1012 嘲笑え
人との差が生まれる要因は『時間の使い方』と『考えの持ち方の違い』だと教える崇秀。
それと同時に、それを聞いていた森田君に『あるもの』を手渡すのだが、これは一体、なんなのか?
そして、それを渡した崇秀の思惑とは?
***
「なになに?なに貰ったの?」
「これ……来年の九頭竜高受験の予想問題だよ」
あり?
意外と拍子抜けする様な普通なもんだったね。
崇秀が渡すものだから、もっとなんか凄い物かと思ってた。
だってさぁ、それなら私もズッと同じ様な物を作ってたからね。
でも、どういう構成で問題が作られてるか気になるから、見せて貰おうっと!!
「どれどれ。見せて」
「あぁ……どうぞ」
そう言って、手渡して貰った問題を見てみる。
でも、そうやって見せて貰ったのは良いんだけど……私の作ってた問題とは、全くと言って良い程アプローチの仕方が違う。
なんでだろ?
赤本とかを参考にしながら、同じ学校の予想問題を作った筈なのに、なんで、こんなに問題に差が出るんだろう?
「えっ?あれ?なんで、こんな出題形式になるの?」
「オイオイ『なんで?』って……そりゃあまた、とんだ情報不足だな」
「えっえっ?」
「良いか眞子。今年から九頭竜校は、受験問題を外注にしてるんだぞ。例年の問題形式で予想してたんじゃ、受験の日、慌てる事になるぞ」
「えぇ!!そうなの?」
「あぁ、この情報は一葉からの情報だから間違いないな。それと、外注先の受験問題を作ってる奴なんだが。こいつは、問題に、ちょっとした癖が出る奴なんでな。9割方、その辺を出題して来る筈だ」
情報戦かぁ。
その辺については、完全に怠ってたなぁ。
いやまぁ、そうは言っても、情報を集めてなかった訳じゃないんだけど、この手の情報って言うのは内部じゃなきゃ知られてない事。
当然そう成ると、普通なら一般人が目にする事のない情報だから。
モジャさんみたいなハッキング技術に優れた人もでもない限り、この情報を手に知る事は出来ないので、私の様な一般的な女学生には無理なんですよね。
しかしまぁ、それを踏まえた上でも、まさか名門高校が、受験の問題を外注を出してるとは夢にも思わなかったよ。
今年の九頭竜高校の受験は荒れそうだね。
「だったら、これで……」
「まぁ、予想問題は、所詮、何所まで行っても予想問題でしかないけどな。勉強の基本が出来てる森田なら、その辺については問題はねぇ筈だ。だからよぉ。それでさっさと受験勉強を終わらせて、眞子の手伝いをしてやってくれよ。それがオマエの最初の課題。ウッチー・マッキー・宮の3人を志望校に一発合格させてみせろ。オマエの、その学力の才能をひけらがせ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。……課題以前に、この問題を、そこまで信用して良いのか?」
「それは、オマエの自由だ。ただな。これは今、眞子がやってる事なんだがな。人に教える事によって、中学での勉強を復習している。勉強の理解力を高めるなら、1人でやるより、コチラの方が数倍効率的だぞ」
あぁ……知ってたのね。
「確かにそうだが……じゃあ、何故、その3人の合格を課題にし様と思ったんだ?」
「なぁにな。ハッキリ言っちまえば、そんなもんがなくても、オマエなら、九頭竜高校程度の偏差値の学校なら合格は間違いねぇ。だったら、どうせ眞子の手伝いをしてくれるなら、あの3馬鹿トリオの勉強を世話してやって、アイツ等のオマエを見る目を変えろってのが、このお題目の趣旨に成る訳だ。それが、アイツ等に対しても一番効果覿面だからな」
そうかぁ!!
本当の意味は、そこだったんだ!!
ご存知の通り、ウッチーとマッキーは、3年間、森田君をパシリに使っていた(1部41話参照)
それを勉強で覆す事によって、森田君に自信を持たせてあげたかったんだ。
そこまで考えてるなんて……なんて人だ。
「じゃあ……」
「まぁ、そういうこったな。今現在アイツ等は、オマエの事を小馬鹿にしてるみたいだが。現実的に見れば凄い奴だったって事を、まずはあの馬鹿3人に認識させろ。……その上で、アイツ等の喜ぶ顔を見て、オマエも、アイツ等の認識を改めろ。そうすりゃあ、オマエ等の関係は修復されて、良い友人関係を結べる可能性も出て来る筈だからな。……少しでも女の子と仲良くしたいと思ってるなら、まずは自分の才能をフルに使って喜ばしてやれよ」
あぁそうかぁ……2人の見る目を変えるだけじゃなくて、友好関係まで構築しようって腹だったんだ。
どこまで深く考えてるのよ?
