第33話 フラグ再び

京子さんに今朝見た夢の話をした。

すると顔色を変えて私の両方を掴んで気迫迫る顔でこう言った。


「伊吹童子があなたを選んだということは、貴女は人ではなくなってしまいます。」


何ですか、その話。てっきり追い出されるのかと思っていたのにその話はナシですか?

聞いたことないんだけど。

ゲームでそんな話あったかな。隠しルートだったりする?


「えっと、理解が追いつかないんですが…。」

「神の嫁になるということは、すなわち死ぬということなんです。」


バッドエンドフラグまたまたきたー!!!

勘弁してくれないかな。

怨鬼神を祓ったことで色々ともう終わったものだと思っていたのに、今度は私が死ぬの?

どういうストーリー?

もしかしてこのゲームの第二部が始まっていたりします?


「早急に守護者に連絡を取ってください。しばらく彼らから離れてはなりません。」


そう言われてしまった。

あんまり会いたくないんだけどな…。

だって全員、私のこと好きなんでしょう?

主人公ちゃんが望んだ状況に今私がなっている。

変われるものなら変わってあげたい。

バッドエンドフラグが常に隣にいるけれど。

とりあえず私は、身支度を整えてから守護者のリーダーである南雲さんに家の電話で連絡を取った。

すると「今すぐ行きます」と慌てた様子で返事が返ってきた。




「次から次へと災難が絶えませんね。」


困った口調で南雲さんはそう言った。

彼は今、私の自室にいる。

南雲さんが言った言葉は私が言いたいセリフである。

望んでこうなったわけではない。

追い出される覚悟を決めていたと言うのに、まさか死ぬ覚悟を決めなきゃならないなんて。

思ってもいなかった。


「リーダーである私を中心に貴女を守ります。大丈夫です。伊吹童子の嫁になどさせません。」


とても真剣に南雲さんはそう言った。

真剣に言ってくれたというのに、私は長いため息をつい漏らしてしまった。


「どうしました?私たちのことで何か不安なことでも?」

「不安はありません。ですけど、皆に好意を抱かれていると聞いたものですからちょっと。」

「あぁ。そうですね。でも、私は貴女を想う気持ちは誰にも負けるつもりはありませんよ。」


少し不敵な笑みを彼はしていた。

そいういうのが嫌だから守られるの嫌なんだけどな…でも、守られないと死んでしまうし。

せっかく生き残れたというのにそれは嫌だ。

自分の不満はしばらくの間推し殺すことに決めた。

そうでもしないと、何だか言ってはいけないことを言ってしまいそうで。

それだけは避けたかったのだ。


「私も仕事があるので毎日は無理なので、以前のように当番制にしようと思っています。翔吾は…まだ検討中です。」

「そうですか。」

「翔吾に守られるのは嫌ですか?」

「嫌というか…彼の考えていることが、私には理解できません。」


北山翔吾。

最初に会った守護者の1人だった男の子。

以前居た主人公ちゃんのことが好きで盲目的になっていた彼。

その彼が今は私のことが好きだと言う。

好きだった彼女のことを貶してまで彼は確かにそう言った。


正直、今でも意味不明だし許されると思っている彼の思考が理解出来ないのだ。

あんなにチャンスを与えたっていうのに。


そんな彼に守られる?ちょっと考えさせて欲しい。


私はその旨を伝えた。

すると南雲さんは、「やはりそうですよね」と予めわかっていたかのような表情でそう言った。

こういうところを見ると、南雲さんは守護者の中でも群を抜いて大人だよなぁと他人事のように思う自分が居た。


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