1021 眞子が感じる極有り触れた日常の幸せ

 受験編初登場に成る筈だった倉津君だったが。

何故かそれを語る前に『眞子に先に話をさせて欲しい』っと持ち掛けられ、渋々承諾したのだが。


果たして眞子は、何を語るのか?(笑)


***


 あぁもぉ、いつもいつも、こんな調子の出だしで同じ事バッカリ言っちゃって、気持ち的にはごめんさいなんだけどね。

極有り触れた日常が此処にあるって事は、本当に何物にも変えられないぐらい『幸せな事』なんですね。


あの例のクリスマスの日以降から約1年。

こんな風に毎日を楽しく送れる日々が続くなんて、夢にも思わなかったですよ。


……私が、そう思えるのも。

あの、さっきしていた森田君とウッチー関連の説明を終えた崇秀のお腹が、急に『くぅ~~~』って可愛い音を立てて空腹を知らせたのが切欠。


この無意識下で鳴った、お腹の音が全ての始まりだった。


***


 『くぅ~~~』


長かった説明を終えた崇秀が、一息付く為に空気清浄機の電源を入れ。

愛飲の赤マルに火を付けた瞬間、なんとも、そんな可愛らしい音が、部屋の中に鳴り響いた。


そしてタバコを吹かしながらも『おっ』っと言う様な表情を浮かべて、お腹を抑えている崇秀。


どうやら、この様子からして、思ってた以上にあの2人の説明の時間が長く掛かり。

体に蓄積されていたカロリーが一気に消費されてしまったみたいだね。


早い話『お腹が空いたみたいなんだよね』


だから此処は、早速対処すべく。

静流お母さんに、家にある食材を分けて貰い。

なにか食事を作ってあげようと思って、台所に向って行ったんだけど。


これがまた満良く、台所で夕飯を作ろうとして、買い物のメモをしていたお母さんと鉢合わせ。

それでお母さんが、これからスーパーに買い物に行く事を即座に察知した私は、家のお手伝いを兼ねて、買い物にお供させて貰う事にしたのよ。


……っで、当然、荷物持ちには崇秀が、お母さんによってご指名が掛かった。


でもね。

崇秀は、この件に関しては、文句の1つも言わずにコタツから直ぐ出て、サッと上着を着て、買い物に行く準備を即座に整える。

恐らくこれは、崇秀自身が海外生活が長く、家に、あまり居られないが為に、最近、親孝行があまり出来ていないのを気に病んでの事だと思う。


自分なりの贖罪の意味を込めているんだろうね。


まぁこうしてですね。

崇秀と、静流お母さんと、私の3人で、夕飯の買い物をしに駅前のスーパーに行く事になった訳なんですよ。


……っと言っても、此処は本来、本物の親子だけで過ごすべき時間。

赤の他人の私なんかが、此処に入れて貰う事自体が、本来なら大分厚かましい話なんだけど。


なんかね。

この時点で、崇秀や静流お母さんと本当の家族みたいな気持ちになってて凄く嬉しかったりしたから、そんな事を考える余裕すらなかった。


それで序に、やらかしちゃったんだけど。

静流お母さんにピッタリくっ付いて、本当の親子みたいに腕なんかも組んじゃったりしちゃったの。


ホント、私って図々しいよね。


……まぁまぁ、それはさて置き。

当然、スーパーに食材を買いに行ってる訳だから。

店側が用意したショッピングカートに、これまた店側指定の黄色い籠をセットしてカートを押しながら、今日の料理に必要な食材を買って行く訳なんだけどね。


此処で崇秀が、ある暴挙に出ちゃうのよね。


なにをしたか?って言うとね。


この男……食材の金額を一切見ずに、自分の調理に必要そうな高い商品をポイポイと買い物籠の中に入れて行くのよ。


そしたら……『ポカッ』って、音と共に、その暴挙を見ていた静流お母さんに頭を叩かれて。


『ナンデモカンデモ、値段も見ずに、買い物籠に入れるんじゃないの。この馬鹿息子。少しはウチの家計ってモノを考えなさい。家計ってもんを』

なんて言われて、滅茶苦茶怒られる訳。


でも、崇秀にしたら『久しぶりに美味しい物を食べさせてやろう』なんて思惑が多分あるもんだから、簡単には折れない。


それに話を簡単に聞く程、素直な性格じゃないから、スーパーで買い物してると言う人前にも拘らず『ケチな事ばっか言ってんじゃねぇよ。上手いもん作るにゃあ、それなりの食材が要るの。金額ばっか見てねぇで。ちっとは、そのものの価値を知りやがれ』


