第2話 初恋

 等々日曜日当日になり、エイデンは身なりを整えた。

 カーテンを全て閉じ、靴に履き替えると後ろにいたハイエナとライオンとアナコンダに声をかけた。


「それじゃあ行ってくる。泥棒はそのまま殺したら地下室にだ。よろしくね」


 優しく撫でながら言い、家を出るとしっかりと鍵を閉め、車の中に多くのお菓子を入れると、自分も乗り込んで走らせた。


 この場所から少しだけ孤児院は遠いため、出来るだけ早めに出た。


 車を走らせながらサングラスを掛け、周りを見渡した。日曜日なだけあってキャンプに行くかもしれな人が多かった。


 朝に作ったコーヒーを一口飲むと、再び車を走らせて孤児院に向かった。


 孤児院に行くとガヤガヤと子供達と騒ぐ声と共にお祭りの雰囲気のある飾りが見えた。


「ふーん。中々だな」


 エイデンは見ると、駐車場に停め、お菓子を持って車から出た。


 祭りの中にはいると、店番をしている十代ぐらいの子供が数人と孤児院で働いている大人数人、見たことない人が数人いた。


(募集でもして、雇ったのか?)


 まぁまぁな人が参加し、様々なことを体験したり、お菓子を買ったりなどをしていた。


 孤児院の所長を探していると。


「エイデンくーん」


 その声を聞いたエイデンは振り返ると、笑顔で手を振っている少し歳がいっている女性が見えた。もちろん孤児院の所長のエラ・バトラが駆け足で近寄ってきた。


「エラさん。こんにちは」

「こんにちは。来てくれて嬉しいわ! ん? その手に持っているのは?」

「あぁ、子供達のお菓子です。仲良く分け合って食べてください」


 エイデンはお菓子が入った袋を渡すと、エラは申し訳なさそうにしながら言った。


「まぁ! 嬉しいわ。本当にいつもごめんなさいね。もぉ、なんてお礼をしたらいいか」

「いえいえ。まぁ、沢山あるので」

「たくさんだなんて、いくらしたの? 流石に半分多く払うわよ。結構な量のお菓子を買うだなんていくらでもお金が」

「いえいえ。大丈夫です」


 エラは笑顔で言うエイデンに申し訳なさそうにしながら受け取ると、横から「持ちましょうか」と優しい女の子の声が聞こえた。


 ふと見ると、そこには長い髪を結んだ十代ぐらいの女の子がいた。


「あぁ、ありがとう。あっ、この子は今日の祭りに参加をしてくださっているアメリア・ブラウンちゃんよ。彼女、とても働いてくれて助かってくれるのよぉ。本当にここの自慢の子よ!」

