1022 美味しいカレー

 森田君とウッチーの話が一応は解決した瞬間、崇秀のお腹の音が鳴ったので、眞子は料理をしに台所へ。

そこで偶然にも、静流さんと鉢合わせしたので一緒に買い物に行く事に成ったのだが、その帰り道、ある出来事が起こった様で(笑)


***


 あのね。

静流お母さんたらね。

街行く高校生や大学生位の若い世代の男の子に何度も声を掛けられて、なんの違和感もなく普通にナンパされてるんだよね。


31歳のお母さんに対して若い子達がだよ。


それに対して、お母さん優しいからさぁ。

サッと相手の身嗜みを、綺麗にしてあげてね。



『そうやってオバちゃんをからかうんじゃないの。ほれ、若い子は、もっと若い子に行け』

……なんて、気風の良い言葉を発すると同時に、その子達のお尻を『パンッ!!』って叩いてクスクス笑ってるのよね。


でも、そのお母さんの笑顔がまた、超可愛いんだよね♪


まぁ、お尻を叩かれた相手は、意味も解らず、ただ目を白黒させてたんだけど。

それを見ていた私としては、中々滑稽で面白かった。


……って、そんなこんなが色々有りながら、漸く家に到着する。


勿論、玄関口から、そのまま食材を持って台所に行き。

今日使う分と、使わない分との食材を仕分けして、素早く冷凍庫に入れて保存。


そんで今日の料理開始する。


……でもね。

此処で意外だったんだけど。

静流お母さんって、実は、料理に関しては凄く不器用なんだよね。


なんか、ズッと包丁を持ったまま『はわわわ……はわわわ……』してて、一向に調理が進む様子がない。


それに手も切っちゃってた。


……けど、これは、なにも笑う事でもなければ、別に、おかしな事でも、なんでもない。

この……静流お母さんはね。

崇秀を、母親1人で育てる為だけにズッと仕事ばっかりしてたから、料理なんかしてる時間が一切無かったのよ。

出来ちゃった婚だからって世間の皆さんに崇秀が笑われない様に、必至に働いた結果、こう言う弊害が生じた訳だからね。


だから、とても、とても、笑えた話じゃない。


それに私も、お母さんの料理に腕までは知らなかったけど。

この家庭の事情だけは、昔から良く知っていたので、お母さんの邪魔にならない様に、ここら辺を上手くフォローさせて貰った。


……そしたらね。

思ったよりも、早く調理が出来て嬉しかったのか、お母さんが、優しく私の頭を撫でてくれた。


静流お母さんには、此処で初めて、女の子らしさを直接的に褒められたので……少し気恥ずかしい。


……でも、お母さん。

右手で包丁を持ったまま、玉葱触ったままの左手で頭を撫でるのは、流石に無しだよ。


嬉しいのはわかるけど、お願いだから、それだけはヤメテ下さいな……


危ないし、髪の毛が玉葱臭くなるのはヤダよ。



……まぁそんな、ほのぼのとして感じで。

『お母さんの特製のカレー』が出来上がって、リビングで崇秀と、お母さんと、私の3人で食事を戴いたんだけど。


これがまた!!


意外と!!


えぇっと……正直言うと『良くも悪くも普通のカレー』でした。


でもね、でもね。

カレーの味なんかより、愛情タップリだから、それだけ凄く美味しく感じられるのよ♪


そんな『ヒデ飯』や『奈緒飯』に匹敵する、とっても愛情の篭った、とっても美味しいカレーを戴いてご満足。


それで、食べた後の食器を台所に持って行き。

即座に片付けを終えた後。

再び3人で、リビングにあるコタツに仲良く入って、私が、一家団欒の『オマケ』をさせて貰ってると。


煙草を吹かしていた崇秀が、急に立ち上がって……



『オイ、お袋、眞子。お茶飲むかぁ?』


……って、言ってくれたのね。


でもね。

そこは『男がする事じゃない』と判断した、少し古臭い昭和初期的な考えの私は、コタツから出て、即座に立ち上がる。


まぁ本来は、こう言う事って、誰かが動く前に率先して私がやるべき事なんだけどね。

なんてったって、この家庭のオマケみたいな存在ですからね。



……って事なんで。



『あぁ、お茶なら、私が淹れて来るから、崇秀は座ってなよ。男は、そんな事しなくて良いの』


そう言って、有無を言わさず崇秀の横をすり抜けて台所に行き、テキパキとお茶を入れる準備をする。


こう言う男性の気遣いって、女性としては、本当は凄く嬉しいんだけど、そう言うのは言葉や気持ちだけで良いんです。


ヤッパリ男なら、ドシッと構えてて欲しいもんですからね。


だから、この辺は、絶対にやらせない。



……なんて思いながら、台所で、お茶を淹れてたんだけど。

『これって……ホントに幸せな時間だよね』なんて、また実感してしまっている。


だってさぁ。

好きな人が居て……

好きな人のお母さんが居て……

その大好きな2人が、私みたいな、なんだか良く訳の解らない人間を丸々受け入れてくれてる。


これだけでも十分満足に値する事なのに。

その上、今まで得れなかった、こう言った極有り触れた日常さえも満喫させて貰える。


私にとっては、これ程、楽しくて贅沢な時間は無い。


勿論……今までも崇秀や、静流お母さん以外の人にも一杯お世話になりながら、自分では精一杯出来る限りも事は色々させて貰って来たけど。

仕事紛いの事と、家庭の事は、ヤッパリ別物なんだね。


人生を謳歌する為に努力して楽しむ事も凄く大切な事だけど、ヤッパリ暖かい家庭は何物にも変えられない一番の理想。

こうやって、暖かい家族を体験させて貰って、初めて、そこを実感させて貰った。


だから、去年までの私の人生は、色々と無駄が多過ぎたとも同時に思える。


もっと家族で仲良くすれば良かった。


だって……本当の幸せは、こんなに近くに有るんだもん。


私って……本当に馬鹿だよね。



……まぁ、そう言う事を考えながら、ポットのお湯を湧くのをジッと待ってると。

此処で、心配になったのか、お母さんがワザワザ台所にやって来てくれた。


当然、私にとっては、これすらも嬉しくて堪らない。


お母さんが台所に来てくれただけで、顔が、ついつい綻んじゃう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


皆さんは、日常の中にある幸せって、どれぐらい感じられますか?


まぁそこに関して眞子は、少々過剰反応に成っているのですが。

1つ1つ丁寧に幸せを感じて行ったら、意外と見落としてる幸せと言うものがあるかもしれませんよ(笑)


さてさて、そんな中。

少々そう言う感覚を皆さんにも思い出して欲しいので、まだ少しこの眞子の日常に於ける幸せ語りが続くのですが。

何処をどう感じれば『意外と自分も幸せなんだなぁ』って言うのを次回も書いて行きたいと思いますので。


良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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