀」

「んあ?」

「別にさ、そんな風に無理に本音を隠そうとしなくても良いんだよ。本当は、それ以外にも何か有るんじゃないの?」

「おっ?流石は彼女だな。俺の心を読んだか?」

「あぁ、いやいや、なにかが解った訳じゃないんだよ。今のは、なぁ~~んとなく、そんな気がしただけだから」

「そっか。じゃあ、包み隠さず言うけどな。今日の、オマエの部屋であった一件でな。漸く、俺自身にも、全ての踏ん切りが付いたんだよ」

「えっ?踏ん切りがついたって、どういう事?」

「オマエの『覚悟』も、その時してくれた『話』も、嘘や偽りなく、女として俺を心から求めてくれていただろ。だからな。オマエにだけは、いつも素の自分で接しようと思っただけのこったよ」


……素の崇秀。

それを、私なんかに?

あまり本音を前面に押し出す事が無い崇秀が、私なんかに素の姿を見せてくれるって言うの?


それがこの話をした真の理由?



「あの……」

「オイオイ、変に身構えるなよ。別にオマエを取って喰おうって訳じゃねぇ。……ただ、少々忘れかけてた『恋愛の妙』って奴を楽しみたくなっただけのこったからよ」


違うね。

これも、なんか違うね。


崇秀は、こう言ってはいるけど、なんか言葉の節々から、別の意図がある事を感じる。



「ふふっ、なにを言うかと思えば。……そう簡単には騙されないよ」

「おっ?中々鋭いな。……して、此処は、どう読む?」


ヤッパリだ。

もう一段階なにかありそうな物言いだったから、やっぱりまだ別の意図があったんだ。


だったら、可能性的に言って、あれかな?

多分、崇秀は、あの事で、まだ何か引っかかってる部分があるんじゃないかな?


なら、予想の範疇を越えてはいないけど、今度は少しそこを突いてみようかな。



「そうだねぇ。これは例えばなんだけどさ。さっきの私の部屋での話で、また『新しい負い目を感じた』って言うのが、今回の正解なんじゃないかな?」

「ほぉ、良い読みだな。……なら、その時の俺の心境は?」

「それは簡単。私と崇秀の間に温度差があったって話だからね」

「ほぉほぉ。解り易く説明してくれるか?」

「あぁ、うん。……じゃあ、例えばね。今までの崇秀はね。ズッと、少々の負い目を感じながら私と付き合ってくれてたとするじゃない。……っで、さっきの私の部屋での話で、私が本気の本気で崇秀を異性として求めていた事に、漸く確信として得れた。でも、それと同時に、それを目の当たりにして、私を恋愛的に疑ってた事に対しての『新しい負い目』を感じた。此処は、そんな感じじゃないかな?」


もし仮に、この答えが合ってるならね。

これは中々解決し難い、深い蟠りを持った複雑な心の問題だとは思う。


何故ならね。

私みたいな、自分の立場も何も考えていない様な一直線な馬鹿だったら、安易に崇秀が『好きだ!!大好きだぁ!!』って簡単に思えちゃったり、それを口に出してハッキリ言えちゃうんだけど。


……崇秀の場合は違う。

物事を深く考えすぎる性格が災いして、考えなくてもいい様な奥の奥まで考えちゃうから、まずは上辺を取り繕った上で、何事も無い様に私と付き合いながらも、キッチリと私の本音を引き出して行こうとする。


これが、私が女性に成った日から、今まで崇秀が色々な私の本音を引き出してきた理由でもあり。

そこで起こっていた私の心理の変化を、全て受け入れてきてくれてた理由でもある。


けど、悪い事に、そこで女性としての私の本音を聞いて行けば行く程、崇秀は深く負い目を感じてしまう。


……何故ならね。

崇秀に対して本気になってる私を、いつまでも疑って試している自分に嫌気が刺して来てしまっただろうからね。

だって、此処は『ただ普通に人を試す』のとは、少々方向性が違う話だしね。


……でもね。

これは本来『負い目』を感じる必要なんて無い話ではあるんだよ。

実際、元男だった私の心境で『本当に女性として自分の事を求めてるのか?』なんて、崇秀が幾ら考えても答えが解る筈が無い。


だって崇秀は男に生まれて、男として生き続けているんだから『これが完璧に解る』って言う方が、寧ろ、どうかしてる。


幾ら人の心理等を学問で色々勉強してても、これは前例が無い事。

ある程度の予測をする事が出来ても、いつまで経っても確信を得るまでには至らなかった筈だろうしね。


でも、そこまで解っていても、崇秀にとっては、矢張り、安易に考える訳にはいかない。

此処は、私なんかの事を親友だと見てくれてる部分が大きいんだけど『私の崇秀に対する想いが、体の変化による弊害でしかなく、それを私が恋愛感情だと想い込んでいたらイケナイ』って思うのと同時に

もし仮にそうなっていたら、即座に私の考え方を正してやらないとイケナイって心が先行してしまうからだ。


崇秀は、どこまで行っても、そう言う男。

その彼の持っていた疑心暗鬼こそが悪影響を及ぼし、今の崇秀が陥ってる状態に招いたものだと思う。


まぁ、こうやって長々と崇秀の心理状況を説明しては来たんだけど、とどのつまり、なにが言いたかったかと言うと『優しすぎる』んだよ、崇秀は……


こんな私の事を、誰よりも一生懸命に考えてくれるからこそ、崇秀は、自身に対する嫌悪感に苛まれてる。


解答としては、こんな感じだと思うんだけど……違うかな?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


相手の事を深く考えるからこそ起こりえる【弊害】って言うのも、世の中にはあったりするんですね。


これは愛情の深い人ほど陥りやすい問題なのですが。

それで恋愛が上手くいかなかったのでは本末転倒なので、何事も『程々』って言うのが大事なのかもしれませんね。


実際、眞子みたいに自分に正直に成って突っ走るのも悪くはないと思いますし(笑)


さてさて、そんな中。

眞子は、自分の出来る範囲での予想を崇秀に伝えた訳なのですが。

果たして、その眞子の言葉に、崇秀は、どう言う反応を見せるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


そして眞子……調子に乗って話してるのは良いのですが、この子なんか忘れてませんかね?(笑)

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