1015 2人の生命が終わるまで
森田君とのご褒美デートの件が納得いかない眞子は、その話をする為に崇秀の家に来たのだが。
そこで眞子が見せた『日常を有難く感じる姿』が引き金となり、崇秀が眞子に対して持ち続けていた疑問をぶつけた結果、まずはそちらの問題を解決する事になった。
***
そう想いながらも、崇秀の実家に用意して貰った私の部屋で、制服のままベットに腰掛けて足をプラプラさせながら待つ事15分。
『コンコン』っと言うノックの音が、扉から鳴り響いた。
でも、此処で焦る事などなにもない。
私は、もぉこの件に関しては覚悟を決めているのだから。
なので後は、自分の思いの丈を崇秀に伝えて、彼が、私をこうしてしまった『贖罪の念』を全て取り払って上げたい。
もぉ……この事で、崇秀を苦しませるのは嫌だ。
「どうぞ」
「おぅ、入るぞ」
いつもの態度。
崇秀も、なにかを覚悟しているらしく、いつもとなにも変わらない態度で部屋に入って来た。
でもね、そう言う覚悟なんて、本当はなにもイラナイんだよ。
崇秀の本当の気持ちを、私に在りのまま伝えてくれれば、それだけで良い。
変に身構える必要なんて、必要の無い事なんだよ。
「うん。じゃあ早速だけど。横に座って、崇秀の、今の気持ちを教えて。私を拒絶しても良いよ」
「拒絶だと?」
「うん。もぉ無理をする必要なんてないからさ。嫌なら嫌で良い。だから、ハッキリ言ってくれて良い。もぉ上辺だけの男女の付き合いなんてヤメよ。私は、そんな負い目を感じて付き合って貰うのなんて、もぉイラナイから」
……嘘。
本心では、この幸せを、絶対になにが有っても逃したくない。
でも、このまま偽りの男女関係を続けて行く方が辛い。
だから、ケジメを付けなきゃイケナイ部分は、早々にケジメを付けるべきだと思う。
「ふぅ。まぁ落ち着け」
「ごめん。早急過ぎたかな?」
「いや、そう思われてても仕方がないとは思う。それに正直言えば、俺に、そう言う観点が無かったとも言い切れないからな。だから、少し落ち着いて話そう。こればっかりは、早期に解決を図る問題じゃないだろ」
「だね」
そう言いながら、崇秀は、ゆっくりと私の横に腰を掛ける。
そして、私をジッと見詰ている。
たった、これだけの仕草で、私の鼓動は早くなり、顔が赤くなって行くのが解る。
どうやら私の気持ちに、嘘偽りはない様だ。
私は……本当に崇秀が好きだ。
「さて、眞子。まずオマエは、どうしたい?」
「どうもしたくないよ。私は、崇秀が、どうしたいかを知りたいだけ。自分の気持ちに正直になってくれれば、それで良いよ。……いつも、自分が与える側だと思わないでね」
「だな。……しかし、オマエから、その言葉が出るとは思ってもみなかった」
「ふふっ、調子に乗りすぎだよ。自分を何様だと思ってる訳?ちょっとぐらい偉いからって、人の感情までは左右出来無いよ。私は1個人として、1個人の仲居間崇秀に話をしてるの。崇秀は、私の事、どう思ってる訳?そこだけが知りたい」
負い目を感じての付き合いだと、なにもかもが終わってしまう。
そんな最低最悪な恐怖を孕んでいる。
でも、話を始めてしまった以上、もぉ後には引けない。
「わからねぇんだよ」
「そっか。わからないか……」
「あぁ、ただなぁ。此処で変に誤解すんなよ。オマエの事が嫌いとか、そう言う訳じゃねぇんだ。寧ろ、本気で好きだと思う。……けどな。そこに負い目を感じてないか?と聞かれれば、それが無いと言えば嘘になる。だから、そこがな、どうにも微妙な所なんだよ」
そっか……ヤッパリ負い目は残ってたか。
まぁでも、そうじゃなきゃ、私なんかと付き合うなんて無謀な真似はしないよね。
