第31話 居残り領主と新たな住民
緊急任務:〈No5〉魔物に追われる難民を助けよう。
達成条件:魔物に追われる難民を全員救助する。
達成報酬:5,000開拓ポイント。尚、未達成の場合は、2,500開拓ポイントのペナルティを受ける。
「仕方ない。助けに行くか」
「ダイチ様、お待ちください。それは私たちで行かせていただきます」
「そうだぞ、ダイチ殿。あたしたちに任せてくれ」
「御領主様ともあろうお方が、死地に向かうことはありませんわ」
「ん? ルナリスとエリス、レーナ、いつのまに」
「先ほどプラン殿から念話が届いたのでな。レーナと狩りに行こうかと思っていた所だが、予定変更だな。あたしたちに任せて、ダイチ殿はゆっくりしておくといい」
「そうです。領主様にもしものことがあったらいけませんので、お残りください」
え、そんなこと言われたら本当にここで待ってるぞ?
だがこういう時こそ、リーダーシップが試されるんじゃないか。
ちゃんとスーツ着てるし、聖剣と傘を持っていけば大丈夫だろうし。
よし。ここはみんなに甘えず、たまには先陣を切るとするか。
「ではダイチ殿、吉報を待っているといい。行って来る。エリスは難民たちに食事を与えてやるといい」
「それでは、わたしは戦闘はみんなにお任せして、難民の方々のお食事を用意しますね」
「わたくしたちだけでなく、ガトーさんや仲間の魔法使いたちも一緒に行きますから。それではご機嫌よう」
「ん。ダイチ、また後でね」
……行ってしまった。
まぁいいか……。
《マスター……》
◇
「はぁ、はぁ……あ、あなたたちは?」
「今は話している時間はない。お前たちもあの村まで走れ」
「「「は、はい。ありがとうございます!」」」
「これで最後のようだな」
「何はともあれ、全員無事でホッとしました」
「わたくしたちの時より多かったですわね」
「ん。500人以上いた」
「だがデススネイクの群れはどこにいるというのだ?」
白装束の者たちが、続々と村を目指して走っていく。
「なぁ、アンタ。王国の騎士隊の隊長じゃったよな?」
「あぁそうだが、貴殿は確か……道具屋の店主か。無事で何よりだ」
「そうじゃ、よく覚えておったの。頼みがあるのじゃが、わしらを逃がすために後ろで騎士隊の人たちが大蛇を食い止めてくれているのじゃ。二人を助けてやってくれないか?」
「バーグとフライか! 道理で見かけなかったわけだ。
デススネイクの群れを、たった二人だけで食い止めることなどできん。ルナリス殿、急がねばならん」
「分かった。みんな聞いた通りだ、急ぐぞ!」
ルナリスたちは難民を避難させることに成功していた。
だが最後尾には、二人の王国騎士隊員がデススネイクの群れを食い止めていた。
◇
「ダメだ。フライ、これ以上はもたん。俺たちも引くぞ!」
「クソッ、次から次へとキリがねえ」
「「「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッッッ!!」」」
「あ、あれは毒のブレス!?」
「クソッ、この距離じゃ間に合わ…」「食らええええぇッ!」
間一髪、ルナリスの聖弓がデススネイクの頭を射ち抜いた。
「フェイン! 二人を助けるぞ!」
「承知しました!」
「「うおおおおッ!」」
「ガトー殿の槍捌きはすごいな」
「えぇ、それにフェインさんという方もなかなかですわ。それに、ガトーさんの槍は、ルナリス姉様と同じ感じがしますわ」
「ん。あの槍も光ってる」
「っと、話している場合ではないな。あたしたちもガトー殿とフェイン殿を援護する。魔法隊! 放てーッ!」
「「「ウインドカッター!」」」
「「「ウインドアロー!」」」
「「「ウインドランス!」」」
「ん。ウインドストーム」
エルフたちの風魔法が一斉に放たれた。
荒れ狂う暴風となり、デススネイクを引き裂いていく。
「た、助かったのか……?」
「俺たち生きてるぞ!」
「二人共、無事でよかった」
「「ガトー隊長! フェイン副隊長もご無事で!」」
「話は後だ。お前たちも早く村まで走れ」
「「し、承知しました!」」
バーグとフライが村へと走って行った。
「「「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッッッ!!」」」
