1018 デートなのにデートにならない法則

 閑話休題を含みながらも、いよいよ『森田君とのデート』と言う言葉を使った崇秀の真意が明らかに成る!!


***


「それでさぁ。早速で悪いんだけど、森田君のデートの件は、なんでデートにならないの?」

「簡単だろ。アイツは放って置きゃあ、自然とウッチーに心が行っちまうからだよ」

「へっ?なにそれ?」


あらら。

これはまた、なんの脈絡もなしに唐突に変な事を言い始めたね。

森田君の気持ちがウッチーに行くなんて、現状ではあり得ない話なんだけどなぁ。


なんでそうなるの?



「わかんねぇかなぁ?実に単純明快な法則なんだがな」

「う~~~ん。概要的なものだけで捉えるなら、教えて貰ってる内に、まずウッチーの心が、森田君に向くって話だよね」

「まぁ正解だな」

「うん、だったら意味自体は解るよ。でもさぁ、そんなに単純な物なの?」

「あぁ、そこに関しては単純だろうな」

「なんで?こう言っちゃあなんなんだけど、結構、森田君って、ウッチーの事を嫌ってるよ」

「アホ。この件に関しては、そこまで深く考える必要なんてねぇんだよ」


なんでだい?


人間関係ってのは、そんな単純な物だっけ?



「どうして?」

「んあ?それはオマエが、大人の観点でモノを見てるから、複雑に物を考え過ぎてるだけだからだ」

「大人の観点?そんなので、私、見てるかなぁ?」

「あぁ、十二分と言って良い程見てるぞ。その見方は、実に打算的な見方だ」


そぉかなぁ?


これって、人の好き嫌いの話だから、極力シンプルに考えてはいるつもりなんだけどなぁ。

1度でも嫌いになった相手って言うのは、中々、相手を良い様には見れない様な気がするんだけどなぁ。



「どこが?」

「『どこが?』ってオマエ。……アイツ等の関係で、なんか重要な事を1つ忘れてないか?」

「えっ?なにか忘れてる?」

「あぁ、大いに忘れてるなぁ」

「なにそれ?」

「年齢だよ年齢」


年齢とな?


なんで、そんなキーワードが急に出て来るの?



「なにそれ、どういう事?」

「なぁにな。これこそ本当に単純な話なんだがな。普通の15歳の男女ってのは、彼氏や彼女が欲しくてしょうがない年齢なんじゃないのか?」


確かにそうだね。

私も、そうだったんだけど、彼氏や彼女を一番欲しい年代では有るよね。

他の子達と差を付けたい為にも、そう言う気持ちに焦りが生じてた時期もあったしね。


だったら、此処は間違ってないね。



「あぁ、うん、解る解る。その気持ちは良く解るよ」

「だろ。……っでだ。それに付け加えて、オマエとは、絶対に付き合えない事を森田は心のどこかで認識している。……此処まで解るか?」

「うん。そこはそうだね。私は100%揺れる気持ちは無いって断言してもOKなぐらいだから。森田君には、そう思われても然りだね」

「だろ。だったら、手近な所に行くんじゃねぇか?」

「かもね。でもさぁ、敢えてそこで、特に好きでもない相手にワザワザ行くかなぁ?」

「所が、これが簡単に行っちゃうんだよな」

「なんでさぁ?」


理屈は解るけどさぁ。

嫌いから、好きになるプロセスが、なんか解り難いなぁ。


幾ら彼氏や彼女が欲しくても、嫌いな者って言うのは、何処まで行っても嫌いなもの。

そんな簡単に割り切れるもんじゃないと思うんだけどなぁ?



