1003 異端児
受験生のくせに、他人の受験ばかりを気に掛ける眞子。
それ故にウッチーパパは『そんなので自分の受験は大丈夫なのか』と心配し、眞子にテストをして貰う事に成ったのだが……
***
……15分後。
そんな奇妙な視線は無視して、一気に解答欄を埋める。
「あぁ、はい、じゃあこれで」
「なっ!!もう出来たって言うのか?」
「あぁ、はい。元々自分で作ったものですし。計算自体も、そこまで難しくありませんので。そんなに時間の掛かるものではありませんね」
「ちょっと待ってくれ。その問題に雪子は悪戦苦戦しているんだよな」
「あぁっと、苦戦と言いますか。公式の嵌め方を難しく考え過ぎてるだけなんですよ。事実、そこにさえ解決出来れば、そんなに難しくはなくなると思いますよ」
「そっ、そうか。けど君は、一度も数式を書いていなかった様だが、まさかこれだけ膨大な問題の解答を全部憶えているのか?」
あぅ。
数式を書かない理由かぁ。
これ……結構ドン引かれる確率が高い話だから、あんまり人には言いたくないんだけどなぁ。
「まさか、まさか。そこまで記憶力は良くないですよ」
「じゃあ、どうやって?」
「あの……数式を書くのが面倒なので、頭の中で計算しました」
「ブッ!!」
ほらね。
予想に反する事無く、こう言う反応が返ってくるでしょ。
だから、言うのが嫌だって言ったのに……
まぁ、心の中で言っただけで、口では言って無いですけど……
「まぁまぁ、その、なんですよ。私、昔から『算盤』とか『フラッシュ算』とかをやってたんで、計算をするのが人より少しだけ速いんですよ。それだけですよ、それだけ」
「しかしなぁ。そんな真似が、そう簡単に出来るもんなのか?」
「あぁ、はい。それに関してましては慣れれば結構出来ちゃいますよ。計算なんて、そんなもんですよ」
「そっ、そうか」
『そんなもん』っと言う事にして置いて下さい。
変に化物扱いしないで下さいね。
違った意味でも、散々そう言う扱いを受けてるんで……
「まぁまぁまぁまぁ。取り敢えず、答え合わせして貰って良いですか?」
「あっ、あぁ……」
いやあぁぁ~~~!!ウッチーパパ、なんですか、その目は?
さっきから『化物扱いしないで』って言ってるじゃないですか!!
……っで、そんな中、答え合わせをして貰ったんだけど、当然、点数は100点。
数学は……私が一番得意な教科なんですよ。
「しっ、信じられないな。こんな子が、本当に世の中には存在するもんなんだな」
「あぁ、いやいやいやいや。本当に私なんて、普通ですよ普通。もっと凄い人が、世の中にはゴロゴロと一杯居られますから」
ホント……思った以上に、世間は広いですよ。
これについては、毎度毎度痛感してますから。
この世は、デッカイ奇人変人の集まりですよ。
「きっ、君が、ふっ、普通だって?最近の子は、みんな、こんな事が普通に出来るのか?」
「えぇっと、一部では……あの、その、極一部では……」
「だよな。ウチの雪子だけが出来無いのかと思って焦ったよ」
そりゃあ焦るよね。
みんなが出来る事を、自分の子供だけが出来無いと思ったら、親としては焦るよね。
これは少々失言でした。
すみません。
「あぁまぁ、その、誤解があったんなら謝罪します。すみません」
「あぁいや。謝る必要は無いんだが……あまりにも強烈だなぁ」
「いえ、本当に私なんて、まだまだ雑魚の域ですよ。私の知り合いなんかは、もっと強烈な人達ばかりなんで」
「なっ!!……君より強烈な子が居るのか?」
失礼な!!
人を変人扱いしないで下さいよ!!