「頭を射抜いても再生するとはな……」
「ルナリス姉様の攻撃でも倒せないなんて……」
「ならば再生が追いつかないほど、射ち続けるだけだ! 食らえええええぇッッ!!」
凄まじい速度で放たれた複数の魔法矢が、射抜いていく。
「さすがルナリス姉様、お見事ですわ!」
「ん。ルナ姉、グッジョブ」
「だが、さすがに分が悪いか」
「数が多すぎますわね」
「ルナリス殿! ここは一度撤退するべきだ」
「ん。シルフィもそう思う。ウインドカッター」
「仕方ない。撤退するぞ!」
◇
《緊急任務:〈No5〉を達成しました》
緊急任務:〈No5〉魔物に追われる難民を助けよう。
達成条件:魔物に追われる難民を全員救助する。
達成報酬:5,000開拓ポイント。
「お、緊急任務をクリアしたぞ」
「おめでとうございます、ダイチ様。ではあの二人が最後だったようですね」
ルナリスたちには礼を言っておかないとな。
「それにしても、こんな所に村があるとは思わなかったな」
「それは俺も同意だな。それにさっきのエルフの姉ちゃんたち、ありゃ何者だ。只者ではなかったぞ」
ガトーたちと同じ鎧だな。
ということは、こいつらがガトーとフェインが言ってたバーグとフライか。
一応、声をかけておくか。
「よ。お前らで最後みたいだな」
「あ、あんたは?」
「この村の領主様ですよ。あ、私はスフィアと申します。お二人共ケガをされているようですので、怪我の治療をしてくださいね。この道をまっすぐ行くと温泉がありますので、ひとまずそちらへ向かって下さい」
「あんたが領主さんか、恩に着るぜ。それとスフィアちゃんか。俺はバーグ。こっちがフライだ。よろしくな」
《マスター、514名の人族を確認しました。住民にしますか?》
「やってくれ」
難民たちの許可を取らずに住民にするのはどうかと思ったが、今や問答無用で住民にすることにしている。
《514名の人族が住民になりました》
《マスターの拠点住民が500名を突破しました》
《拠点レベルが6に上がりました》
《レベルアップボーナスで600KP獲得しました》
《一日経過しました。8,280KP獲得しました》
拠点:難民の村
LV:6
住民:827
開拓:<召喚><強化><?>
任務:55
スキル:<念話共有><配置変更><?>
領域:半径10km、南側直径55km、クワトロ大森林南入口から半径2km
KP:17,595(1日経過+8,280KP)
レベルが上がって拠点ステータスを見てみたが、領域が拡大されただけで特に変わりはなかった。
思った以上に住民が増えて、予備で建てた長屋でも足りない。
嬉しい誤算ではある。
新たな家が必要になったが、今はルナリスたちの帰りを待つことにした。
「ダイチ様、皆様のお帰りが遅いと思うのですが、何かあったのではないでしょうか?」
「あぁ、言われてみればそう…」『ダイチ殿、聞こえるか? ルナリスだ』
お、ちょうどルナリスから連絡がきたぞ。
念話を使うあたり、緊急事態ということか。
『ルナリス、何かあったのか? こっちは全員無事に避難してきたぞ』
『まもなくそちらに着くが、デススネイクという魔物が追って来ているのだ。数が多すぎて、あたしたちだけでは対処できそうにない。そこでダイチ殿の力を貸してほしい』
デススネイクってことは、蛇か。
それなら堀に落として、柵落としでもしてやるか。
《マスター、デススネイクは全長十mを越える大蛇です。堀に落とすことは不可能です。また木柵も簡単に越えてくると断定します》
う、シルバーウルフやS級の魔物と戦った時のやり方は通じないってことか。
さて、どうするか。
「ダイチ様、ルナリス様たちが見えました。ですが、あの砂煙は……魔物に追いかけられているようです!」
やばい、もうそこまで来てる。
どうしよ……。
「今回ばかりは、あの堀も木柵も役に立ちそうにないですね。もう少し柵が高ければ魔物も侵入できないのでしょうが、いかがされますか?」
そうそう、スフィアの言う通りだ。
柵がもっと高くなれば、大蛇でも侵入……あ。
「それだッ! でかした、スフィア!」
「は、はい……?」
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