第7話 2人目の守護者

 南雲武幸。

守護者、5人の中での最年長でリーダーみたいなキャラである。

 性格は基本的に温厚。でも怒ると怖いというギャップが人気。

そして守護者の中で1番の強い能力を持っている。


「そうですが、何かご用でしょうか。」

「翔吾くんが迷惑をかけたと聞き、私が代表して謝罪に来ました。私は南雲武幸と申します。」

「ご丁寧にありがとうございます。本人が謝罪をするわけではないのですね。」

「まだ、納得していないようでしで…私からも散々言い聞かせているのですが本当に申し訳ありません。」

「お気遣いなく。貴方が謝ることではないでしょう。」


 私と南雲さんの間に沈黙の帳が降りる。

特に私から言うべきことはなかった。

南雲さんはどうやら私がもみじちゃんをいじめているとは思っていないらしい。

 そうでなければわざわざ謝罪になど来るはずがない。

少しはまともな人が居てくれて胸を撫で下ろした。

大人にまで同じことを言われては対応に困る。


「えー…その、怒っていないのですか?」

「不愉快には思っていますよ。初対面からお前呼ばわりされたんですから。」

「そうですよね。誰だってそう思うと思います。」

「当然のことだと思うのですが、それが何か。」

「いいえ。あまりにも冷静でいらっしゃるので…。」

「子供のすることに一々怒っていては疲れるでしょう。」


 こんなしどろもどろなキャラクターだっけ。

イケメンだというのは当然として。

 ゲームした時はとても冷静沈着で頭が良いキャラクターだという印象があったんだけど…。

実際に会ってみたらこんなものか。

少し、イメージと違って残念に思った。


「大人な対応をして下さって非常に助かります。」

「南雲さんは少々、彼に甘いような気がしますがね。」

「小さな頃から見ている弟分みたいなもんなのでつい…ですが、必ず本人にも謝罪させます。」

「そんな無理矢理な謝罪は結構ですよ。ご用件がそれだけでしたらお引き取り下さい。見ての通り、仕事中です。」


 居候の身である。

与えて貰った仕事を放棄することは自身のプライドが許さない。

例え彼らの守護対象になろうと、私は放棄することはないだろう。

 仕事が好きという訳ではない。

単に責任感が強いだけだ。とてもちっぽけなものだと思うけれど。

私は軽く頭を下げてからその場を後にした。

 何か呟くような声がしたような気がするけど、気のせいだろう。

自分の仕事に専念することにした。




 神社内の清掃後、赤い鳥の神様が私の元に来た。

鳥だというのに表情がある。具体的に言うとニヤニヤしていた。

 なんだか違和感が…神様だから当たり前のことか。

無視すると怖いので声をかけた。


「こんばんは。散歩ですか?」

「其方は礼儀というものを弁えておるな。」

「それくらいの力を感じたら誰でも弁えるのでは?…あぁ、弁えない子もいるか。」

「頭の回転が早いことよ。」

「何かありました?楽しげですけど。」

「いやいや。南雲の小僧が、其方に好感を抱いているようでな。」

「…私、仕事中だと追い返したのでむしろ逆の感情を抱いているかと思ったんですが。」

「好いてる相手でなければ『素敵な女性だ』なんてうっとりした顔をするか?」

「……マジですか。」


 私のせいで頭脳派キャラクター、性格変わってない?

何処で何を聞いてるかわからないから八百万の神々って怖いなぁ。

 この神様多分、別格だけど。

遠くに見えるオレンジ色の空を思わず見上げた。




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