第29話 ドワーフの子供とシキ神様
「「「本当にごめんなさいッ!!」」」
堀から引き上げたドワーフたちを、念のためスーパー温泉へ連れて行った後、すぐに元気を取り戻して出てきた。
「分かったから頭を上げてくれ」
10才ぐらいの子供たちに、土下座されるとかマジやめてほしい。
初めてされたし、みんな見てるし。
「さすが救世主様ね」
「ダイチ様は子供のしつけまでしっかりしているな」
「おい見てみろ。領主様がドワーフの子供を目が合っただけでペットにしたぞ。マジ憧れるぜ」
「キャーッ! ダイチ様が秒でドワーフを飼い慣らしてるわ。素敵♡」
なんて言葉が耳に入ってくる。
やはり、この世界の倫理観は問題があると思う。
その後、自宅で飯を食べさせてあげることにした。
◇
「「「うッ、うううううううううめええええええええええええええええええええええええええッッッ!!」」」
「「「おッ、おおおおおおおおおいしーいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃッッッ!!」」」
ドワーフの子供たちが絶叫を上げた。
「あらあら、そんなに急がなくても、おかわりは沢山あるからね」
「「「おかわりーッ!!」」」
「はいはい。ちょっと待ってね」
早速、引っ越してきたエリスは、子供たちのためにご飯を振る舞った。
ルナリスたちは引っ越して早々に、広場でドラスポを
しに行き、スフィアは「スラポンを増設してきますね」と一緒に出て行った。
「エリスよ。お前は母さんに似て料理も上手くなったな」
「それはあの三人のおかげですよ、お父様」
「はっはっは。エリス以外は戦闘の才はずば抜けておるが、それ以外は皆からっきしだからな。なんでも器用にこなせるお前だからこそ、ここまで美味い食事を出せるようになったのだな」
「それに領主様の愛情をたっぷりと込めてますからね」
恥ずかしいことを、サラッと言わないで欲しい。
「さ、腹も満たされただろうし、そろそろ訳を聞こうか。リブニットがリーダーだったな。なぜお前たちだけが馬車に乗ってたんだ?」
ドワーフ8名のリーダー、リブニット。
クセのある青い髪を持つ少年で、歳の割にしっかりしている将来有望のイケメン君だ。
「えーと、荒野で魔物に襲われて、逃げてる途中で奴隷商人のおっちゃんが外に放り出されたんだ。僕たちは馬なんて操れないし……」
奴隷商人だと?
ということは、この子たちは奴隷なのか。
「それで、そのまま馬車が暴走を続けたと」
「うん……」
「それならば
長走馬って、長距離を走れる馬ってことだよな。
馬はその気になれば倒れるまで走り続ける、と聞いたことはあるが。
《マスター、長走馬は荷馬車を引きながらでも一日百キロは走れます》
100km……もはや馬というより魔物だな。
「それで、なぜ奴隷になったんだ?」
「えーと、ボクたちはエルエス・ドーラのキジ村っていうところで生まれたんだけど、みんな親はいないから孤児院で育てられたんだ。でも孤児院のけーえー? に失敗したと言われて、突然追い出されたんだ。住むとこがなくなって、お腹ぺこぺこになってたから、みんなで畑の野菜を採ってたら……」
捕まって奴隷になったというわけか。
「エルエス・ドーラは貧富の差が激しく、奴隷も多いと聞く。鉱山送りにされなかっただけ運がいいだろうな」
鉱山送り?
地下で強制労働させられて、その代価としてご褒美にキンキンに冷えてるエールが美味えっていうのか?
ドワーフの国って怖い。
「あの、お兄ちゃん。ボクたちはどうなるの?」
「またひどいことされるよ……」
「スアニー、お家に帰りたい……」
「おいらも帰りたいな……」
「帰るって、スアニーもコットンもどこに帰るっていうんだよ……」
「おい。レース、泣くなよ……」
「そういうサテンも泣いてるじゃない……」
「リブニットがなんとかしなさいよ」
すごい怖がられてるが、よほどひどいことをされてきたんだろうな。
「お前たちは行く当てもないんだろ? それなら今日からこの村で暮らせばいい」
俺は深掘りせずに言った。
奴隷とはいえ、リブニットたちが悪さをするようには見えないし、子供たちには酷というものだろう。
「い、いいの? でも、ひどいことしない?」
「するわけねーだろ。毎日腹いっぱい食べさせてやれるし、ふかふかのベッドで寝れる。毎日風呂も入れるぞ」
「ホ、ホントに? それなら、みんなここで暮らそうよ!」
「「「毎日お腹いっぱい……」」」
「「「ふかふかのベッド……」」」
すると突然、赤いくせ毛に赤い髪飾りをした女の子が立ち上がった。
「ほーんと、リブニットは甘いわ。まただまされてるに決まってるわ。こんな荒野で毎日おいしいご飯を食べれると思えないもん」
俺と目が合った瞬間、プイッと顔を逸らした。
「ちょっ、ちょっとラミー、何てこと言うんだよ!?」
「はっはっは。息子よ、言われてるぞ。なに心配するでない。この村の領主である我が息子は、お前たちが思うような非道な人族ではない。それに美味い物であれば食うたばかりではないか」
「そうだよ、ラミーも美味しすぎて泣いてたくせに」
「な、泣いてなんかいないわよ!?」
「あんな美味しいもの初めて食べたな……」
「息子よ。この子たちはワタシと妻が面倒を見るとしよう。娘たちも巣立ってしまったからな。きっと妻も喜ぶ」
ドワーフの子供たちは、アイルに引き取られて帰っていった。
ま、俺には面倒見切れないので助かった。
《8名のドワーフ族が住民になりました》
《任務:〈No18〉を達成しました》
任務:〈No18〉ドワーフ族を住民にしよう。
達成条件:ドワーフ族を住民にする。
達成報酬:10開拓ポイント。
今日は疲れたので風呂に入って寝ようとするが、小腹が空いてなかなか寝つけない。
こんな時こそチャンスだと思い、俺はディスプレイを開いた。
【☆夜食フェス開催中☆冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は熱々ホカホカがモットー! 深夜限定! いざ、レッツ罪悪感!】
「夜食フェスだと……」
確かに深夜24時を回り、食って寝るは非常に罪悪感がある。
だが、もう俺の腹は止められない。
鉄:消費期限切れのゲテモノ。
銅:おにぎり、カップ麺、駄菓子。
銀:食堂のラーメン、吉田屋名物ミノタウロス丼。
金:特製魔葉ガニ雑炊。0kcalチョコレートパフェ。
虹:超夜食フルコース、究極夜食懐石、夜食全席。
今回は、ザ・夜食。
できれば軽いものがいいので、超激レアの〈虹〉は逆に引きたくないところだ。
仮に〈鉄〉が出れば、兵器として部屋に隠して再チャレンジする。
「シキさん、よろしくお願い申し上げます。俺は今、猛烈にチョコパフェが食べたいのです……」
毎度おなじみ「チーンッ」と受け取り口からトレイが出てくる。
「来たああああああああああああああああぁッッ!!」
俺は金蓋を開けると、光り輝くチョコレートパフェが出てきた。
今後はシキさんから、シキ神様と呼ぶことにする。
少なめのサクサクフレークと、大量のチョコアイスに生クリーム、パッキー一箱分とバナナ一本が突き刺さった、超豪快チョコパフェタワー(0kcal)。
これが異世界。
これがシキ神様の実力。
「う、ううううううううううめええええええええええええええええええええええええええええええぇッッ!!」
濃厚な甘さなのにいくらでも入る。
深夜なのに止まらない。
もはや止められない。
すべてを食べ終える前に、俺は初めて美味さで気を失った。
◇
現在の開拓ポイント:残3,565KP
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