1014 日常的にある幸せ

 崇秀の薦めもあり、ウッチー、マッキー、宮ちゃんの勉強を見てあげる事にした森田君。


それを有難くは感じる眞子だったが。

その気持ちとは裏腹に、崇秀には、どうしても言いたい事がある眞子は……


***


 ……って言う風な崇秀と森田君の会談が11月の外気の寒い道端で行なわれ。

最後には、森田君が折れ。

一週間後から、私の目標である『全員志望校一発合格』の手助けをしてくれる事になった。


でも、これは大きな収穫だ。


なんと言っても、勉強を1人で教えるのにも限界があったし、自分の時間と言うものが、殆どとれない様な状態が続いていたからね。


本当に有り難い申し出だ。


……でもね。

そこは非常に有り難いとしてもですよ。

この一件では、どうしても1つだけ崇秀に文句を言いたい部分があるんだけど……


なんで君は、クラス全員の合格成功報酬が『買い物』→『デート』にしてしまったのかね?


これってね。

崇秀が勝手に決めた事なんだけど、なにがあっても私は、他の男なんかとデートなんかしたくないつぅの!!


そんなのヤダぁ~~~!!


……っとか言う心の叫びをしながらも。

此処で、好条件を貰って上機嫌で帰る森田君とはお別れして、彼を見送った後、崇秀と2人きりになる。


なら此処は、勝手に決めた事に対しての『お詫びのデート』ぐらいして貰うべきだよね。



「ぶぅ!!ねぇ、ちょっと崇秀!!」

「んあ?なんだよ?」

「デートなんかしたくなかったのに……なんで一緒に買い物に行くだけなのに、デートとか言っちゃったのよ!!」

「あぁ、そうなのか?」

「したい訳ないじゃん!!人が買い物だって散々言ってるのに、なんでデートって言うかなぁ?勝手に決めないでよ」

「アホかオマエは?んなもん、なんも変わんねぇじゃねぇかよ。デートって名目で、買い物すりゃあ良いだけじゃんかよ。頭悪いなぁ」


違うもん、違うもん!!

買い物は、何所まで行っても買い物!!

デートは、何所まで行ってもデートでしかないの!!

名目は一緒でも、相手の感じるニュアンスが全然ちゃうわい!!



「ヤダ。デートって言っちゃったら、私は崇秀以外とデートをしなきゃいけない事になるんだよ。冗談じゃないよ。私は、アンタとしかデートしたくないの。そう言うの解ってて言ってるでしょ」

「あぁ、解ってて言ってるなぁ」

「もぉ最悪だよ。軽々しく乙女心を踏み躙りおってからに」

「でも、買い物も、デートも一緒じゃん。そんな変わんねぇだろうに」

「違いますぅ~~~。買い物は、誰と行ってもOKだけど。デートは、彼氏としかしちゃいけないんですぅ。私は、そんな尻軽女じゃありませ~~~ん」


恒例の詭弁ですけどね。

崇秀以外の男性と行動を共にする時は、そう言う口実が欲しいんですよ。


だってさぁ。

誰とでも軽々しくデートする女って、イメージ的に尻軽っぽくて嫌じゃない?


そんな風に勘違いされるのも嫌だし。



「なるほど。なるほど、なるほど。それは言い得て妙だな」

「でしょ」

「……なんて言うと思ったかカラパカ?オマエは、本当に、なにも考えてねぇんだな。頭悪すぎるぞ」

「なっ、なんでよぉ。デートの約束したんだから、話が成立してるじゃん」

「アホだコイツ。マジでわかんねぇのな。……まぁ良いや。そいつを知りたければ、取り敢えず、説明してやるから家に来い。……此処じゃあ、寒くて敵わねぇからよ」

「それって私が納得出来る様な内容なんだろうね?」

「当然」


……なんかイヤな予感。


***


 ……ってな訳でして、近くにある崇秀の家に移動する。


『ガチャ』



「ただいまぁ~~~っと」

「おかえり」


あっ、そうか。

今日は月曜日だから、美容室関連のお店の大半は定休日。

故に、静流お母さんも、お仕事が休みだから返事が返って来たんだね。


……っと、その前に、店が、まだオープンしてないんだった。


あぁっと、それはそうとさぁ……此処は私も『ただいま』って言うべきかな?

言って良いものなのかな?



「おぉ、お袋。眞子も来てるぞ」

「あぁ、そうなの?……じゃあ眞子も、おかえり」


ヤタ♪


これはもぉ『ただいまお母さん』って言って良さそうな雰囲気だ♪


嬉しい♪

崇秀、私の気持ちを察して、フォローしてくれてありがとう♪



「あぁっと、お母さん、ただいま」

「はい、おかえり」


うぅ~~~、感激だぁ!!