「そんな、他の人もしっかりと働いていますよ」

「もちろん他の人も含めてるわ。あっ、ちなみにこの人は私の孤児院で暮らしていたエイデンくん」

「よろしくね。アメリアさん」


 エイデンはにこやかに挨拶をすると、ミアも笑顔で挨拶をした。


「初めましてこんにちは。あの、エイデンさんって、弁護士の仕事をやってるあのエイデンさん」

「えっ? よくわかったね。なんでわかったの?」


 エイデンは自分の名前を聞いた瞬間に自分の職業を当てたミアに驚いた。


「実は、私がバイト先をしているところでまぁまぁ噂になってるんです。中年なのにイケメンでかなりのやり手な弁護士がいるって」


 にこやかで可愛らしい笑顔でいうアイメアに、エイデンは少し胸の奥がキュンと鳴った。


「あらあら。あっ、お願いなんだけど私と一緒にお菓子を私の部屋まで送ってくれるかしら?」

「はい。大丈夫ですよ」


 エラの助けに、アメリアはお菓子の袋を受け取りながら承諾した。


「俺が置いて行きます。エラさんはここで祭りの手伝いしてください」

「えっ! いいわよ。別に、これは」

「まぁまぁ。俺、ここに通ってますし、場所も覚えてますよ」

「あら。そう、うーん。じゃあ、お願いしようかしら」

「はい。じゃあ、行ってください!」


 エイデンは笑顔で言った。


「あっ、スリッパは自由に使ってちょうだいね!」


 エラはそう言うと駆け足でその場を去った。


「じゃあ、行きましょうか」


 アメリアは笑顔でエイデンに問いかけ、一緒に孤児院の建物内に向かった。


 入ると、いつもと変わらない風景が見えた。それぞれいくつかの靴箱と傘立て、少しだけボロボロの壁、いつまでも変わっていないなと感じられる風景だった。


 所長室は2階の一番右奥の部屋にあることを思い返していると。


「エイデンさん。こちらのスリッパどうぞ」


 アメリアはいつの間にか靴箱の近くに置いてあるスリッパを取り出し、それをエイデンの前に出していた。


「これはすまないな。ありがとう」

「いえいえ、むしろ両手塞がっているじゃあありませんか。尚更これは人助けが必要ですよ」


 アメリアは当たり前のように言った。


 スリッパを履くエイデンを確認をすると、アメリアは「それじゃあ行きましょう」と声をかけた。


 寒い廊下を歩きながらエイデンは話しかけた。


「ちょっと失礼な質問なのだが、アメリアさんはいくつなんだ?」

「えっ? 私ですか? えーと、今年で17歳になります」

「ほぉ、じゅう、えっ? 高校生かい?」

「はい。実は私の家、シングルマザーで2人暮らしなんです。母も働いていて、私も働いてるんです」

「へぇ。結構親想いだね。ちなみに、どこで働いているんだい?」

「えーと、ここから少し離れているんですが、ダランにある、夢の猫カフェってわかりますかね?」


 店の言葉を聞いたエイデンは少しだけ聞いたことあるなと思った。


「夢の猫カフェは少し聞いたことがあるな、ちなみに私もその辺で働いているんだよ」


 エイデンの言葉を聞いたアメリアは驚愕の顔を見せた。


「えっ! そうなんですか? じゃあ出来れば寄ってみてください。結構可愛い子達が沢山いるんですよ。ちなみになんですが、エイデンさんは猫は好きですか?」


 アメリアの質問にエイデンは笑みを浮かばせながら「好きだよ」と言った。


「うち、一匹買ってるからね」

「へぇ。どんな種類なんですか?」

「そうだなぁ、茶トラ系の猫だな」


 エイデンは説明をすると、ミアは「へぇ」と言った。


「いいですね。茶トラ系の猫。私は色んな猫が大好きで、一つに決めろを入れわれたら無理ですかねぇ」


 アメリアと楽しく話していると、いつの間にか所長の部屋に着いていた。アメリアは所長室を開け、お菓子の袋をソファの上に置いた。エイデンも続いて置いた。


「よし。それじゃあ祭りのほうに戻るか」

「そうですね」


 アメリアは笑顔で言い、所長室を出た。


「結構色々あるんですよ。手作りジュース。お菓子、あとは簡単な遊びが様々で」


 アメリアは祭りのことを簡単に説明しようとすると、階段を踏み外して、倒れそうになったところをエイデンは自分の方に倒れるように腕を掴んで倒れた。


「きゃっ」

「おっと、大丈夫かい?」

「はっ、はい。すいません。エイデンさん」


 アメリアはエイデンに支えながら立ち上がり、階段を降りた。


「怪我はないかい?」

「はい。大丈夫です。本当にすいません。エイデンさんこそ大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だ。じゃあ、行こうか」


 エイデンは笑顔で言い、アメリアと一緒に祭りのほうに向かった。


 祭りのほうに行くと、ミアの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。振り返ると、ミアは再び笑顔を見せた。


