[第一章:日常。遊戯の復活。]その4
「…なんじゃ、リメ。儂の方は物持って向かってるところじゃが」
薄暗い路地を、ノイエは歩いていた。その背のアームには、風呂敷のようなものが計四つぶら下げられており、彼女が進むたびにカチャカチャと音を立てている。
『ノイエ。…想定外だったのだけど、広めるのは一筋縄じゃ行かなそうだわ。早いとこ二人引き込もうと持ったんだけど』
「ほう?初ターゲットがどんな連中だったのかは知らんが…」
ノイエは、持っている杖に向かって話しかける。
どうやら、それには通信機能があるらしく、彼女の言葉に応え、リメ側から音声が返ってくる。
『…いくら誘っても、なかなかなびいてくれないのよ。こっちはこんなに熱心に誘ってるのに』
「…どうせお主、具体性に欠ける強調表現ばかり使って、ごり押し宣伝しただけじゃろ」
状況を察したのか、ノイエは呆れ気味の表情で言葉を返す。
『まっさかぁ。私は自分の熱意を伝えようと頑張っただけよ。そんな力技で誘ったわけが………』
途中から、沈黙が流れた。
「やったようじゃな。…まぁ、そうなるとは予想しておったのじゃが」
ため息をつきながら、ノイエは言う。
(やる気はあるんじゃが…)
彼女はそう思いつつ、
「台本通りにしておくのじゃ。絶対に良いとは言わんが、お主のよりましじゃろ」
『私だって改善してるのよ?最初の最初は協力してしか言わなかったけど、すぐに娯楽があるっていうようにしたりとか』
「具体性の駆ける説明でとまっていては興味など引けんじゃろうが。もっと改善が必要じゃよ。…台本通りにしておけとは言ったが、常に用意できるわけじゃないじゃ。おぬし自身の説明力をさらに上げることは必要じゃよ」
あきれた様子でノイエは言い、吐息。
悩ましそうに額に指をあて、首を振る。
『…そうね。ノイエの言うとおりだわ。流石ね」
「別に、これぐらい…」
ノイエはどこか表情を陰らせながら言う。
「とにかく、とりあえずは台本通りじゃよ」
『分かってるわ。…じゃぁ、合流するわね』
「ああ。予定通り、授業の時を狙う」
『ええ。そして、台本通り、誘いをかけてからやるわ。それに、嫌な人には領域内で鑑賞してもらうことにする。やるのを強制はしない。…次から取り入れよっと』
そこでリメとノイエは合流する。
そして、彼女はリメに一つ、手渡したのちに、再び歩き出す。
ある場所へと向かって。
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