これさえ聞ければ、もぉさっきの話なんて、どうでも良いや。

私を仲居間家の一員として、一家の主であるお母さんが迎えてくれてるんだから、さっきの話なんか小さく感じる。


ホント、どうでも良くなってきた。


自分……単純な生き物なんで。



「なにニヤニヤしてるんだ、オマエわ?気持ち悪いなぁ」

「気持ち悪くないもん。崇秀には、この日常の有り難味が解らないだけだよ。アホな子だねぇ」

「日常の有り難味か。なるほどなぁ。確かに、そうかも知れんな。当たり前の様にある事を有り難く感じるのは難しい事だからな。それが解ってない様じゃ、確かにアホだな」


あり?やけに素直だねぇ。


どったの?



「どうしたの?なんか素直だね」

「いやいや、俺が、オマエから、それを奪ったと考えるとな。中々酷い事をしたもんだなって思ってよ」

「あぁ、でもさぁ。それに気付いたのは、こうなったからだよ。以前の私なら、親子での挨拶なんて煩わしいとしか感じなかったもん」

「あぁ、なるほどなぁ。失ったからこそ、有り難く感じるって事か」

「そぉそぉ。……でもね。崇秀は、こうやって、私に、またお母さんを与えてくれたでしょ。それで、静流お母さんも、こんな私を受け入れてくれた。だからこそ、この幸せを噛み締めれる訳なのよ。崇秀が居てくれなかったら、この日常の有り難味はわからなかった。……ちゃんと感謝してるんだよ」


なんて言いますかね。

そう言う部分を何気なく気遣ってくれる所が、崇秀の大好きな理由なんですよね。


そして勿論、それを受け入れてくれる静流お母さんも大好き♪



「そっか。じゃあ、ウチのお袋なんかで悪いが……」

「アンタ、シバクよ。私は静流お母さんだから良いの。まさに私の理想のお母さんだよ」

「そっか」

「そうだよ。仲居間家は最高だよ♪一分一秒でも早く嫁入りさせて貰って、私も仲居間眞子に成りたいもんですよ」

「・・・・・・」


あっ、あれ?

なんで、私がこんなに感謝の気持ちを伝えてるのに、そこで黙っちゃうのかな?


えっ?えっ?


……って言う事は、実は嫌なの?


もしそれが本当なら、馬鹿だから嫌なの?


それとも……


私は……これでも精一杯、眞子で在り続けたと思うんだけど……



「あの~~~……此処で黙られると、非常に辛いんですけど。ヤッパリ、私の事、本心じゃ嫌だったの?」

「いや、そうじゃねぇんだよ。オマエが嬉しそうにしてくれてる顔を見てるとな。本当に、これで良かったのかと思ってな」

「えっ?それ……どういう意味?私は、今の自分には十分な程満足してるよ。それに、これは私自身が自らの意思で選んだ道なんだから、崇秀が負い目を感じる必要なんてないんだよ」

「本当に、そうなのか?……オマエ、なんの後悔もないか?」


この崇秀の沈黙は、そう言う事だったのかぁ。

私の事が好きとか嫌いの問題じゃなく、私に対する負い目を感じてたんだね。


なら、此処はハッキリしとかなきゃね。



「ない。そんなものは寸分足りともない。私が私である以上、そんなものは微塵もないよ」

「そっか」

「まぁまぁ、その辺の話は後でしよ。此処、玄関口だから寒いっての」

「だな」

「じゃあ、一旦、此処で別れて、まずは、お互いの部屋で考えよ。それで崇秀が納得出来たら、崇秀が用意してくれた私の部屋に来て。……ズッと待ってるから」

「わかった。頭を整理するから、少しだけ時間をくれな」

「うん、了解」


そう言って、お互いの部屋に別れて行った。


みんなの受験の話をしようと思って崇秀の家に立ち寄ったんだけど、なんか大変な方向に話が展開してしまったね。


でも、これは……私にとって、受験なんていうクダラナイ物なんかより100倍も1000倍も大切な話。


本当に意味で、この辺のケリを付ける日が来たみたいだね……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


失ってこそ初めて解る日常の有難み。

それを感じる眞子を見て、どうやら崇秀は自責の念を感じてしまっている様ですね。


まぁまぁ、此処の問題は、かなり厄介な問題なので早々に解決出来るもんではないのですが。

眞子は、事この事に関しては、何か考えがある様で、それを解決してあげようとしてますね♪


さてさて、その方法とは如何なるものなのか?

そして、精神的に成長した眞子の姿を、そこで見る事が出来るのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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