第23話 困惑

 ただいま、イケメン2人に告白されている。

私はどうするべきなのか、わからない。

主人公は居ないのである。

彼らが私を恋愛対象として見るということ事態、おかしい。

 なんでこうなったかなぁ…。

自室で嘆いている私。今日も5時10分前に起きることができた。

正直、巫女の仕事がとても気が重い。

 今日の守護担当は告白してきたうちの1人、南雲さんだからである。

久しぶりに彼と会う気がするが、何をされるやら。

普通に仕事をさせて欲しいものだ。


できれば何もしてほしくない。何も言って欲しくない。


でもその願いは叶わないだろう。

男性経験がなくともそれくらいはわかる。

唇と貞操だけは守らねば!とちょっと違うところに気合いを入れた。

本当は仕事そのものに気合いを入れたかった。




「おはようございます。南雲さん。」


支度を終えた私は彼と合流した。

頬を赤らめているのは気のせいではないだろう。

私なんかに会えたことが嬉しいのだろうか。

ちょっとよくわからない。


「おはようございます。紅葉さん。良い天気ですね。」

「そうですね。巡回には良い天気だと思います。」

「貴女に会えて嬉しいです。しばらく、会うことができなかったので。」

「そうですか。巡回に行きましょう。」


 これ以上、話題を広げると巡回時間が短くなりそうだったので冷たいかもしれないがさっさと切り上げた。

南雲さんは優しい性格のせいなのか、不満そうな顔はしていない。

もしかしてマゾ…いやいや、失礼な考えはよそう私。

 神社では怨鬼神を鎮めるための地鎮祭の会議が朝早くから行われていた。

もう時期あの悲しい神様は復活してしまう。

地鎮祭の意味があるのか、私にはわからないけどあの涙を止めるために動こうと思っている。


それには神代の巫女の舞が必要になる。


夫に向けて舞を舞って、鎮めるのだ。

私はそれだけで終わってほしくはない。


初代の巫女と永遠に眠って欲しいのだ。

あの2人は結ばれるべきだと思うから。

だからもう一段階、踏み込むべきだと考えている。


「どうかしましたか?紅葉さん。」

「いいえ。朝早くから会議をするんだなと思いまして。」

「地鎮祭を仕切る村の人間は老人が多いですからね。朝が早いみたいです。」

「そうなんですか。」

「紅葉さんはハッキリしていていっそのこと清々しいですね。」

「何がですか?」

「私に好意がないということがハッキリ伝わってきます。」

「…仕事に私情は挟まない主義ですので。今は巡回中ですし。」

「そういうことにしておきましょう。」


西谷くんもだが、巡回中の重要さを分かっているのでその言葉を言えば引き下がる。

まるで魔法の言葉のようだ。

これから先、何か言われそうになったら巡回中という言葉を使うようにしようと決めた。


かれこれ話をしながら巡回をしていると、時間になったために神社に戻ることになった。

今の時間帯は安全だった。まるで嵐の静けさのような、そんな感じだった。

その道のりで南雲さんが話かけてくる。


「渉くんにも告白されたそうですね。」

「神々は噂がお好きなことで。…そうですよ。なんで南雲さんも私のことが好きなんですか。」

「凛としているところが好きなんです。とても素敵な女性だと思います。」

「素敵な女性と言われて嫌な女は居ないと思いますけど、正直2人から告白されて困ってます。」

「嫌いと言えば良いのでは?」

「それは安直すぎやしませんか。私は南雲さんのことも、西谷くんのことも嫌いではありません。頼りになる守護者だと思っています。」

「では望みがあるということですね。」

「西谷くんみたいなセリフを言わないでください。」

「彼のことを口に出さないで下さい。…嫉妬してしまいますから。」


とても色っぽい声でそう言われた。

私は唇と貞操の危機を感じて、さっさと神社へ向かう道を早足で歩いた。

身長差があるため、あまり意味がなかったけど。

危機一髪だったと思う。

なんとか守ることができたのでホッと胸を撫で下ろした。


今日の巡回は、それ以上危険なことは起こらなかった。

それが逆に怖いと私は思った。


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