第14話 家屋というより屋敷ですが

【☆肉フェス開催中☆冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は熱々ホカホカがモットー! 本日限定! いざ、ニックチャレンジ!】


「お、ガチャイベもするのか。って、フェスでもなければ何そのニックチャレンジって……」


 スフィアと話し終えた時には、すっかり夜を迎えて夕飯の時間になった。


「ダイチ様、この白い魔道具は何でしょうか? このような物を見るのは初めてですが、これもダイチ様のお力によるものですか?」


 魔道具か。漫画で見ただけだが、確かにコレも魔道具になるな。


「そうだ、これで飯が出てくるんだよ。今は肉料理がメインになっているようだが、スフィアもやってみるといい」


 俺の言われた通り、スフィアは瞳を輝かせながらボタンを押した。

 どうやら俺が許可すれば、住民なら押せるようだ。


 鉄:消費期限切れのゲテ肉。

 銅:肉巻きおにぎり、カップ29、駄肉。

 銀:食堂のハーピー唐揚げ、居酒屋名物串カツ。

 金:特製ローストオーク丼、特上肉寿司盛り合わせ。

 虹:超豪華フル肉コース、究極肉懐石、満肉全肉。



 今回の料理は肉のオンパレード。

 中には意味不明な料理もあるが、変わらず〈鉄〉以外なら……いや、銅の駄肉も怪しい。


「ダイチ様、銀色のトレイが出てきました! 見た目以上にすごく重たいです……」

「あ、悪い。少しだけ待ってくれ」


 <マスターの必須品>

 村人のイス    5

 キャンプチェア  10

 村人のテーブル  10

 キャンプテーブル 15

 公園のベンチ   20

 

    <残り1,115KP>

ーーーーーーーーーーーー



 今日はアウトドアを楽しもうと、広場で食べることにした。


 イスとテーブルの用意がないので、慌てて召喚する。


「キャンプテーブルとキャンプチェアを二脚だな」


 キャンプテーブル:アウトドアに最適。軽量かつ折り畳み式のテーブル。

 効果:不壊

 必要KP:15


 キャンプチェア:アウトドアに最適。軽量かつ折り畳み式のイス。

 効果:不壊

 必要KP:10



「ここに置いてくれ」

「は、はい! ありがとうございます!」

「俺もやるか」


 三度目の飯ガチャだ。

 今回も頼むぞ、シキさん(白い自販機を略してみた)

 俺は両手を合わせて、シキさんにお祈りをする。


「今回は銀かな」

「それにしてもダイチ様は不思議な魔道具をお使いになるのですね」

「まぁちょっと変わって…アレ? いつもと演出が違うぞ。これはまさか……」


 銀の光から金へと変化し、そして金から七色の虹へ。


「これは一体なんですか!?」

「来たーッ! 大当たりだぞッ!」


 いつかこの日が来るだろうとは思っていたが、まさか単発3回目で大当たりが来るとは思わなかった。


《任務:〈No25〉を達成しました》

 任務:〈No25〉料理ガチャで超激レアを当てよう。

 達成条件:料理ガチャで虹色の蓋を当てる。

 達成報酬:10開拓ポイント。


 