「時間だよ時間。これから、アイツ等が過ごす時間」

「あっ、そっか。森田君が受験勉強を手伝ってくれる以上、これからあの2人って、結構な時間を一緒に費やす事になるんだよね。……あぁ、でもさぁ。それだったら、マッキーや、宮ちゃんにだって、その可能性は有るんじゃないの?選択肢が1/3である以上、ウッチーだけって言うのは少し変じゃない?」

「いいや。仮にそうで在っても、一番可能性が高いのは、矢張りウッチーだな」

「なんで、なんで?なんで、そんな風に断言出来るの?」


この分じゃ、なんか見落としてるのかなぁ?



「カラパカ。シッカリ、その空っぽの頭で考えろ。この3人で、ウッチーだけが違う所を見付けられれば。自ずと答えは出て来る筈だぞ」

「ウッチーと、他の2人の違い?……だとしたら塾とか?」

「正解だ。ただ、まだ足りなくないか?」

「まだ足りないかぁ。……だったら、成績かなぁ」


受験関連になると、この2つしか思い浮かばないなぁ。


まぁ、性格とかも全然違うけど、此処は、あまり関係無さそうだしね。



「おぅ、それだ」

「あぁ、そうなんだ」

「そぉ。……っで、これで3つのキーワードが揃った訳だ。じゃあ、どうなる?」

「えぇっと。『彼氏彼女が欲しい年代』で『ウッチーが塾に行ってなく』て『成績が悪い』かぁ。えぇっと、あれ?……なんだろ?」

「わかんねぇか?」

「あぁ、うん。ちょっとね。どうしても引っ掛る部分があるから、上手く成立し難いのよ」

「ほぉ、そりゃあどこだ?」


言うまでもないんだけどね。

ヤッパリ『嫌い』ってキーワードが、どうしても引っ掛る。

幾ら同じ時間を2人で過ごしたからって、そんなそんな簡単に、時間が解決する問題でもない様な気がするんだけどなぁ。


だから、どうしても、此処が微妙なんだよね。



「あぁっと、敢えて言えば、ヤッパリ『嫌い』ってキーワードかなぁ」

「なるほどな。そこで引っ掛って、前に進めない訳な」

「うん。そうなのよ。単純に考えた場合ね。『彼氏彼女が欲しい年代』って言うのはOKなのよ。私もそうだったし。それでね。塾に行ってない時間を、森田君がフォローしてくれるって言うのも解る。それで、成績が上がったとしたら、喜びを分かち合うって言うのがあるから、普通なら、これもカップルとしては成立しやすい話。でもね。結論から言うと、それだけで嫌いが解消されるとは、どうしても思えないんだよね」

「まぁ、言ってる事は正論なんだがな。なら此処に、家族ってカテゴリーを加えてみろよ」

「家族?ウッチーの?」


なんで、そんなものが此処で出て来るんだろうね?



「そぉそぉ。ウッチーの家族。ほらほら、ウッチーの親父さんは、ウッチーの高校合格に必至なってんじゃねぇのか?……なら、親切にしてくれてる森田の姿を見て、親父さんは、どう思うんだろうな?」

「えっ?そりゃあ、一生懸命、森田君を歓迎すると思うけど」

「だろ。……っで、此処で、森田を気に入った親父さんが言いそうな定番のセリフはなんだ?」

「えっ?それって『森田君、ウチの雪子と付き合ってみたらどうだ?』とか言う奴?」

「そぉそぉ」

「えぇ~~~?でもウッチーが、そんなのだけで意識するかなぁ?」

「それがな。此処も簡単にするんだよ。そこに成績が上がるってエッセンスを加えりゃ。尚更、簡単に起こり得るんだよな」


うわ~~~っ、なんかヤナ感じの話になってきたぞぉ。


崇秀の真骨頂ッポイね。



「それって、あれの事?『森田……私の為に、こんなに頑張ってくれてる』って思う女子特有のあれ?」

「そぉ、それだ。……っで、それに対して、ウッチーのそんな姿を見た森田は、どう思うよ?」

「あぁ、多分『なんだよコイツ。意外と頑張ってんじゃん』かな」

「そぉだ。そこに生まれるお互いのギャップこそが勘違いを生ませる。その上で、長い時間一緒に居て、喜びを分かち合ってたら、どうなるよ?一緒に居る事自体が、楽しくて仕方なくならねぇか?」

