第30話 まさかの展開②

衝撃に事実が分かってから3日後。

私は1人では難しいものの身体を起こすことができるようになっていた。

声ももちろん出すことができる。


「すみません、介護させてしまって…。」

「何言ってるんですか。貴女は世界を救った恩人なんですよ。遠慮なんかしないでください。」


まだ1人で起き上がるのが難しいのを手伝ってくれるお手伝いさんがそう言ってくれる。

側には京子さんも居てくれていた。

とても柔らかな表情をしている。あまり見れなかった表情のような気がした。


「守護者たちに好かれる理由も分かります。どこまでも、貴女は謙虚なのですね。」

「へ?」


京子さんが言う。

そんなこと言われたことなかったけど。

どの辺が謙虚なのか教えてほしい。

私は思わず間抜けな声を出していた。


「これから大変かもしれませんが、頑張ってくださいね。」

「は、はい…。」


何が大変なのか、怖くて聞くことが出来なかった。



それからしばらくの間、自室で私は療養を続けることになった。

半月も寝込んでいたので1人で何かをするということが非常に難しい。

京子さんかお手伝いさんが決まって私が動く作業を手伝ってくれていた。

守護者の皆は、私が療養中ということもあり接触は遠慮してくれている。

京子さんが遠慮するように言ったらしい。

私が回復しきったらどうなるんだろう。

そう思ったが、私の療養中に気持ちが冷めているかもしれない。

そんな淡い期待をもつことにした。

そうでもしないと、自身の気持ちが持たなかった。


それから1ヶ月後。

私は全快した。もう不自由なく動くことができる。

健康って素晴らしいことだし大切なことなんだなと実体験で知ることができた。

誰かに助けてもらうことの大切さも改めて知らされることになった。

そんな私は今、北山くんに迫られています。

どうしてそんなことになったのかというと少し時間は遡る。


全快した私は村の様子を見に行くためにいつも着ていたように巫女服を着て、見回りをしていた。

巡回をする必要はもうないのは分かっているのだが、念のためだ。

怨念に当てられて、神様が荒ぶっているとも限らない。

多分、そんな神様が居たのなら私が眠っている間に守護者の皆がどうにかしただろうけど。

一応、物事には慎重に取り組む性格のため見回っていていた。

そんな時に守護者から外された人物、北山翔吾が私を見るなり地面で土下座してきたのである。


「本当に、すみませんでした…!!!」


今更感が半端なかった。

彼が公正するチャンスはいくらでもあったし、許される機会もあった。

それら全てを彼は棒に振ったのだ。

だから私がすべきことは一つだと思った。


「邪魔なのでどいてください。」


あくまでも冷静に、冷たくそう言った。

もう彼に贖罪の機会はない。

そういうことも世の中、生きていればある。

そのことを伝えたくて私はその態度をとった。

けれど。


「お願いします!話を聞いてください!!」


無視して立ち去ろうとする私の手首を掴み、近場にある樹木に身体を押し付けたのだ。


そうして今に至る。


至近距離にある北山くんの身体。

なんでこんな乱暴なことをされなくてはならないんだろう。

彼はどこまで私に失礼な態度を取ろうとするんだろう。

正直、ムカついた。印を結んで攻撃してやりたいところだけど、こんなことに使いたくない。

そもそも彼の行動の意味がさっぱり分からない。

謝るのも反省するのも意味がないことなのに。

私は話すべきこともないので沈黙を貫いた。


「俺が、本当に悪かったです。謝っても許されないことをしたのは分かっています。でも、貴女が好きだから、諦められないんです…!」


このクソガキ何言ってるの?


思わず心の中で口悪くそう思ってしまった。



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