1004 受験に足りない部分を補う方法
他人の受験を重視する眞子の行動を、不審に思っていたウッチーパパだったが。
その辺は眞子の実力や、考え方を知り、なんとか納得して貰える事には成ったのだが。
そうなると当然……
***
「ところで向井さん」
「あぁ、はい、なんですか?」
「急に話を戻して悪いんだが。ウチの雪子は、川崎仲野高に受かれそうなものなのか?」
「あぁっと、正直言いますと、今の状況じゃ厳しいですね。中学生活でクラブ活動に精を出しすぎて、少々勉強が疎かになったのが、完全に仇となってる感じですね」
「そうか。その上で家の手伝いまでさせてたんだから。雪子の成績が悪いのは、父親である俺の責任だな」
その意見は微妙かな。
だってさぁ。
事この家の手伝いの件に関しては、自分で選んだ事なんだから、お父さんに責任は無いと思いますよ。
それに手伝いって言うのは、自分に時間の余裕が有ったからやってたんだろうしね。
だから、勉強を疎かにしたのは、自分の責任だと思うんだけどなぁ。
それにね……
「あぁっと、まぁ、そう言ってしまえば、そうなんですが。家のお手伝いをする事によって、学校では学べ無い事を沢山学べていると思いますので、それも1つの宝物だと思いますよ。先程も言いましたけど『学歴』だけが全てじゃ無いですから」
「そうは言うがね。現実は厳しいもんだ。君の様な心掛けが無い雪子では、世間の荒波に押し潰されかねない。なんとか合格させてやれないものだろうか?」
そう言われましてもねぇ。
ウッチーの後押しをする事は、幾らでも出来るんですけど。
結論だけを言ってしまえば、ヤッパリ何処まで行っても『本人の意思』の問題だからなぁ。
自分自身をどこまで追い込んで、どこまで本気に成れるかが勝負ポイント。
それが出来なきゃ、私がどうこう言っても無駄になるだけだしね。
「あぁっと、お父さんのウッチーを合格させて上げたい気持ちも解りますので、私も出来る限りのお手伝いはさせて頂きますが。矢張り、最終的な話は、ウッチーのヤル気次第ですね。そこだけは、本人の心がけ次第なので、私が、どうこうする事は出来ませんから……偉そうな事を目標に掲げてる割りに、不甲斐無くて、すみません」
崇秀なら、この重要なメンタル面ですら簡単に解決してくれそうなんだけど。
今の所、私には、まだその辺を上手く調整する事が出来ないんですよ。
特に受験に関しては、適当な事は出来無いから、全てをバックアップしてあげられてない状況。
すみません。
「あぁ、いやいや。君が謝る様な事じゃないんだ。これはウチの雪子や、家庭環境が招いた結果だからな。……だがね。親としては、どんな物にでも縋りたい気分なんだよ」
「そうですよね。藁にも縋りたい気分ですよね。……あぁ、でしたら、ウッチーに伝えて下さい。もし問題で解らない所が有ったら、恥ずかしがらずに、私じゃなく、必ず担当の先生に聞いて下さいって」
「うん?それが、合格に繋がる道になるのかね?」
「あぁ、はい。此処からは少し厭らしい話になるのですが、合格点に届かない部分を、内申点で補うのも1つの手だと思うんですよ。……先生方も、質問を持って来る生徒を邪険には扱ったりはしませんので、そこは狙い目だと思いますよ」
「なるほどねぇ」
「それにですね。ウッチーは1年からズッとバスケ部で真面目に汗を流してきた実績が有りますし、部活のキャプテンでもあります。だったら、そこの先生方のイメージさえ向上させれば、合格への色々な道筋も見えて来ると思いますよ」
此処は、私が立証済みだから安心な案件。
今の中学に転校してきた時、この手を使って先生に上手く取り入ったしね。
ぶっちゃけ、内申点なんて物は、先生の心1つでどうにでもなるようなもんですし。
「君は……そんな事も常に考えていたのか?」
「あぁ、はい。お恥ずかしい限りの話なんですが。そう言う可能性も有るだけに、少しは考慮して置く必要が有りましたので。……同じ時間を有効に生きる為なら、それなりに卑怯な方法も考えたりします。それにですね、こう言う事をギリギリでやったのでは効果も薄いですから、前以てやって置いただけです」
「じゃあ、君の言い分が正しければ、今更なんじゃないのか?」