「お母さん!」

「ごめんねアメリア。ちょっとバスを乗り過ごして」

「いいよ別に。間に合ってくれれば。あっ、エイデンさん。こちら私の母です」


 アメリアはすぐに隣にいるエイデンに紹介をした。


 母親はエイデンの顔を見るとすぐに挨拶をした。


「初めまして。私、アメリアの母親のルカ・ブラウンです」

「初めまして。エイデン・ナッターズです」


 エイデンは健やかに挨拶をした。


「エイデンさんって、元孤児院で住んでいた人で、おまけに弁護士なんですって」


 アメリアがそう言うとルカは「やっぱり」と口にした。


「どうりでなんかすごい人だとは薄々オーラで感じてましたけど、まさかここの孤児院で育っていた人だったなんて」

「えぇ。それなりにお世話になっていましたので、ルカさんは今日は娘さんがこちらで働くのを聞いてこちらに」

「はい。その通りです。エイデンさんは」

「俺はお電話で聞きいて、ここに。まぁ食べ物とかは食べたりします。体験は子供達だけで十分なので」


 エイデンは周りを見渡しながら言った。


「そうですか。あっ、私そろそろ戻ります! エイデンさん。ぜひ、猫カフェに来てくださいね。水曜日から土曜日いますから。あっ、でも休日だけは朝からいます! お母さんも色々と体験をしてね。それでは」


 ミアは笑顔でエイデンとルカに手を振ると、その場を去った。


「あの子、とても元気でしょ」

「えぇ、とても元気で、明るい子ですね」

 

 エイデンは、去っていくアメリアの背中を見つめながら言ったが、先ほどから心臓がドキドキする音が鳴っていてしょうがなかった。今までこんな感情は抱いたことがない。


 気づけば少しだけ息が荒くなりかけていた。


「エイデンさん大丈夫ですか? なんか顔色が悪いですよ」


 心配の声をかけられたエイデンはすぐに我を返った。


「あぁ、すいません。大丈夫ですけど、ルカさん。一緒に回りませんか? もう少し話したいので」

「えっ? 一緒にですか? 構いませんよ。じゃあまず、何か飲み物でも買いましょう」

「そうですね。あっ、そこに飲み物が売ってますけど、飲めますか?」


 エイデンが指を指した先には手作りのグレープジュースが売っていた。


「いいですね。じゃああれを飲みましょう」

「そうですね。あっ、私が奢ります」


 エイデンはお財布を出しながた言うと、ルカはとんでもないと声を上げた。


「自分のは自分で買いますよ。それに会ったばっかですし」

「いえいえ。大丈夫です。飲み物だけですから」


 エイデンは笑顔で言った。ルカは申し訳なさそうにしながらお願いしますと言った。


 自分用のルカの分の飲み物を買い、座れる場所に行った。


「ここに座りましょう」


 エイデンは飲み物を置いて、ルカに言った。


 お互い座ると、ルカは再び飲み物を奢ってくれたこと礼を言った。


「本当にありがとうございます」

「本当に大丈夫ですよ。ちょっと、質問があるんですけどいいですか?」


 エイデンの言葉に、大丈夫だとルカは言った。


「実は先ほどアメリアさんから聞いたんですが、シングルマザーと聞いたんですが、失礼なんですが旦那さんは」


 エイデンはそう聞くと、ルカは少し悲しそうな顔を見せた。


「亡くなったんです。二年前に病気で。それから働いてるんですけど、色々とあって。私の親は亡くなっていて、おまけに親戚もいないからあまり頼る人がいなくて、家庭も厳しくなる前にあの子も働いてくれていてとてもというか、めちゃくちゃ感謝をしているんです。じゃなきゃ、今のままの生活は続けられなくて」

「なるほど。私の予想なんですが、こうなってしまって娘さんの自由を半分削っているような感じだと、考えていますか?」


 エイデンがそう答えると、ルカは正解だと言わんばかりに目を見開いた。


「そうです。よくわかりましたね」

「……表情と今の話を聞いてなんとなく思ったまでの話をしたまでです。それにしても、ミアさんはさんは本当に優しい方ですね。母親のためにそこまでしてくれるなんて」

「はい。本当に自慢の娘です」


 ルカは笑顔で答えたが、仕事を何個か掛け持ちをしているのか疲れが出ている。


「今、何個は働いていますか?」

「えっ。うーん、別々になんですけど、午前と午後を分けると四つですかね?」

「四つ? 結構体にきませんかそれ」

「きますけど、仕方ありません」


 ルカは笑顔で答えるが、それなりに無理をしているのが見えた。そこでエイデンはあることを思い出し、提案をする。


「あのルカさん。よければ私の会社で働きませんか?」

「えっ? 働く?」

「えぇ。ちょうど私の働いているところの書類をまとめる担当と掃除する担当が辞めてしまいまして、今なら二つセットで働いてくれると結構な給料になるんです。どうですか?」

