第37話 運命
「守護者の誰かと結婚しなければならない…ですか?」
伊吹童子の騒動があってから数日後、私は京子さんに呼び出されてそう言われた。
今後、このようなことがないように身を固めるべきだと言うのだ。
巫女が身を固めれば、伊吹童子の時のようなことはもう起こらないと京子さんは言う。
確かに京子さんの言うこともわかる。
でも、私にだって選択肢が欲しい。1人でも良いという選択肢が。
「これは貴女の身を守る為でもあるんです。幸い、紅葉さんは皆に好かれている。問題はないかと思うのですが。」
「いや…問題というか何というか…。」
「もし1人に絞りきれないというのなら、一妻多夫性にすれば良いんです。」
「…は?」
「妻は1人。夫は5人ということです。申し訳ないですが翔吾も含めます。」
「え…えぇ…。」
何その逆ハーレム。
まさに主人公ちゃんが望んだ展開になってきているではないか。
なんで私がそんな思いをしなくちゃならないんだ。意味が分からない。
「私は5人の夫の方を勧めます。その方が色々と都合が良いですから。」
「で、でも。」
「よく考えてみてください。結末を決めるのはいつだって貴女の役割です。」
いいや、結末を決めるのは主人公の役割だと思います。私ではない。
そんなことを叫びたかったが、グッと堪えた。
大人として叫ぶのは情けないと思ったのだ。
仮に5人の夫を持つことになるとして、彼らはどう思うのだろうか。
やっぱり1人の方がいいんじゃないだろうか。
その日、京子さんに言われたことをずっと頭の中でグルグルと考えていた。
翌日。
「もう伊吹童子に引っ張られたりしていませんよね?」
「はい。お陰様で。」
南雲さんが代表して私の部屋まで来ていた。
ずっと思っていたことがある。
私は南雲さんと関わることが多い為、南雲ルートに入っているのではないかということだ。
つまり、夫となる人はこの人の方が色々と良いのかもしれない。
そうも考えてみたが他の人も私のことが好きだということを忘れてはいけない。
5人夫かぁ。元の世界ではあり得ない発想だな。
そんな他人事のように思っていると、南雲さんが話しかけてきた。
「夫を選ぶなら、1人なら私にして欲しいです。」
そんな無茶振りをいきなり言われた。
まだこちとら言われて一日経ったばかりなのである。
そのようなことを言うのは勘弁して欲しい。
考えなんてまとまっていないのだから。
「もちろん、決めるのは紅葉さんですから無理強いはしません。」
いや、言ってる時点で無理強いに近いんだよなぁ…。
とりあえず苦笑いで返しておいた。
これ以上その話題は出すなという意味を込めて。
その意味を汲み取ってくれたらしく、南雲さんはそれ以上その話題について話してこなかった。
私は南雲さんが去った後もまたグルグルと考え始めてしまった。
これからどうしたら良いんだろう。
自室で大の字で私は寝転んでいた。
幸いにも、京子さんから神社の仕事はお休みを頂いていた。
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