「まぁ、今更と言えば、確かに今更なんですが。やらないよりかは幾分マッシですよ。それにやって置いた方が良いと思います」
「それは何故だね?」
「内申点には成らないかも知れないですけど、解らない問題が解決するだけでも儲け物じゃないですか。この内申点の件は、その副産物的に考えて頂けると有り難いですね」
なんだよねぇ。
まぁホントはね。
今さっき言った通り、早くから、こう言うポイントを抑える事が大事ではあるんだけど、こう言う事って、受験間近になってもやらない生徒の方が多いから、今から初めても効果が無い訳じゃない。
矢張り、こう言う生徒はかなり特殊で、受験を控えてても稀だからね。
だから、やって置いて損は無いと思うんですけど。
「本当に凄いな、君は……」
「いえいえ、凄いんじゃなくて。ただ単に、人よりズルイだけですよ」
「仮にそうだとしてもだな。その発想を思い付いて、行動に移すのは難しい。中々出来ないと思うがね」
「いえいえ……ホント私なんて、ただ厚かましいだけの話なんですよ」
メリットが有ると思ったからこそ、即行動に移しただけの話でですね。
その辺については、基本的に、貪欲に行く事しか考えないですからね。
内申点だろうと、なんだろうと貰えるものは、全部丸ごと貰う。
「まぁまぁ、君の評価をするのは、所詮他人だ。……俺は、君を大した子だと判断したんだから、それはそれで良いんじゃないか?」
「そうですかぁ。恐縮です」
「しかしまぁ。なんとも出来た子だな」
ははっ……
まぁまぁ、好感度の事に関しましてはですね。
こう見えても『真上さん流のエセ免許皆伝』なので、こう言う風に誰彼構わず好感度上げるのは、かなり得意な分野なんですよね。
だから本当は、ウッチーのお父さんが思ってる様な良い子じゃなくて、結構、腹が黒くてイヤな奴なんですよ。
「いや、あの、その、そんな私の事なんかよりですね。ウッチーの受験勉強を、家族一丸と成って応援してあげて下さいね。そうすれば、必ず合格は見えて来る筈ですから。……まぁ御両親に、わざわざこんな事を言うのも変な話なんですけどね」
「君って子は……」
……っと言う様な感じの話を。
こうやって場所を提供してくれている各家庭では、締めの言葉として毎回言わせて貰っている。
勿論、理由は簡単。
受験生の精神面って言うのは、支えてくれる家族との絆が大きく影響したりしますからね。
でも、今回のウッチーの家の件の様に、此処まで根掘り葉掘り私の事を聞くのは、かなり特殊な事例なので、普段は、此処まで話し込みはしないけどね。
まぁそれでも、大体、質問される事は、どの家庭も良く似てるのは否めないね。
……なんて、ちょっと真面目な事を思ってたら。
「向井さん。俺、感動したよ」
へっ?
うわっ!!
誰が声を掛けて来たのかと思ったら、森田君、まだ居たんだ……
頭が良いって言うのに、影が薄いから、テッキリ、もぉとっくの昔に帰ったもんだと思ってたよ。
ごめんね。
スッカリ存在を忘れてた。
……って事はだね。
さっき数学のテストをした時の、視線って……ひょっとして森田君だったりする?
だったら尚更ゴメンね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
今回のお話、ご理解頂けたでしょうか?
本当に高校受験を成功させたいのであれば、中学生としての恥も外聞も捨てて『担任の先生の好感度を上げる』って話なんですよ。
ぶっちゃけ、この年代の子って言うのは、どうしても周りの目を気にしちゃうケースが多く『担当の先生に勉強を見て貰う事が恥ずかしい』なんて思い『内申点を稼ぎきれてない生徒が多い』んですよね。
まぁそれだけに、此処が内申点アップとしては狙い目。
試験の点数で合格ラインに乗せれないならば、こう言う裏の点数を稼ぐのが最も有効だと言うお話でしたぁ♪
さてさて、そんな感じの助言をして、ウッチーパパとの会話を終わらせた眞子だったのですが。
影の薄い森田君は、近くに居たのに気付かれないまま、この話を聞いていた様子。
果たして彼は、どんな反応を見せるのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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