「それじゃ、いただきます」

「ダイチ様のお力で作られた料理。きっと天にも昇るでしょうね。い、いただきます?」


 この時、俺は誤解していた。

 てっきりスフィアが当てた料理が、銀蓋だと思っていたことに。


「ちょっ、ちょっと待て。その蓋はもしかして……」


 スフィアが重そうに両手で蓋を開ける。


《任務:〈No21〉を達成しました》

 任務:〈No21〉料理ガチャで鉄蓋を当て開けよう。

 達成条件:料理ガチャで鉄色の蓋を開ける。

 達成報酬:10開拓ポイント。



「ふぅ、ようやく開、け…れ……?」

「く、臭えええええええええええええええぇーッ!! 早く閉じろ!」

「………………」


 ダメだ、スフィアが失神した。

 拠点全体に殺人級の悪臭が充満する。

 鼻が効かない。

 目から涙が止まらない。

 息をすると死にそうだ。


 必死の思いで鉄蓋を被せようとするが、めっちゃ重い。


「うおりゃーッッ!」


 蓋を閉じると、不思議と悪臭が消えた。

 あの鉄蓋だけは絶対に当ててはならない。

 死ぬかと思った……。


 もはや兵器でしかなく、拠点に何かあった時には、最終手段として使えるのではないかと思うほどの威力だ。

 諸刃の刃だが。


「あれ……? 私としたことがお食事中に寝てしまうなんて」


 ようやくスフィアが目を覚ました時には、何も覚えていなかった。


 俺はもう一度料理ガチャを回して、テーブルに置いておいた。


 ちなみに四度目のガチャは、正真正銘の銀蓋だ。


《任務:〈No23〉を達成しました》

 任務:〈No23〉料理ガチャでレアを当てよう。

 達成条件:料理ガチャで銀色の蓋を当てる。

 達成報酬:10開拓ポイント。



「なッ、なななななななんて美味しいのでしょうッ!! このお料理は何というのですか!?」

「あー、それは唐揚げだな。あと米とキャベツの千切りと味噌汁に漬物。それにレモンとマヨネーズも付いてるな」

「ダイチ様のお食事は王城やDPで使用するお料理よりも遥かに美味しいです。まさに天へと昇った気分です♡」


 まさに天へと召されかけてたけどな。

 ここは彼女のために黙っておこう。


 そんな俺は、超豪華フル肉コースを当てた。

 その名に恥じないほど豪華で、コース内容はフレンチそのものだ。


 一皿の量は少ないものの、その種類は50を超え、さらにシャンパンやワインも付いて、いい意味で気を失いそうになりながら飲み食いしている。


 いい意味で。


 ちなみにこの世界での飲酒は、16才からOKとのことだが、酔う気配は一向に無い。


「もうお腹いっぱいです」

「あぁ、俺もこれ以上食えないな」


 不思議なことに皿の料理を食べ終えると、次の料理の皿が、また目の前にポンッと出てくる。


「またお料理が出てきましたが、それは甘味ではないでしょうか?」


 まだあるのかと思ったが、そこには芸術のようなデザートが出てきた。

 俺はもう腹いっぱいなので、スフィアにあげる。


「…………ッ!!!」

「お、おい大丈夫か? おい、スフィア!」


 返事がない。

 スフィアは本日三度目の天へと昇っていった。



 あ、そういえばスフィアの寝場所がない。

 俺の家はいろんな意味で論外だし、かといって廃屋は可哀想だ。


 今のうちに召喚しておくか。


 <マスターの必須品>

 家屋(小) 25

 家屋(中) 100

 家屋(大) 400

 長屋(小) 50

 長屋(中) 250

 

   <残り1,090KP>

ーーーーーーーーーーー



 そういえば、スフィアは元第一王女だよな。

 コアルームもかなり広かったし、俺みたいな平凡な価値観では、部屋の大きさなんかもズレがあるだろう。


 この拠点の初めての住民だし、ここは新居祝いも込めて奮発してやるか。


 家屋(中):重厚な木造建ての3LDK。風呂、洋式便所のセパレート。エアコン、キッチン、家具付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:100


 家屋(大):重厚な木造2階建ての5LDK。露天風呂、大理石便所のセパレート。エアコン、システムキッチン、家具備品完備、庭付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:400


 長屋(中):重厚な木造建ての各部屋1LDKの連棟住宅。風呂、洋式便所のセパレート。エアコン、ダイニングキッチン、家具付。

 効果:不壊・清潔・防音耐性・環境耐性

 必要KP:250



 長屋か、確か共同住宅だったよな。

 

「ま、さすがに一人なら家屋でいいか」


 実際に召喚して見てみないと広さは分からないが、さすがに3LDKや5LDKもあれば十分だよな。


 俺にとって(小)サイズは、もはやトラウマでしかないので、そこは除外して、家屋(中)か(大)の二択。


 奮発するとった以上、ケチっては男がすたるというものか。


「よし、決めた」


《任務:〈No33〉を達成しました》

 任務:〈No33〉家屋(大)を建てよう。

 達成条件:家屋(大)を一つ召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。


《任務:〈No30〉を達成しました》

 任務:〈No30〉住民の家を建てよう。

 達成条件:住民の家を一つ召喚する。

 達成報酬:100開拓ポイント。



 「ドガーンッ!」と大きな爆発音と共に、家屋(大)が現れた。 


「い、一体何が起きたのですか!?」


 あまりにも大きな音で、スフィアが目を覚ました。


「これって家屋というより屋敷じゃないか……?」

「素晴らしいお家ですね。さすがダイチ様です」


 想像以上の大きな家、ではなく屋敷だった。


 スフィアは俺の家と勘違いしていたが、自分の家だと知ると、俺が住むべきだと言い張って聞かなかった。


 とはいえ、スフィアを家屋(小)に住ませるわけにもいかず、家屋(中)を新たに建てるのもKPを節約したい所。


 結局、この大きな屋敷に一階と二階に別れて住むことになった。


 ◇


 現在の開拓ポイント:残800KP。

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