だけど、こうやって自分の心の内を正直に話してくれたのは嬉しいかもね。
こう言う事を隠したままじゃ、お互いが、後で後悔するだけだもんね。
「だよね。じゃなきゃ、私と付き合うなんて発想には成らないもんね」
「いやな。それが、そこはそうでもないんだよなぁ。……なんてたって事実よぉ。オマエが他所を向かない様に、必至こいてる自分が居るんだよな。だからよぉ、決して、そんな負い目だけでオマエと付き合ってるって訳じゃねぇんだよな」
そぉ……なんだ。
私はテッキリ、負い目だけで一生懸命してくれてるのだと思ってた。
そうじゃないんだ……
「あのさぁ。それって、ちょっとは本気で好きに成ってくれてるって事?」
「いや、だからよぉ。ちょっとじゃねぇんだよな。ハッキリ言えば、最高だと思ってる。でもな、心の何所かで、オマエを、そんな風にしちまった負い目が消えない。自分が幸せに成っちゃイケナイとは思わないが。オマエの、本当の気持ちが解らないんだよな。だから、そこが悩み処なんだよな」
「なんで?私、ズッと崇秀の事を好きだって言ってるじゃない」
「いや、まぁ、そうなんだけどな。それってよぉ、間近に俺が居るから、そう考えてるだけなんじゃねぇかなぁ?って思ってよ」
あのねぇ、崇秀。
私は、卵から生まれて直ぐに見た者を、親だと思うヒヨコちゃんじゃないんだからさぁ。
ちゃんと解ってるっての。
「なんで、そんな余計な事を思っちゃうの?」
「アホかオマエは?敢えて俺みたいな変人を選ばなくても、世の中には、他にも良い奴なんか山ほど居るし、オマエのその見た目は、そいつらを虜にする事間違いなしじゃん。だったら、そいつ等に、オマエが出会ってないだけかも知れないだろ。そう思うとな。オマエが、本当に俺なんかと付き合って幸せに成れるのかが不安になるんだよ」
「いや、そんなに私の事を大切に想ってくれてる訳?」
「まぁなぁ。自分の親友を不幸にしようとは思わないな」
「だったらさぁ。崇秀が幸せにしてよ。……今でも十分な程に幸せだけど」
それで良くない?
「……っと、一般的にはそう思うだろ。でも、それが真理とは限らないんだよな」
「なんで?」
「まぁ、その辺は、かなり微妙な話ではあるんだけどな。俺は知っての通り、こう言う性格だ。だからな、将来的に考えても、オマエの事を放ったらかしにする事だって多々有るだろうし、下手すりゃ年単位で逢わない事すら有り得る。そんなモンが幸せなのか?って聞かれたら、一般の話とは掛け離れてるだろ。……そう言う男女関係ってのはマジで難しいから。オマエにとって、それが良いのか、悪いのかが判断し辛いんだよ」
なめられたもんだね。
そりゃあさぁ。
なんか前よりズッと嫉妬深くなってるから、多少は難しいラインなのかも知れないけどさぁ。
それって、お互いを理解してれば、納得出来る話なんじゃないかなぁ?
私自身も、崇秀と付き合い始めてからと言うもの、その辺の覚悟は有るんだけどなぁ。
「じゃあ、それで私は幸せだから、気にしないって方向で」
「オイオイ、そんな単純な話じゃねぇぞ。オマエはモテるから、俺に取っちゃあ、気が気じゃねぇんだよ」
「えっ?まさか……それって嫉妬してくれてる?」
「あぁ、情けねぇ話なんだが、これに関しては間違いなく嫉妬なんだよな」
「……嘘!!」
えぇ~~~~!!そんなにまで、私に価値を見い出してくれてる訳?
ホントなのそれ?
からかってる?
「いや、これがマジなんだよな。今までよぉ、こんな事ぁ1度も無かったんだけどな。事、オマエに関してだけは、何故か、そう言う感情が湧いてくる。……でよぉ。付け加えて言うなら、自分の仕事にすら支障が出そうなんだよ。だから、全てが微妙なんだよな」
……マジなんだ。
だったら、どうしようか?
崇秀の邪魔をするのは嫌だけど、ヤッパリ別れるのは、もっとヤダなぁ。
「あの、私、絶対に浮気とかはしませんよ。本当にしませんよ」
「そこは重々にして解ってるんだけどな。それでも、安心しねぇんだよな」
「なんでなんで?自信持ってよ。崇秀が一番最高だって!!私、余所見なんて出来無いって!!自分でもそう言ったんじゃない」
「まぁなぁ。確かに、そうは言ったがな。本心じゃ、そんなに簡単には割り切れたもんじゃねぇぞ」
「なんで、なんでよぉ?いつも簡単に割り切るじゃん。なんで今回に限っては、それが出来無いのよ?」
「さぁなぁ。わかんね」
そんなぁ……いつもみたいに、スカッと割り切ってよぉ。
そりゃあないよ。
嫌われてない処か、寧ろこんなに大事に思ってくれてるのに、そんなんじゃ、なに1つ納得出来無いよ。
「ヤダよぉ。割り切ってよ。私、絶対に崇秀しか見ないからさぁ。そんな事を言わないでよ。……これじゃあ、あまりにも酷いよぉ」
「そうなんだけどよぉ」
「じゃあ、せめて『嫌いだから失せろ』って言って。それなら、まだ諦めが付くから」
「オマエなぁ。人に、散々正直に言えって言って置いて、そりゃねぇだろ。今更言えるか、んな事」
「だったら、全部飲み込んでよ。私だって、崇秀とも、静流お母さんとも、お別れするのなんて、絶対に嫌なんだからさぁ」
……って言うか!!
翌々考えたら、アンタの方がモテるんだから、私の方が心配だよ!!
何所で、どんな女と知り合うかも解らないんだから、不安で一杯だよ!!
「解ってんだけどなぁ」
「あっそ。……じゃあさぁ、私が、崇秀の半身だって証拠を見せてあげるよ」
「んあ?なにするんだよ?」
私なりの覚悟って奴を見せてあげるよ。
そう想いながら、崇秀の手を取り、私の胸に手を宛がわせた。
「崇秀。私の心臓の鼓動が聞こえる?崇秀の近くに居るだけで、こんなに早く鼓動を打ってるんだよ?こんなに好きなのに、浮気なんてすると思う?私は、そんなに尻の軽い女じゃないよ」
「解ってるよ。だがな。オマエはモテ過ぎるんだよ」
「あぁそぉ。まだ、そんな事を言っちゃうんだ。……だったら」
「オッ、オイ」
その手を、私の下着の中に入れれば、納得も出来るでしょ。
一緒に居るだけで、こんなに濡れちゃうんだよ。
これでもダメ?
「んっ……これでも、信用出来無い?崇秀の事を想ったら、いつも、こんなになっちゃうんだよ。他の奴なんかじゃ、こんな事にはならないんだよ。んっ……」
あぁ、あの……指を、あんまり動かさないで下さい。
そのままイッちゃいそうなんで……
「眞子……」
「んっ……私は、崇秀が大好き。んっ……んっ……崇秀以外に、此処は触らせない。崇秀の為だけに存在してるんだよ。んっんっ……ズルイ…ズルイやり方かも知れないけどね。私の本心は、これでしか伝えられない。言葉で言っても、あっあっ……嘘臭くなるだけでしょ。これが、私の誠心誠意の答えだよ」
こんな方法しか出来無いのは、非常に情け無いんだけどね。
女の此処は、馬鹿女でもない限り、普通は男性に易々と触らせるものじゃない。
好きな男にしか触らせないもの。
私は、そう認識している。
だから卑怯なやり方かも知れないけど、これが一番解り易いと思うの。
そこまでしてでも……私は、崇秀と一緒に居たい。
二人の生命が終わる最後の最後まで、一緒に居続けたい。
だから……
解って欲しい……
……私、向井眞子は……
どんな事があっても、この世で一番、アナタを愛しています……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
お互いを知り尽くして来たからこそ、生じるこう言った問題。
特に崇秀も、眞子も、自分達が変人である事を自覚してるからこそ、相手の事を必要以上に考えてしまうのでしょうね。
まぁでも、それで恋愛が破綻してしまったのでは本末転倒。
それ故に眞子は、自らの意志で、女性として一番大切な体の部分に崇秀の手を導いてまで、これを阻止しようとしてる感じですね。
ぶっちゃけ、眞子にとっては死ぬほど恥ずかしい経験だと思いますです。
さてさて、そんな中。
この眞子の意志が崇秀に上手く伝わるのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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