「そんな事ぐらいで、簡単にアイツ等の俺を見る目が変わるのか?」
「変わるねぇ。確実に変わる。特に合格ラインギリギリのウッチーは、オマエを見る眼が180度変わるだろうな」
「けど、仲居間さん。仲居間さんも知ってるとは思うんだが。アイツ等は、中学の3年間、俺をパシリしてたんだぞ。そんな奴等の為に、そこまでしてやる気には……」
「考えが小さいな」
「えっ?」
「つぅか、そんなクダラナイ過去の蟠りなんて物は捨てちまえよ。そんな過去より、今後、アイツ等と一緒に、人生の喜びを分かち合う事を考えた方がズッと楽しいだろうに。なのにオマエは、その自身の才能で、そのチャンスを得てるって言うのに、それを無駄に放棄する気なのか?そんな小さいな人間じゃ、ホンとクダラネェ人生を歩んじまう羽目になるぞ」
「そうは言ってもなぁ」
「……誰かが許せば、誰かが幸せになり。そんで、その幸せは、廻りまわって自分に返って来るって法則なんだがな。それでも破棄するか?」
言ってる事は合ってるんだけどね。
中学生活の3年間を、ズッと、そんな酷い目に合わされてきたなら早々に割り切れないのも事実だと思うよ。
「すまんが俺は……そんな聖人君主みたいな考えには成れないな」
「そうか。じゃあ、考え方を変換するか」
「変換だって?」
「あぁ、オマエが、そこまでアイツ等を許せないって言うなら、アイツ等3人の受験の成否を握ってるって思えば良いんじゃねぇのか?それなら嗜虐的で楽しいだろ」
「ちょ!!仲居間さん。その考えは、あんまりも非道だろ!!それは明らかに、必至にやってる人間を嘲笑えって事じゃないか!!」
「そうだな。だがそれが、馬鹿と、頭の良い奴の差だ。大体にしてなぁ。過去にパシらされて様が無かろうが、この中学の三年間、勉強を怠らなかった森田が上から目線で、相手を嘲笑って何が悪いんだ?その部分では、オマエは、アイツ等を凌駕しているんだぞ。オマエの胸先三寸で、アイツ等を天国にでも、地獄にでも行かせる事が出来る程にな……だったら、人に嘲笑われる様な勉強の仕方しかしてねぇ方が悪いんじゃねぇの 」
「そうかもしれないけど……」
「……ってかよ、恨むんならキッチリ最後まで恨めよ。なんで、そんなに中途半端な考えなんだオマエは?」
出たね。
崇秀お得意の『自分を悪人に見せかける言い方』
これ言われると、中々抵抗しがたいもんなんだよね。
でも、崇秀の言い方って、相手に誤解を招く様な話し方に聞こえるから。
此処まではズッと黙って聞いてたけど、そろそろフォローしよ。
こんな事を言ってますが、この人は決して悪人じゃないのですよ♪
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
さてさて、情報戦の話はさておき。
皆さんは『パシらされていた人間の見る目を変える』事って可能だと思いますか?
まぁ普通に考えたら『そんなもん簡単に変わるかぁ!!』って思われてるとは思いますし。
こんな風に受験の時期であっても『パシらされてた人間なんて、相手にいい様に使われるだけ』なんて思うかも知れませんがね。
実はそうでもないんですよね(笑)
まぁまぁ、その理由については、後々書いて行こうとは思うんですが。
1つだけヒントを言えば『そこに誠心誠意があるか、ないか』で、その結果は変わって来ると思いますよぉ♪
実際、私の中学時代に、秀才の子と不良の子が、子も森田君と同じ様なシュチュエーションの中で友情が芽生え。
未だに、お互いお付き合いを持ち続けてる子達も居ますからね♪
さてさて、そんな現実がある中。
崇秀の言い分は、流石に悪党の言い方過ぎると思った眞子が、崇秀のフォローをしようとする訳なのですが。
此処でも崇秀の思惑が炸裂してきますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます