第38話 余計なフラグ
おそらくだとは思うのだけど、ゲームは終盤に差し掛かっているのだと思う。
怨鬼神を祓ってからの話が第二部とかそんな話だったのだろう。
きっと主人公が本当にいるならもっと凝った話になってるに違いないが、生憎私は主人公ではない。
だから話がおかしなことになっているのだと思う。
ハーレムエンドなんてこのゲームにはなかったはずだし。クリアしてないけど。
そもそもな話、私この世界の人間じゃないしね。
だから変なことがきっと重なっているんだ。
そんなことを頭の中でグルグルと考えながら思った。
これからのことを考えると、糖分を摂取したくなる。
京子さんに頼んで飴を貰って舐めながら考える。
自分がこれからどうしたいのか。
1人の夫と住むのか。
それとも、5人の夫と住むのか。
悩んでは自室でゴロゴロと過ごす日々。
答えが出ないまま仕事をしても上の空なので、しばらく巫女の仕事はよっぽどでない限りお休みをさせて貰っていた。
(また伊吹童子に攫わられるのは嫌だ。でも誰かと一緒に必ずならなきゃならないっていうのもな…)
どれかを必ず選択しなければならないこの世界。
現実と同様に厳しいものがある。
どうすれば良いのか、それが正解なのかも、誰にも分からない。
(困ったな…)
飴を舐めながら私はゴロゴロと畳の上で考え込んでいた。
答えは相変わらず出ることはなかった。
数日後。
「そろそろ答えを決めませんと。」
京子さんにそう催促されてしまった。
のんびりし過ぎたみたいだ。
ちょっと申し訳なくなったが、私の立場も考えて欲しい。
「京子さん。こればかりは慎重に決めたいです。一度きりのことですもの。」
「気持ちはわかりますが…。」
「お気持ちはわかります。でも、私の立場も考えて欲しいんです。答えは必ず出しますから。」
「わかりました。一応、これを渡しておきます。役に立てれば良いのですが。」
そう言って渡されたのは6枚の宿泊券。
ちょっと待って欲しい。
今度は5人と旅行するの!?しかも北山くんも一緒に!?
頭痛が酷くなった気がした。
宿泊券を渡された翌日。
私は唸っていた。
これを守護者全員に渡すべきなのかどうか、ということである。
現実的に考えれば渡すべきではないと思う。
彼らは容姿が整い過ぎている。つまり目立つ。それは私が一番嫌とすることだ。
それだけではない。
私以外、全員が男だ。貞操の危機だってあるかもしれない。
だって全員、私のことが好きなんだもん。怖すぎる。
彼らを信用していないわけではないけど、男の本能というものがあるだろう。
それに勝てるかどうかという話だ。
だから悩んでいた。ずっと悩んでいた。
でも私もすっかり忘れていたのだ。このゲームの基本設定を。
5人が屋敷にやってきたのである。
「是非、旅行一緒に行きましょう!」
神様ーーー!!!
余計なことを言いましたねーーー!!!
すっかり抜け落ちていた。八百万の神々の設定を。
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