私なんかより強烈な人なんて、世の中にはゴロゴロ転がってますよ。
「あぁ、はい。例えばなんですが、私の友人に仲居間って子が居るのですが、この子は私なんかの100倍以上強烈ですよ」
「仲居間?……って、ウチの雪子が、よく楽しそうに話していた。同級生だったって言う、仲居間崇秀って子の事か?」
あっ……お父さんのこの言い様だったら、コソッとウッチーも崇秀の事を狙ってたんだね。
みんな密かに、照準をロックオンしてるんだ。
まぁウチの彼氏は、誰がどう見たって死ぬほど格好良いですからね。
そうやって羨望の眼差しを向ける位なら、許してあげますよ。
「あぁ、多分、その仲居間で間違いないですね」
「確か、あれだろ。その子は、小学生の頃からお金を稼いだり。義務教育を放棄して、楽器だけを持って世界各国を廻ってる様な子だよな」
「あぁ、いえ。それは、かなり古い情報ですね。今の仲居間は、その程度の事じゃ収まりませんよ」
「それ以外にも、なにかをしてるのか?」
「はぁ、まぁ、なんと言いますか。一応、お話はしますが、変に驚かないで下さいね」
「驚く?……そんなに驚く様な話なのか?」
「あぁはい。今、その噂に上がった仲居間なんですがね。彼は、さっきお父さんが言われた楽器の腕前は、世界中が注目する様な腕前になってますし。義務教育を放棄したのではなく。今現在では、アメリカの大学に籍を置いています。……それでですね。稼ぐの件なんですが。GUILDって総合サイトの長で、今や年収数100億を余裕で越えてますね。全世界で一番動向が注目されてる人物の1人なんですよ」
「ブッ!!」
そりゃあ噴くわね。
中学生のクセに、あの男はナンデモカンデモヤリスギなんですよ。
モノの限度や、限界ってモノを全く持って知りませんからね。
まぁ、私としては、そこも良いんですけどね♪
「まぁ、あの、その、なんと言いますか。そう言う訳が有ってですね。彼と比べたら、私なんて、一般人に毛が生えた程度のチッポケな存在なんですよ」
「比べる相手が……それに、その子は常識外れもいい所だな」
ですね。
それに関しては、激しく同意します。
いや……誰も彼もが、激しく同意すると思います。
「そうですね。……ですが、幾ら桁外れとは言え。彼も、私達と同じ普通の人間です。だからですね。出来れば私も、少しでも彼に追い付いてみたいと思ってるんですよ」
「そうか。……だからか」
「なにがですか?」
「いやな。君が中学生らしからぬ、その大人びた発言をする理由が解ったんだよ」
「はい?なんですか、それ?」
「君は、ウチの雪子とは見てる世界が違うから、今までの様な発言が平気で出てた訳だな」
「いえいえ。見てる世界が違うんじゃなくてですね。先人の頑張りを、少しだけでも見習おうって話なだけなんですよ」
「そうか。……しかしまぁ、それ程までに差が有っても諦めないんだな」
「当然ですよ。報われない努力なんてないですからね。悪い事でもない限り、何事もやって置いて損は無いですよ」
……って事ですね。
でも、言ってる事は生意気ですね。
すみません。
「ふむ……なんとも出来た娘さんだな。君のご両親も、さぞかし自慢の娘さんなんだろうな」
「あぁっと、両親は、去年、交通事故で亡くして居ませんよ」
「えっ?……あぁ、すまない。不用意な言葉で、嫌な事を思い出させてしまったな」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私の両親は、ずっと心の中に息づいてますし。それになにより、その不幸な事故を私が思い出さない様に色々な方が親切にして下さってます。だから私は、自分ほど幸せな人間は居ないと思ってますので」
ホント……幸せですよ。
だから、みんなにも幸せお裾分けです。
「はぁ~~~、どこまでも凄い子だな。なんとも君には関心させられる事ばかりだな」
「ははっ……困りましたね。そんな大層な人間じゃないんですけどね」
「なにも困る事なんかないだろ。君は、凄く頑張ってるんだから、素直に胸を張って良いんじゃないか」
「そうですかね?……あぁ、じゃあ、ありがとうございます」
なにが、どうなって、こう言う話になったのかは良く解らないけど、なんか解って貰えたみたいだね。
ウッチーのお父さんって、ホント理解力があるよね。
普通、子供の戯言なんか、大人の人は聞く耳持たないのが基本だもんね。
ウッチーパパやるぅ~~♪
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
勉強って出来る様になればなるほど、実は変人扱いされるんですね(笑)
何故なら、回答に行き付くまでもスピードが速いからこそ、普通の人から見れば「なに、この化け物」って感じに見られちゃうからなんですよ。
ほんで、なんで、そんなに解答に行き付くまでのスピードが速くなるかと言いますと、各教科に対する「独自で考えた、解答に行き付く手法」を持っているからこそ早く解答に行き付く事が出来たりするんですよ。
そぉ……本来は【此処を考える事こそが勉強の本質】なんですよ。
まぁ横着して、誰かの真似をしたり、楽する事ばかり考えていたのでは、此処に至る事はないんですが、勉強出来る人と言うのは、勉強出来る人なりの努力があるからこそ、ちゃんとした理由があったりするんですよね(笑)
さてさて、そんな中。
ウッチーパパには、ある程度、眞子が勉強出来る理由を納得して貰えた様なのですが。
そんな眞子を見て、ウッチーパパは、なにを思うのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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