そう言い返した。


でも、次の瞬間……『ポカッ』って、再び頭を叩かれて。


『無駄に贅沢するんじゃないの。そんなんだから、アンタは、いつまで経っても料理の腕が上がらないのよ。この馬鹿息子』

なんて、静流お母さんは、なんとも恐ろしい言葉を言い返すんだよね。


……なにが怖いかって?


当然、静流お母さんの言葉だよ。


今のセリフは、あの『崇秀の美味しい料理』を『下手糞だ』って言ってるのと同然の言葉を言ってるんだよ。


そんなの普通に怖いって!!


大体にして『そんな事って、普通有り得る?』なんて、疑問が湧くぐらい怖いよ。


まぁまぁ……その辺は、崇秀のお母さんだけに、なんとなく有り得るんだろうけどね。

でも、怖いから、此処は深く干渉しないで置こう。


……っで、結果。

崇秀が、このまま一緒に買い物に付き合ってたんじゃ、買い物の金額がドンドンと跳ね上がる一方だと判断した静流お母さんによって強制的に崇秀を家に帰らせる事を指示する。


哀れ崇秀は、この場で退場。

フェードアウトを余儀なくされた。


勿論、そんな不条理な事を言われたから。

帰り間際には、散々ブツクサ文句を言いながら帰って行ってた様だけど……此処も敢えて、放置して置こう。


それにしても、あんな崇秀……初めて見た。

年収数100億を越えるGUILDの長も……お母さんの前では形無しって訳だね。


まぁそれでね。

その場に残った私と、静流お母さんの2人で、買い物を継続するんだけど。

まずは、崇秀がポイポイ入れた高い商品を、全部元あった場所に戻す事が先決。


でも、それと同時に、夕方になって『割引シール』を張られた食材を上手く購入して行く事も忘れちゃいけない。


此処、一番重要。


まぁ、その甲斐も有ってね。

私が見た感じでは、この商品の入れ替えだけで3割強の食費削減になってるね。


買い物上手なのは、家庭を預かる女の子の必須条件ですからね♪



……っで。

それらの買った商品を、家から持って来たお母さんお手製の買い物袋に入れながら、レジで貰ったビニール袋を綺麗に三角折りにして、いつか、なにかに使える様にする。

(買い物袋の有料化は2020年7月1日からなので、この時代はまだ無料です)


此処は『主婦の知恵』って奴だね。


主婦じゃないけど……



まぁまぁ、そうやって出来上がった2つの食材が詰まった買い物袋を、お母さんと私の2人で1つづつ分け分けに持って、此処からは楽しく会話をしながら帰路に着く。


まぁ他人から見れば、極有り触れた普通の親子の光景なんだろうけど、私にとっては、もぉ……これだけでも、十分楽しくて仕方がない。

まさに私が思い描いていた『親子の理想の形』が、此処にあるって感じですね。


そんな感じで、嬉しさのあまり、ズッと笑ったまま、お母さんの横を並びながら歩いてたんだけど。

その帰宅途中の短い道のりで、少し面白い事があったのよ。


……それがなにかって言うとね(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


受験編なのに、眞子が何を語り出すのかと思えば、突然の幸せ語り。

これが前回の最後からの続きの話になるのですが、果たして、此処からどう受験の話に繋がっていくのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思います……が、眞子がこの調子だと、少し受験の話からは逸れそうなので、どう繋がるかの前提話だと認識して頂けたら有り難いです(笑)


そんな感じですが、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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