第42話 懲りない男たち

就寝。


とは言いつつも、なかなか眠ることができなかった。

私の希望で、私が寝る場所は一番端っこになったのだが…視線を向けられているのがとてもわかるのである。

背中にかかる視線がとても痛い。

とてもじゃないけど気にせず眠るという行為はできない。

だから私は起き上がって言った。


「あの、眠れないんであんまり私のことを見ないでもらえますか。」


ちょっと怒って言った。

するとそれが意外だったようで皆がキョトンとした顔をしている。

なんでそんな顔をするんだよ。

私が何も言わない性格だとでも思っていたのか。

言う時は言う性格なのが私という人間である。

誰の返事を待つことなく私は皆に背中を向いて寝た。


数分ほど視線は感じたが、私はいつの間にか寝ていた。


次の日。


誰よりも早く起きた。

いつもの神社の仕事の癖が出ているのだろう。

私は静かに布団を片付けた。


「おはようございます。早いですね。」


そう声を掛けてきたのは南雲さんだった。

彼は私の隣に寝ていたはずである。

起こしてしまったのだろうか。

静かに声を返した。


「おはようございます。すみません、起こしましたか。」

「いいえ。起きていました。貴女の寝顔を見ていました。」

「……。」


見るなって言ったはずなのに見ていたんかい!

寝ていたから良いものの!

どんだけ眠りづらかったと思ってるんだか。

私は静かに大広間に付いているトイレに向かい、寝巻きから外着へと着替えた。


「まだ皆さん寝てますから静かにしていましょう。」


南雲さんの言葉は無視して、これからすべきことを言った。

静かに彼はうなづいた。


1時間くらいした後。

皆が目を覚ましてきた。


「おはようございますって早いですね、紅葉さん。」

「おはよう、西谷くん。残念だけど、南雲さんの方が早かったよ。」


そう言うとわかりやすく彼は不機嫌そうな顔をした。

こう見ると、まだまだ子供なところがあるなと思う。

だけどそれも少し可愛らしいか、と思うようになった。


「そんな顔しないでよ。」


そう言って笑顔を見せた。

するとみるみるうちに西谷くんの頬は赤く染まり、まるでりんごみたいだった。

うん、やっぱり可愛いところがあるな。

こう思うようになってきた私もなんだか変化があったのかな。

そんなことをふと思った。


「今日は観光するんでしたっけ。」


東野くんが言う。


「はい。私がプランを立てました。」


南雲さんがメガネを指で上げる。

その話は本当のようだ。

聞いたことなかったのだけど。南雲さんが計画立ててたの。


「今日は楽しみましょう。皆で。」


まるで私を独占しないようにとでも言うかのように。

そんな宣言を南雲さんが代表して言った。



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