「うわっ……最悪だよ。だから、デートなんて言ったんだ」


なんて事を考えるんだろ。


ビックリしたよ。



「そうだな。まずはそうやって、オマエを餌にして森田の必至さを上げる。そんで、その相互作用でウッチーの成績を上げさせる。……完璧だろ」

「でもさぁ。ウッチーの成績が上がらなかったら、どうするつもりだったの?」

「それはねぇな。森田はあぁ見えて、人に勉強を教えるのが上手いからな。此処は間違いない」


なるほどねぇ。

そこまで織り込み済みか。


大したもんだね。



「じゃあ、最後に1つ質問して良い?」

「あぁ、どうぞ」

「森田君の気持ちが揺るがなかった場合は?」

「ないな。これがまた、完全に揺ぐんだな」

「なんでさぁ?100%なんて有り得るの?」

「有り得るな。何故なら、俺とオマエ。それに森田にウッチー。この4人で、新年の初詣に行く予定だからな。合格祈願の話を絡めれば、ウッチーは必ず、この話に喰い付いてくる。それに森田も、オマエが来るとなると行かない訳には行かない。なら、これで万事OKなんじゃねぇのか?」


初詣ねぇ。


まぁ受験生なら、最後の願掛けで行くだろうね。

でも、それだけで、万事OKは言い過ぎじゃない?



「そうなの?」

「あぁ、完璧だ。但し、そこで、俺とオマエがイチャ付く必要はあるけどな。森田に対して、本当に無駄だと証明する必要性だけはあるからな」

「仮に、それを見せ付けられたとしたら?」

「森田は愕然とするだろうが、ウッチーの心境としては、その真逆。いつもお世話になってる森田が可哀想に見えるだろうし、慰めたくもなる。それで必要以上にテンションを上げてハッスルする可能性すらある。……だが、このウッチーの無理こそが恋愛の妙でな。無理をしてるのが解るからこそ森田には『健気』に見える。だから後は、放って置いても2月14日にでも解答が出るんじゃねぇか」


この人って、ホント最低ですね。

完全に人の人生を弄んでるじゃないですか。

よくもまぁ、こんなロクデモナイ事ばっかり、即座に思い付いたもんだね。


……でも、自分の心理を読まれる方にも、問題があるのも事実。

そう言う立場から脱したかったら、努力するしか無い訳かぁ。


……あぁでもウッチー。

どこかの美樹お姉さんみたいにハッスルし過ぎて、困った物を装備しちゃダメだよ。


あれだけは『伝説の呪われた装備』だからね。



「なんとも言い難い話だね」

「まぁな。でもよぉ、そぉ悪くねぇんじゃねぇの。俺は、アイツ等2人が、意外と、お似合いのカップルだと思うぞ」

「そうかもね。意外と相性良いかもね。……カカァ天下だけど」

「プッ!!そら言えた」


……っと言う訳で。

受験が終わる頃には、森田君も、ウッチーもお互いに首っ丈になっているらしいです。


そんで結論的には『デートの約束をしたとしても、デートをする事には成らない』そうです。


なんともまぁ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


結局の所、デートにさえならなければ、どれだけデートと言っても問題ない。

そしてそれと同時に、心理的な誘導を用いてデートにならない手段を持っているのなら、尚更、何を言っても問題ない……ってお話♪


もっと解り易く嫌な言い方をするのであれば、崇秀は『森田君に眞子を諦めさせる為に、心理的な手段を用いて、ウッチーを代用として差し出した』って事ですね。


いやホント、この男だけは最低ですね(笑)


まぁでも、そうは言っても、ウッチー自身は、ショートカットの可愛い子なので、別に森田君にとっても悪い事ばかりと言う訳でもないんですけどね。


さてさて、そんな中。

次回は、第一章第五十九話の締めの話をしたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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