「嬉しいですが、書類って何を」

「あぁ、ただ同じやつをまとめて渡したり、あとは片付けたりするだけ。掃除は建物の一階から七階まで。一ヶ月で何ドルぐらいだったかな? 例えるならいつも働いている四つの給料を合わせてなんだけど、結構な額になるし、おまけに有給だって好きなだけ取れる。おまけに楽にもなるんだけど、どうかな?」


 エイデンはなるべくわかりやすく説明をした。もちろんこれはルカのためではない。ただ単にミヤと近づくための工作だ。


 このノリに着いてくれば信頼を得られるが、もしなかったら他の追っ手を考えていると。


「見学させていただけませんか?」

「おっ! いいんですか? それなら嬉しい。研修も着いているから安心して下さい。優秀な奴がいますから。あっ、あとは何か不安なこととかありますか?」

「えーと、特に何も」

「じゃあ日にちはどうしようか決めましょう。ルカさんの好きなような日にちで構いません。何せ四つも掛け持ちしているんですから」

「……本当に、もぉ」


 ルカは立ち上がるとエイデンに頭を下げた。


「本当にありがとうございますエイデンさん。なんて、お礼をしたらいいのか」

「いやいや。頭を下げないでください」


 エイデンはルカを再び椅子に座らせたながら、奥底で深い笑みを浮かべさせていた。


 祭りも終わり、エイデンはルカと電話番号を交換をし、所長に軽く挨拶をしてからその場を早々と去った。


 エイデンは運転席に座ると、抑えていた鼓動が一気に押し出してきた。


 息が荒くなったのはこれが初めてだ。あのような、まだ未成年の女の子にこのような感情を抱くなんて思いもしなかった。


 好き、と言う感情はあの子が始めてだ。これが恋心というものなのかとエイデンは必死に頭の中で考える。


 落ち着きを取り戻したエイデンは早々と自分の家に返った。



「それじゃあ、前働いていた仕事を辞めてからこちらにきてくださいね」


 エイデンはルカにそう伝えた。


「はい! それでは今働いている先に退職を届け次第に電話いたします」


 ルカはそういうと、それではと頭を下げて早々と事務所を去っていった。エイデンはよしっと心の中でガッツポーズをした。


 これでミアと親しくできると心の中で思いながら事務所に入って行った。


「あれ? エイデン先生なんか上機嫌じゃあありませんか?」


 エイデンの事務所で働いている仲間が声をかけた。

 

