999 知識の有用性
五教科十五分の小テストを終えた後。
個人面談の様に成りながらも、まずは山西君にテストを返した。
受験は勉強するだけでなく、メンタルのケアも大切ですからね。
***
「なるほどなぁ。受験にはテスト範囲ってもんが無いから、自ずと暗記物の効果が出だすのが遅く成ってるって事か」
「そう言う事だね。範囲が無いだけに、知ってる知らないが明確な結果として出ちゃう。でも、高校受験って言うのは、そう言った問題の当たり外れが大きいから。暗記系の場合は、出来る限り憶えて置いた方が良いってだけの話なんだよね」
「そっかぁ。なぁ、向井。……また今回みたいに、ちゃんと暗記の効果出るかなぁ?」
「うん、報われない努力なんて、絶対にないよ。例え、受験に失敗しても、その知識だけは一生残るからね。知識の成長には成ってるもん」
そうなんですよね。
実際は、高校の受験なんて大した意味は無いんですよね。
要は、その際に一般的に有用な知識さえ得れれば『学歴』なんて余り意味を持たない。
結果論だけ言えば、頭が良くても、賢くなきゃ、ただの頭デッカチ。
最終学歴が日本最高峰の東大だとしても『ホームレス』になる人は、ホームレスになっちゃうもんだからね。
必要なのは『知識』と、それを生かす『賢明さ』それに『行動力』
この3つが有れば、学歴なんてものは関係ない。
例えば、何処かの誰かさんみたいにね。
「えっ?いや、ちょっと待ってくれ、向井。……受験に失敗したら、流石に意味なくね?それじゃあ、なんも報われてねぇ様な気がするんだけど」
まぁけど、一般的には、そう言う意見になっちゃうんだろうね。
でも、そう言う『目の前いぶら下がってるニンジン』だけを見てる様な見解で勉強をしてたんじゃダメなんだよね。
学歴なんて、ただのブランド品と同じ効果しかないんだから、そこだけを集中してみてちゃいけない。
……にしても、なんか知らないけど、山西君との個人懇談みたいになってきたね。
「全然。……大体にして、知識って言うのは自分を生かす為の宝だよ。だから、根本的な部分で受験の合否なんて問題じゃないの。その知識を、どう自分の為に生かすかが最重要ポイント。役に立たない知識なんて、なに1つないからね」
「そうかぁ?今やってる数学の数式や、理科の実験。古文の解読なんて、世の中に出てから、なんの役にも立たなくね?」
また一般的な事を言いますね。
まぁ私も昔そう思ってたから、あまり人の事を言えた義理じゃないんだけど、今はそう感じないよ。
だってさぁ、知識の捉え方のよっちゃあ、全部が全部、凄く役に立つんだけどなぁ。
そこ、解んないかなぁ?
「うん?どうして?どうして役に立たないって思ったの?」
「だってよぉ。こんな勉強、社会に出て、なんの役に立つんだよ?専門職にでも就かない限り、役に立つってイメージは皆無だけどなぁ」
「そうかなぁ?でもさぁ。今、山西君が自分で言った通り、それらは、自分の選択肢を増やす為の物なんじゃないかな?得意に成り得るか、成り得ないかの問題は有るにしても、学生って言うのは、そう言うのを繰り返しやって行く事により、本当に自分に合った物を探しだす作業をしてる訳なんだからさ。知ってて損は無いんじゃない?みんな同じ勉強をしてるんだしさ」
「そうかぁ?俺には、やっぱイラナイ様な気がするんだけどなぁ」
そうですかぁ。
この説明じゃあ、知識の重要性が、まだちょっと解り難いかぁ。
実は、勉強には、ある1つの重大な事が有るんだけどなぁ。
此処が解れば、知識の有用性が明確に見えて来るんだけどなぁ。
じゃあ、もっと簡単な説明にしてみよっか。
「そぉ?じゃあ仮にね。『プレパラート』ってあるじゃない。山西君は理科が得意だから、これは、当然、なにか知ってるよね?」
「『プレパラート』?……あぁ、勿論知ってるなぁ。つぅか、んなもん、誰だって知ってるよな」
「じゃあさぁ。もし仮にね。誰かが、その一般的な『プレパラート』を知らなかったら、どう思う?」
「『スゲエ馬鹿だな』って思うな。んな一般的な事も知らない奴なんて、世の中に居るのかって感じだな」
「でしょ。……だったら、その時点で、その知識は一般的なものになる訳だから。ほら、社会に出て役に立ってるじゃない。要するに、一般的な知識って言うのを持ってないと馬鹿にされる。だから最低限度の知識を得なきゃいけない。知ってて当たり前。知らないと馬鹿。それだけの差が有るって事だね。それが知識の価値の1部分」
「それだけか?たった、それだけの事の為に勉強しなきゃイケナイのか?」
基本のラインだけで言えば、確かに、それだけと言えば、それだけだね。
でも、本質は、全然違う。
もっと深い部分で、知識の有用性ってのは生きて来るもんなんだよね。
「うん、そうだね。それだけの為に勉強してるんだよ」
「だったら、ヤッパ、知識なんて大した意味ねぇじゃんか」
「そうかなぁ?でも、誰かが『あの顕微鏡に使う薄いガラスなんだっけ?』って聞かれたら、知ってれば会話にはなるよね」
「はぁ?なんの話だ?」
「知識の話だけど」
「そうか。じゃあ、会話にはなるなぁ」
「でしょ。だったら、この知識を知っていれば、色々な人と知り合える可能性が出て来るけど。全く知らなくて、その知識に興味がなければ、その人とは、絶対に解り合えない。故に『知識の量=人と知り合える可能性』って考えてみなよ。これは将来大きいよ」
そして、この理論を実践して莫大な利益やコネを得てるのが、私の彼氏。
完璧です!!
