1001 受験に向かう親子の絆

 受験に向かう少人数制での勉強が終わった後。

勉強の場所を提供してくれたウッチーとの個人面談が始まるのだが。


彼女は唯一の『C判定』故に……


***


「ハァ~~~もぉ、ヤバイなぁ。ヤバイヤバイ」

「うん?なにが?」

「『なにが?』って……成績。私だけ、あの2人から完全に取り残されてる感じなんだよね。こんなんで大丈夫なのかなぁ?」

「だね。確かに、今のままじゃあ、かなりマズイ状態だね」

「えっ?……あぁ、やっぱり、ダメなんだ」


現状の成績じゃあ、確実な合格を口にするのは難しだろうね。

包み隠さず、事実だけの話をすれば、今回の高校受験を、今のままの実力で受けちゃうと合格率はフィフティーフィフティって感じに成っちゃ訳だから、かなり高い確率でギャンブルに成る未来しか見えてこない。


でも、だからと言って、1人だけ志望校を受けられないのも可哀想だしなぁ。


此処は私が、なんとかしなきゃね。



「うん、正直、今のままじゃキツイかなぁ。……でもね。ウッチーに、本気でヤル気が有るんだったら、合格させる方法はなくも無いよ」

「えっ?それって……」

「そぉそぉ、今からだって、やり方次第では、あの2人の成績を抜く事だって可能だよ。但し、普通のやり方じゃないから、一応、ご両親の協力も必要になってくるけどね」

「お父さんと、お母さんの協力……」


まぁ……ウッチーは諸事情があるから、このやり方は余りお薦めじゃないんだけどね。

ちょっと徹底しないとマズイ状態だから、そうも言ってられない。


だから、その諸事情も含めて、その辺を覚悟して貰う必要がある。


勿論、強制はしない。

けど、本気でマッキーと、宮ちゃんと一緒に川崎仲野高校に入りたいなら、やるだけの価値は有ると思うよ。



「うん。実は、これなんだけどね」


そう言いながら、私は机の上に100枚近いプリントの束を置いた。



「こっ、これって……まさか……」

「そぉ。ウッチーには、今日から、毎日の勉強以外にも、この川崎仲野高校受験専用の模擬テストをして貰うの。5教科20日分で100枚を、今度の期末テストまでに、ご両親の監視の下、全部終わらせて貰うって話」

「でも、これって……向井さんが……」

「そぉだよ。今日やった小テストの最終版。川崎仲野の出題形式や傾向を網羅してあるから。多分、これで合格点にさえ到達出来れば90%位の確率で合格すると思うよ。……但し、自分の時間なんて1分も無くなるし。一日でもサボったら、私は、2度とウッチーには勉強を教えない。その覚悟が有るなら受け取って」


現実は、それほど厳しいんだよね。

なんせウッチー以外の他の二人は、1年生の時から塾に通ってるから、問題の解らない所があっても塾で、それらの補完が比較的しやすいんだけど。

この3人の中でウッチーだけが唯一進学塾に通ってないし、実家での店の手伝いなんかをしてるから、他の二人以上に時間が無い。


でも、今の時点の成績から川崎仲野に合格する為には、その辺の家庭の事情を全てカットしないと合格には至らないと思われる。


単独勉強で合格を目指すなら、そこまで徹底しなきゃならない。

その上で、ご両親のご協力が絶対に必要不可欠になってくるって話。



「えぇっと……」

「なに?枚数にビビッちゃたの?……でも、どの道この課題は、受験の最終段階の12月には、他の二人にも渡すつもりだったから、やらなきゃ成らないのは、なにも変わらないよ。ただウッチーの場合は、他の2人と比べて成績が悪いから、期日を早めただけの話なんだけどね」

「でっ、でもさぁ」

「今の時点で『でも』は無しだよ。『やるか』『やらないか』の二択しかないの。ウッチーの家庭の事情は解るけど。そこを割り切って、自分の為だけに前に進めるかが最重要。『そこまでしてでも川崎仲野に行きたいか?』って、私は聞いてるんだよ」


家の手伝いは、ウッチーにとっては本当に大切な事だろうからキツイ選択だろうなぁ……

でも、やる時にやらないと必ず後で後悔するだろうし、合格出来なかった事を親の責任にしてしまう可能性すらある。


だから、どんなに葛藤があろうと、此処は自分で決断すべき事だ。



「雪子。店の心配はいらないから、今すぐ、そのテストに取り掛からして貰え」

「えっ?でも、お父さん……」


パイプを吹かしてカウンターに立っていたウッチーのお父さんの耳にも、今の話が入ってしまったらしい。

それで、聞いてしまった以上、親としては居ても立っても居られなくなって、話に入って来たみたいだね。


うんうん、ヤッパ良いお父さんだね♪



「良いから。なにも言わずに、さっさと、お母さんと、そのテストを始めろ」

「良いのお父さん?でも、店の手伝いが……」

「子供が余計な心配なんてしなくても良いから、早くやって来い。オマエが居なくても、別に店は潰れたりはしないからな。さっさと行け」

「うっ、うん!!お父さん、ありがとう」

「おぅ。その代わり、絶対に川崎仲野に受かる様にシッカリと頑張るんだぞ」

「うっ、うん♪任せて!!絶対に絶対だよ」


ウッチーパパがそう言うと、ウッチーは嬉しそうに今日の分の5教科のプリントを持って、自室のある二階に向かって行った。


良いね、良いね、こう言うの。

家族が上手く行ってる証拠だもんね。


ホント、良いお父さんだ。


……そう思いながら、ウッチーを見送ってると、ウッチーのお父さんは、机に残っているプリントを数枚手に取り、何故かプリントを見入っている。


それでその後、何故か、私の顔をジッとみてる。


なにかな?


比較的、的確な問題を作ったから、特におかしな問題は無いと思うんだけどなぁ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


受験とは家族一丸になって向かって行くものであり、受験生1人が頑張ってる訳ではない。

しかもその際に『落ちる』とか『滑る』なんて、どうでもいい様なクダラナイ言葉に気を遣うのが家族一丸に成っているのではなく。

そんな言葉すらも気に成らないぐらいな状況を作って行くのが『家族が一丸と成って受験に向かっている』って言うんですね。


此処を理解していない家族が多いので、今回のお話を書かせて頂きました(笑)


さてさて、そんな中。

ウッチーは家族の協力の元、意気揚々と受験勉強に向かって行ったのですが。

どうやらウッチーパパは、眞子に何か違和感を感じている様子。


次回は、その違和感がなんなのか?を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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