「なんでそう思うんだい?」


 エイデンはそう言うと、仲間は説明した。


「だって、なんだか楽しみそうな感じが伝わってきたんです」

「そうか。まぁな。ちょっといいものを買えたからそれが届くのを待っているんだ」

「へぇ。何を買ったんですか?」


 仲間の質問に、エイデンは笑顔で「秘密」と言った。


 午後は再び法律相談、そして書類整理をまとめると予定よりとても早く終わった。時間を見ると時間が八時過ぎとなっていた。エイデンはミアが働いている猫カフェに行った。


 猫カフェに行くと、エプロン姿で数匹の猫のお世話をしているアメリアの姿を見つけた。


 アメリアはいらっしゃいませと言いながら顔を上げ、エイデンの姿を見ると顔を輝かせた。


「エイデンさん。こんにちは」

「あぁ、こんにちは。しっかりと働いているね」

「へへ。あっ、まず母のことなんですけど、本当にありがとうございます。面接などもせずにそのまま就職させていただけるなんて」

「いやいや。君だって少しは母親と一緒に過ごしたいだろ。そこのところも考えなくちゃな」


 エイデンはにこやかに言った。


「でも、そう簡単にはいかないはずですよ。世の中は。ですが、こんなにもいい条件が揃っててうちの母親も少しは休み取れます。本当にありがとうございます!」


 何回も頭を下げるアメリアに、エイデンは下げなくていいよと言いながら彼女の肩にそっと触れた。


「せっかくきたのもなんだが、何か飲み物を頼もうかな?」


「あっ、今注文お持ちいたします」


 アメリアはすぐに近くにあるメニューをエイデンに渡した。


「じゃあ、窓辺の方で決めるから、決めたらいいかな」

「はい! もちろんです!」

「アメリアさーん。ちょっといいかな?」


 店長らしき人に呼ばれたアメリアは「はーい」と声をかけてその場を去った。


 エイデンはそばににある店に座ると、一匹の猫が近づいてきたため優しく撫でた。


「よし。アメリアさん」


 エイデンが声をかけると、アメリアは「はい!」と返事をした。


「このカフェオレを一つお願いする」

「かしこまりました」


 アメリアはエイデンの注文をしっかりと聞くと、駆け足で厨房の方に戻って行った。


 エイデンは猫を優しく撫でながら待っていると、アメリアがお盆に乗せたカフェオレを置いた。


「ありがとう」

「いえ、あっ。何か猫と戯れますか? 餌とかここに書かれているんですが」


 アメリアは飲み物の隣にある猫の餌に関するメニューを指差した。


「いや、少しだけここに寄ってから帰る予定だったからまた今度にするよ」

「あっ。そうだったんですね。すみません」

「いやいや。いいとも。だがここ、結構な種類の猫がいるね」


 エイデンは周りにいる猫を見渡しながら言った。


「店長ができる限り、殺処分を減らすことを目的にできる限りの猫たちを集めたんです」

「へぇ。なかなかの動物思いだね」

「でしょ。ほぼ毎日のように働いていると、猫の種類と名前を覚えました」


 アメリアは笑顔で答えた。


「アメリアさんは猫は好きかい?」

「えっ。はい。もちろん大好きですよ」


 ミアは明るい声で答えた。次々と純粋な声で答えてくれるミアにエイデンはずっと胸が鳴る音が止まらなかった。

「へぇ。本とか好きなんだね」

「はい。特に冒険の本が好きなんです。エイデンさんはどんなものが好きなんですか?」

「私は主にミステリーや、心理学系の本を見てるね」

「おぉ! さすが弁護士ですね」

「弁護士だからってミステリー好きな人はあまりいないと思うよ」


 エイデンとアメリアはお互いに質問をしながら楽しく話していた。


「アメリアさーん。ちょっとお掃除お願いしていいかしら?」

「あっ。はーい」


 会話の途中で声をかけられたことにエイデンは思わず舌打ちをされるようになったが、それを抑え、そろそろ店を出ることにした。


「それじゃあミアさん。また今度ね」

「はい! またのお越しをお待ちしています」


 お会計を済ませ、エイデンはそそくさと早々と店を出ると同時にメールが来た。


 エイデンは数日振りなため、車に乗り込むと早々とその場所に向かった。


 待ち合わせ場所に行き、車の形などを全て教えると窓が叩かれる音が聞こえた。見上げると、女性が立っていた。車のドアを開けると、すぐに中に入れた。


「こんにちは。リンです」

「エイデンだ。よろしく」

「あんた、結構若そうですね」


 生意気のように口を聞いてくるリンに、なぜだか苛立ちを久々に感じた。


「そうか」

「うん。あっ、ねぇ私カバンが欲しい。高級の」

「あぁ、ごめん。店とかには寄れないんだ。だが、大金はあげる」


 エイデンが大金というと、リンは顔を輝かせた。


「いくらぐらいですか。額によっちゃ」

「1000ドル」


 エイデンがそういうと、リンは驚愕の顔を見せた。


「マジで! やった。あっ、避妊だけはちゃんとしてよね。肉体的ならば」

「いやいや、それは必要ないさ」

 エイデンは笑顔で応えると、そのまま自分の家に向かった。



「人は金を詰まれば詰まるほど悪い人に変わる。だが、ある人にとってはそれがいい方向へと変わる瞬間だってある。それが、君のような感じだ」


 エイデンはそばにいるライオンを撫でながら、血まみれで倒れているリエに向かって言った。


「俺はもっと知りたいことが沢山あるんだ。それぞれの苦痛、断末魔。そして、その時の感情。感情は時と場合によって変わることは感じられるんだけどね。だけど今日はなんだかまだまだすっきりしない。その理由、わかるかな?」


 エイデンは質問をすると、リエは首を横に降った。


「俺は、ある人に片思い? というものをしているんだ。それはね、今度入ってくる人物の娘。本当にあの子が欲しいんだ。だが、どうすればいいと思うのかまだわからない。どうすればいいと思う」