「はぁ~~~、そっか。なるほどなぁ。知識と人脈は表裏一体って事か。面白い事を考えるなぁ。それにまぁ、向井は深いなぁ。向井って、そこまで考えて、いつも勉強してるのか?」
「うん、まぁ、一応そうだね。……って言うかね。私の知り合いが、そうやって色々な事業に成功したり、人脈を確保したりしてるから、知識の重要性って言うのは高いと感じるのかもね」
「因みに、向井の知り合いの、そいつって、どんな奴なんだ?……って、まさか!!」
「そぉ、崇秀だよ。皆さんのクラスメイトだった、ご存知、仲居間崇秀。中学生のクセに、現時点で、年間数100億のお金を稼いでる男の事」
「「「「「「「がぁ!!」」」」」」
ほら来た。
でも、その程度じゃ認識が足りないよ。
「がぁ!!仲居間さん、いつの間に、そんな高見にまで行っちまったんだよ?」
「うぅん。そんなの氷山の一角に過ぎないよ。崇秀は、そんなに甘い男じゃないよ」
「……って事はなにか?まだ、その金以上に稼いでる可能性が有るって言うのか?」
「あるだろうね。でも重要なのは、そこじゃないの」
「なにが重要なんだ?金を稼ぐ為に知識を得てるんだから、金以上に重要な事なんか有るのか?」
「有るよ。大体にしてね。人が一人頑張った所で、稼げるお金なんて、たかが知れてるの。それだけの大きな金額を稼ぐには、それ相応の優秀なスタッフが必要。それが、さっき私が言った、知識の有用性に関わる訳」
「それって、まさか……」
「そぉ。崇秀はね。私なんかとは比べ物にならない程の膨大な知識を持ってるから、それに伴って知り合う人間の数も尋常じゃない。今、彼の持つコネは、世界を揺るがす程のハンパじゃない人脈を持ってるよ。これこそが立証されてる知識の重大さって訳」
「ブッ!!」
まぁ……結論はそこですね。
まぁ、それにしてもあれだね。
毎度毎度の事だけど、崇秀の名前を出すだけで全てが納得して貰える。
いつもながら、ホント便利な男ですよ。
私の彼氏なんですけどね。
「ねっ……凄いリアルでしょ」
「まっ……まぁな」
「……って言う事だから。報われない努力なんて、考え様によっちゃなにもないって事だね。努力する事は大事だよ」
「まっ、まぁな」
「それに、さっきも言ったけどね。所詮テストなんて、得意な問題が『出る』か『出ない』かだけの運の差でしかないんだよ。だから、受ける受験生のレベルが同じなら、少しでも、その得意を増やせば、飛躍的に合格率が上がるって話にも繋がるんだよね。これぞ一挙両得でしょ。……理解出来た?」
解ったかな?
要するに『将来の為に勉強しなさい』って事ですよ。
「あぁ、なるほどなぁ。……じゃあ、四の五の文句を言わず、頑張るわ」
「うん、頑張って、頑張って♪……じゃあ、他の人もテストを返していきますね」
「「「「「「は~い」」」」」」
そう言った後。
一人一人に採点を終えたテストを手渡しながら。山西君みたいにジックリと個人面談みたいな事をする。
勿論、此処で、各々の弱点や、成績の伸ばし方を説明して行く。
因みにですね。
判定:C内田雪子……第一志望:公立川崎仲野高校(偏差値49)
判定:B牧田霧絵……第一志望:公立川崎仲野高校(偏差値49)
判定:A宮内智奈……第一志望:公立川崎仲野高校(偏差値49)
判定:B坂田三太……第一志望:私立中州口高等学校(偏差値40)
判定:A山西高貴……第一志望:公立多言高等学校(偏差値36)
判定:B阿藤鳴子……第一志望:公立逗子商業高校(偏差値45)
判定:B若林緑子……第一志望:私立バステスト女子学園(偏差値43)
判定:A森田和夫……第一志望:私立九頭竜高校(偏差値56)
……っと言った風に、少し厳し目の判定にしてるんだけど。
それでもA判定が3人も出ると言う、なんとも喜ばしい事が起きた。
でも、その反面、ウッチーの成績がC判定とは、かなり厳しいねぇ。
ウッチーの志望校である川崎仲野は偏差値49だから、そんなに偏差値が高いところじゃないんだけどなぁ。
でも、現実だけを見れば、判定がCって事は、合格率55~60%位。
このままじゃあ、本当に、かなり厳しい状況だね。
親切に勉強場所を提供して貰ってるだけに、なんか複雑な心境だなぁ。
それに正直、この時期でのC判定には、ちょっと困ったもんだね。
でも、取り敢えずは、今日の勉強は終わりだから、まずは、この場を締めないとね。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
倉津君だった頃は『知識の重要性』を全く理解しておらず。
『学校の勉強なんて、将来、何の役に立つんだよ!!』なんて言ってたのですが……意外と役に立つものなんですよ(笑)
まぁ、この辺の事を考えながら勉強してる人は、かなり希少な存在だとは思うのですが。
此処を考慮して勉強をして置かないと、知識があっても、ただの頭デッカチに成っちゃいますし。
なにより、知識を、そんな風に他人とのコミュニケーションツールだと考えていないと宝の持ち腐れに成っちゃいますからね。
要は勉強するにしても、知識を得るのと同時に、それをどう生かすかの方法をバランス良く考えてないとダメって話ですね。
さてさて、そんな風な事を教えながらも。
今回の最後には、全員のテストを個人面談しながら返して行った訳なのですが。
この場所を提供してくれたウッチーだけが『C判定』と言う結果に終わった事を、なにやら眞子は懸念している様子。
では、この状況を、どう覆して行くのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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