第8話 好感度設定

 そんな簡単に好感度が上がるのはやはり架空の世界だからだろうか。

私が発した言葉や態度は現実では好感度が上がる態度ではないと思う。

決してわざとした態度ではない。

 仕事中だったし、不愉快に思ったことも事実だ。

もみじちゃんは何やら策のようなものを練っているが、私は違う。

ありのままだ。性格上、忖度付けられないのだ。


「あのー…こんなこと言ってはいけないかもしれませんが、チョロくないですか?」

「人間とはそういうものだろう。」

「否定は出来ません。でも、そう思ってしまいます。」

「元の世界とやらはよほど厳しいのだな。」

「とんでもない。世界崩壊の危機には瀕していませんからこちらの方が厳しいかと。」


 何故か弁解するように私は神様にそう言った。

やましいことなど何一つとしてない。

多分、あるとするならそれはもみじちゃんの方だと思う。

 現に私がいじめたなんて嘘を北山くんに言っている。

泣いていたなんてことも彼は言っていたか。

 女の涙は時に男に効果的面だもんね。

私がその手段を使うかは別問題だけれど。


「其方には期待しておるぞ。世界を救えるのは其方しかおらんのだから。」


 なんだか壮大なお話になってしまったなぁ。

そんなことに関わるだなんて思ったことも想像したこともなかった。

 私の見える世界はきっと他の人より見えるものは多かった。

そのおかげのせいなのか、この世界が壊れかけていることはよくわかった。

 悪意に満ちたあやかし達。悪霊。

悪霊はたまに元の世界でも見たことはあるけど、本当にごくたまに。

 別の世界でこんなにも居るとは思ってもみなかった。

私はあくまでも人間であって、出来ることはとてつもなく小さなことだと思う。

それでも、私は。出来ることがあるのなら。


「出来ることは精一杯やります。だから、どうか助けてくださいね。」


足りない部分は強大な力を持つ神様に頼ることにしよう。

そう思いながら微笑むと、神様は目を見開いて私を見た。

そして、


「よかろう。いざという時は儂も助けてやる。」


 ちょっと気になる言い方をされてしまったけど陽気にそう神様は言った。

その言葉に私は少しだけ安堵した。

強い味方が居るか居ないかで心の安寧というものは変わっていくものだ。

 私は頭を下げてから片付けをして屋敷の方へと向かった。

もみじちゃんを待つことは、時間の無駄になるのでやめることにした。



翌日。


「紅葉さんは筋がとても良いです。この分では後1週間くらいで修行は完了でしょうか。」

「随分早いですね…。」

「元々霊力が強いんですもの。そして飲み込みも早い。早いのはそのせいですよ。」

「そうですか。」


 京子さんとの会話である。

修行は印の結び方、そして祝詞に合わせて舞う巫女の舞を主に教えられていた。

 巫女の舞は元の世界でバイトをしていた時に見たことがあるので記憶にあっただけだ。

この世界では私が見た動きより少し激しいみたい。

色々と経験しておくというのは大切なことなんだなと痛感させられる。

 今日も無事修行は終えて掃除の続きをしようとしたが、京子さんに舞の練習をするように言われた。

 仕事の放棄をしているようで気が乗らなかったものの家主の言うことは絶対だよね、と自分に言い聞かせた。

境内で練習をすることにする。

 神楽鈴を持って神を鎮める為の舞を誰に見せる訳でもなくひたすら教わった通りに舞っていた。

すると、誰かが来る気配がした。


「…天女様ですか?」


そんな変なセリフが聞こえてくる。

天女の気配なんて全くしないからセリフの意味がわからない。

舞うのをやめて視界を広げると、そこには攻略キャラクターの1人である西谷渉がそこには居た。


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