 エイデンは優しく質問をしたが、リエは「もぉ、許して、お金……いら、ない、から」と言ってきた。


 その姿に、エイデンは思わず大きなため息が漏れた。


「もぉいいよ。おい、食い殺せ」


 エイデンの言葉と同時に周りにいた子たちはすぐにリエに噛みつく同時に断末魔が地下室に響いた。


 地下室を出ながらも、エイデンはどうすれば暴れず、自分の側に一緒に添い遂げてくれるカヲ考えた。


 あまりにも考えが出ないため、むしゃくしゃしながらふと横を見ると本があった。片付け忘れた本のいつまでも一緒という題名があった。


(一緒)


 エイデンは心の中でつぶやくと同時に、あることも思い浮かんだ。


「一緒、そうか。俺と一緒になれば彼女は永遠に私と一緒に過ごしてくれるはずだ」


 エイデンは素晴らしい考えだと心の中で叫んだ。


 それには犠牲者が必要だ。犠牲になる人物を事前に誘拐せなばならない。


(変に証拠は残したくはないが、あっ)


 エイデンはもう一つのスマホを起動させ、いつも使っている掲示板に新しいアカウントを作り、フリー画像で少し露出をしている女の画像を貼り付け、可愛らしい名前を付け、できるだけ誰かが引っかかりそうな文章を作って保存をした。


(投稿はあの子を家に連れてくる前にしよう)


 エイデンはふぅと大きくため息をつくと、冷蔵庫の中に入っていたワインを取り出した。



「おはようございます。エイデン先生」

「あぁ、おはよう。ルカさん」


 エイデンは私服姿で通り過ぎていくルカに挨拶をし、自分の事務所に向かった。


 あれから一ヶ月、ルカは働いていたバイト先を全て辞めたあとすぐにエイデンの会社で働き始めた。秘書が丁寧に教えてくれたおかげなのかすぐに仕事を覚えてくれた。


「ルカさん。結構早目に仕事覚えるなんてすごいですよね」


 女性秘書はまとめた資料を置きながらエイデンに言った。


「あぁ、君の教えが素晴らしい体」

「そんな、私はただ丁寧に教えただけですって」


 女性秘書は恥ずかしながらも、嬉しがっていた。


 エイデンは何回か彼女と交友をしながらもミアにも会い続けた。沢山話したおかげで彼女たちは完全に親戚な人という見方をしていた。


(うーん、いつにしようか)


 完全に親切な人と見てくれたことは達成したが、その後はいつミアを家にあげるかだった。


 そんなことを考えながらトイレに行こうとすると、ちょうどルカに鉢合わせをした。


「あっ。エイデンさん。こんにちは」

「こんにちは。ルカさん。どうだい。仕事の方は」


 エイデンは質問をすると、ルカは笑顔で「順調です」と答えた。


「それはよかったが、なんだかルカさん機嫌良さそうに見えるね。どうしたの」


 エイデンは簡単な質問をすると、ルカは「気づきました?」と笑顔で答えた。


「実は今度久々にお友達とお出かけをするんです。最初はミアと一緒にお出かけしようと思ったんですけど、あの子が仕事であまり遊べなかったんだから時には友達とも遊んできてって言ってくれたんですよね」


 ルカは笑顔で話した。


 エイデンは話をうんうんと聞いているうちに、これはチャンスだと感じた。 


「へぇ、いつぐらいですか?」

「日曜日ですね。あの子もお休みなのでお互いにゆっくりできますわ」

「いいですね。アメリアさんはどこかに出かけないんですか?」

「うーん、今のところないですかね」


 ルカはずっと笑顔で話し続けていた。


「あっ、それじゃあ私は続きの仕事をしていきますね」

「あぁ、頼むよ。それじゃあね」


 エイデンはルカに挨拶をすると、すぐに事務所に戻り、女性秘書に日曜日は急用があるからもし連絡が来たら他の日にするように言ってくれと言った。


「かしこまりました。珍しいですね、日曜日を必ず有給だなんて」

「あぁ、ちょっとね」


 エイデンはそういうと、相談者がくる時間前まで準備を整えたのだった。

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