第35話 頑張る男達②
「屋敷に篭っているので、守護者の人たちと会わなくてもいいですか?」
私は連日の告白ムーブに参っていた。
静かに普通に暮らしたい。私はそれだけなのに。
京子さんも神々から聞いてそのことは知っていたらしい。
しかし。
「気持ちはわかりますがいけません。それだけ今、危険な状態なのです。」
そう京子さんに言われてしまった。
私は仕方なく、京子さんの指示に従うことにした。
今日は守護者の中でもまだアピールがマシな方の南雲さんが担当だ。
阿南くんと対決みたいなことになってしまったけど、あれから落ち着いた。
2人から謝罪もされて心から良かったと思う。
あれでマシな方なんだからこれからどうなることやら…。
冷や汗が流れた。
「おはようございます。今日は天気が悪いですね。」
にこやかな表情で南雲さんは私に挨拶してきた。
私は思わず苦笑いで、
「おはようございます…。」
と囁くような声で言ってしまった。
これから長い時間の間、彼と共に過ごさなくてはならないことを考えると、頭痛がする。
決して悪い人じゃない。
むしろいい人だと私は思っている。私のことを慰めてくれたこともあったし。
けれど、それとこれとは別の話だ。
「どうしました?元気がないように見えますが…。」
「いいえ。なんでもありません。天気が悪いなら神社の中の拭き掃除に専念したいと思います。」
「お手伝いします。」
「ありがとうございます。」
そうして午前中はとにかく天気が回復するまで神社の拭き掃除に専念した。
私が集中する性格なのを知っているからか、彼はあまり私に話かけて来なかった。
それは今の状況下ではとても有難いことだった。
「天気が回復してきましたね。」
「そうですね。」
午後。
昼食を摂ってから境内の掃除を始めることにした。
天気は今朝と違って快晴。雲一つない空だ。
ゲームの世界だからなのか、それともただ季節がまだ変わっていないだけなのか、そのどちらかは分からないが未だに秋である。
落ち葉は雨のように降り注ぎ、枯れ葉を幾つも散らして地面を色とりどりにしている。
その落ち葉を箒で集めて捨てるのが主な作業。
今朝まで雨が少し降っていたので、地面が濡れている。
乾いた状態の方が掃除しやすいんだけどなぁと思いながらも私は、掃除を続けていた。
夕方。
南雲さんが帰る時間になった。
「くれぐれも気をつけてくださいね。」
「はい。ありがとうございました。」
そう言われた時だった。
南雲さんの顔がぐにゃり潰れて、私が意識を突然飛ばしてしまったのは。
彼の叫び声も届くことはなかった。
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