第21話 告白
もしかして南雲ルートに入ったのだろうか。
屋敷の自室に入って落ち着いた私は思った。
別に意識をしているわけではないのだがどうしても彼との接触の機会は多い。
なので意識せずとも仲良くなってしまうのは道理ということで。
他の守護者とも円満な関係という意味で仲良くなりたいと思うが、何せ私は神代の巫女であるだけで主人公ではない。
つまり主人公補正ともいうべきものがなくなっている。
(それってリアルと同じってことかな…。)
好感度が上がりやすい世界だと思うけど、少し虚しくなった。
現実主義者である自覚はある。
でも、せっかく別の世界に来たのだからもう少し仲良くなれる機会くらいくれないだろうかと思う。
特定の人に限定され過ぎだ。
別に恋愛を求めているわけではない。
ただ、人との交流を求めているだけだ。
それくらい求めてもバチは当たらないと思う。
誰もいないことを良いことに長いため息をついた。
(でも少しドキドキしたな…。)
南雲さんに抱きしめられた時は泣いていたからそんなことに気が付かなかったけど、後から考えれば赤面ものである。
超絶イケメンの腕の中とか、普通ならあり得ない事態だ。
しかもその中でわんわん泣くとか子供か…。
でも南雲さんは終始、優しかった。
こんなこと、現実じゃないだろう。
ドラマとか漫画の世界とか、そういう架空の世界ならあり得ると思うけど。
…そういえば架空の世界だったわ。
自分が居る世界のことを忘れかけていた。
あり得ないことが、普通にあり得る世界なのである。
心臓がこの先持つだろうかと心配になった。
翌日。
今日も、南雲さんが守護者として来てくれた。
私は昨日、迷惑をかけたことを謝った。
「昨日はすみませんでした。いい年して泣いちゃって。」
「気にしないでください。私は、とても嬉しかったです。」
「え?」
何が、嬉しかったのだろう。
とぼけた考えを持ってみるが、予測はつく。
残念なことに私の好きなゲームの種類が乙女ゲームだから展開が予想できる。
やめて、その言葉は言わないで。
「私は、貴女のことが好きですから。」
ちょっと待った。
予想以上の言葉を言われて私は思わず固まる。
てっきり『自分に心を開いてくれてる』みたいな言葉を言われるかと思っていた。
それをすっ飛ばしてまさかの告白。
実は恋愛経験は全くないので、人生初の告白である。
嘘でしょ、これ夢なんじゃない?
そんな風に現実逃避をしてみるが、残念なことに現実である。
何も言えず固まっていると、
「これから先、覚悟しておいてくださいね。」
そう優しい声色と笑顔で言われた。
覚悟って何の覚悟…予想はつくけどそれは乙女ゲームだから良いのであって!
って違う!ここは乙女ゲームの世界だった!
私、昨日から思考回路がおかしくなってる!
それは今までずっと抱いてきた罪悪感がなくなったからなのか。
今までの行為を肯定してくれた人が居るからなのかわからない。
少なくとも、心が軽くなっているということは確かだ。
だから変な考え方をしてしまうのだろう。
「は、ははは…。」
でもそれとは違って先程の発言には、乾いた笑いしか出てこなかった。
多分、うまく笑えていないと思う。
これは確実に南雲さんのせいだ。
彼もそれは自覚しているのか、私の反応を揶揄うようなことはしなかった。
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