第17話 食える魔物と食えない魔物
《一日経過しました。60KP獲得しました》
「ふぁ〜。よく寝たな」
自宅に帰ってちょっと昼寝でもと思ってたら、すでに夕飯時になっていた。
昼夜問わず薄暗いため、時間の感覚がなくなっている。
「そういえば、あいつら晩飯食べてないよな?」
俺は四人に
いつのまにやら全壊した廃材の山が綺麗さっぱり平地になり、半壊していた廃屋も修繕されていた。
「あ、領主様。とても素敵な家を用意していただき、心から感謝を申し上げます」
「お、気に入ってもらえて何よりだ。それよりこれは一体どういうことだ?」
「ご勝手ながら村のお手伝いをと思いまして、木材の山から使えそうな物だけを家屋の修繕に充て、残りは教会の方へ移動しておきました」
「あれだけの量をたった四人でやったのか?」
「いえ、木材を移動させたのはシルフィリア一人です」
常にボーっとしている末っ子のシルフィは、俺が思う以上にすごい子のようだ。
「それはすごいな。俺も廃屋の処理をどうするか悩んでいたんだ。助かったよ、シルフィ」
「ん。シルフィ風魔法得意」
「シルフィリアは村でも右に出る者はいない風魔法の使い手ですからね……」
エリスは村のことを思い出してしまったのか、暗い表情を見せる。
「シルフィは天才なんだな」
「ん。でもシルフィよりエリ姉が頑張ってた」
「わたしは家屋の修繕をしていただけですよ」
「エリス一人でここまで直したのか?」
「はい。わたしはこうしたことは幼い頃からしていましたので。あ、ルナ姉様とレーナは、北の森へ狩りに出かけていますが、そろそろ帰って来る頃かと思います」
ん?
北の森って、まさか帰らずの森か!?
あんな危険な森へ狩りに行くなど、命がいくつあっても足りないぞ。
「あ、噂をすれば帰って来ましたよ」
「おーい! 二人共手伝ってくれ!」
「相変わらず! ルナリス姉様は! エルフ使いが! 荒い! のです! わ!」
「あっはっはっ! 村一番の力持ちで有名なレーナなら、このぐらいどうってことないだろ?」
「ムキーッ、ですわ!」
ルナリスとレーナが、ロープに縛りつけられた魔物を引きずりながら言った。
「おいおい、あれは一体……」
体長5mの赤い毛並みを持つ巨大熊。
極太の毛で覆われた皮膚には、無数の切り傷と何本もの矢が突き刺さっていた。
《マスター、あの魔物はブラッディベアと断定します。帰らずの森からの道中で、マスターも一度は木陰に隠れて回避したA級の魔物です》
そんなヤバい魔物を、たった二人だけで狩ってきたのかよ……。
いや、それよりも魔物は討伐すれば光になって消えるはずだが、なぜ死体のまま残ってるんだろう。
《マスター、食用としての魔物は、肉に魔力が残るため、光りとなって消失することはありません》
え、何その意味不明な仕様……。
(それなら、食えない魔物はどうなるんだ?)
《魔力がドロップアイテムへと具現化させます》
異世界って不思議極まりない。
ついでに、あの森からここまでかなり距離があるぞ。
レーナ一人で引きずりながら帰って来るなんて、とてもじゃないが普通じゃない。
「おかえりなさい。ルナ姉様、レーナ」
「あぁ、今帰った。ほら大物が獲れたぞ。あ、シルフィ、その辺りで大丈夫だ」
「ん。了解」
シルフィリアが風魔法で巨大熊を浮かせ、ドサッと置いた。
《任務:〈No60〉を達成しました》
任務:〈No60〉住民に魔物を狩らせよう。
達成条件:住民が魔物を狩って来る。
達成報酬:100開拓ポイント。
《任務:〈No66〉を達成しました》
任務:〈No66〉住民にA級の魔物を狩らせよう。
達成条件:住民がA級の魔物を狩って来る。
達成報酬:10開拓ポイント。
「本当にルナリス姉様は困ったものです。あれほど猪の方がいいと言いましたのに」
「あっはっはっ。突然こいつが襲いかかってきたんだから仕方ないだろ」
「二人共、その様なことよりも領主様が見ていますよ」
「あぁ、悪いなダイチ殿。ちょっと食料を調達しようと思って北の森まで狩りに出かけていたんだ」
何、そのちょっとそこまで散歩してきた、みたいな感じは。
あの帰らずの森から普通に帰って来たんだぞ。
それも見たところ無傷だし。
「それで、その魔物は美味いのか?」
「もちろんだ。時間をかけて煮込まないと肉は硬いし血生臭くて食えないが、エリスが作れば最高のシチューができるぞ」
「はいはい。料理はいつもわたしの役目ですからね。それではルナ姉様。お疲れのところ悪いのですが、いつものお願いしますね」
ルナリスは、腰にかけた二本の短剣を握りしめると、目にも止まらぬ速さでブラッディベアを解体していった。
「いつも通りの見事なお手前でした。それではわたしは家に帰って早速調理にかかります。シルフィリア、お手伝いお願いね」
「ん。任された」
「領主様もよろしければ、ご一緒に召し上がりませんか?」
「お、いいのか?」
「もちろんです。それでは一時間ほどお時間をいただきますので、できましたらお迎えにあがらせていただきますね」
誰かの手料理を食べるなんて、いつ以来だろうか。
そもそも誰かと一緒に食べること自体が久しぶりだ。
楽しみではあるが、あのデカ熊が本当に食えるのか不安でもある。
ま、KPも節約できるし一石二鳥と思うべきだな。
「わたくしは湯浴びをさせていただきますわ。御領主様、それではまた後ほど」
エリス達は長屋へ帰って行った。
「ダイチ殿、あの井戸に立てかけていた弓のことで話があるのだが」
「弓? あー、そういえば適当に立てかけたものがあったな」
「て、適当にだと!」
「うわッ、なんだよ急に短剣なんて抜いてよ!?」
◇
現在の開拓ポイント:残720KP。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます