第5話 いざ開拓

 休憩を終えた俺は、果てしなく広がる荒野を歩いている。


 どこまでも続く灰色の大地。

 死の気配を運んでくるような冷たい風。

 分厚い暗雲に覆われて、不気味なまでに薄暗い。

 枯れ果てた植物が地に朽ち果て、生命の息吹そのものを否定する。


 人はこの地を、死の荒野と呼ぶ。


「絶望しか感じねえ……」


 米粒サイズに見えた村が、ようやく見えた。

 あれが村? 

 いや、どちらかといえば……。


「あれってゴーストタウンだよね?」

《いえ、ゴーストヴィレッジと呼ばれています》

「どっちでもいいわ!」


 それにしても、なんにもない。

 人っ子一人、魔物一匹いない。


 あー、足痛い。

 風呂入りたい。

 喉乾いたし、腹減った。


「はぁ、あんな廃村にあるわけないよな……」

《あります》

「……マジ?」

《マジです》


 ◇


「やっと着いた……」


 ゴーストヴィレッジ。

 全壊した家屋が16軒と、今にも崩れ落ちそうな半壊の家屋が8軒。


 半径100メートルほどの静寂に包まれた廃村だ。

 間違いなくが出る。

 そんな雰囲気しかない。


「それで、本当に食い物があるのか?」

《あります。正確には今から作成していただきます》


 聞き間違いか?

 俺、料理なんてできないよ?

 毎日コンビニかウーパーだったし。


《この場所を拠点にすることを推奨します》

「いや、俺は飯をだな…」《この場所を拠点にすることを推奨します》

《この場所を拠点にすることを推奨しますッ》

《この場所を拠点にすることを推奨します!》

《この場所を拠点に…》「分かった、分かった! する、ここを拠点にする!」


《この場所を拠点にしました》

《拠点設置ボーナス100KP獲得しました》

《拠点ステータスを表示します》


 拠点:ゴーストヴィレッジ

 LV:1

 住民:0

 開拓:<召喚><?><?>

 任務:100

 スキル:<?><?><?>

 領域:半径100m

 KP:220(1日経過+10KP)



「お、拠点にもステータスがあるのか」

《マスターのご意向を元に作成しています》


 俺の意向?

 あぁ、ゲームのように表示された方が分かりやすいからってことか。


「拠点のレベルは関係あるのか?」

《レベルが上がると開拓やスキルが解放されていきます。また活動領域も広がります》


「どうやってレベルを上げるんだ?」

《拠点に住民が増えるとレベルが上がります》


「開拓の召喚って何?」

《召喚とは開拓ポイントを使用することで、施設や設備を召喚します。早速、開拓を開始しますか?》


「あ、ちょい待ち。<?>も教えて」

《<?>は現在使用不可ですが、レベルが上がることで使用可能となります》


「任務って何?」

《拠点に発生するミッションのことです。現在は100の任務があり、達成できればボーナス開拓ポイントを獲得できます》


「領域は?」

《マスターが開拓可能な活動領域のことです》


「スキルは?」

《拠点の特殊能力とでもお伝えしておきます。現在はすべて未開放のため詳細はお伝えできません》


「最後のKPって?」

《開拓ポイントの略です。施設や設備を作成するためのポイントで、24時間経過毎に10ポイント加算されます。また住民の数に応じて―・―・・》



 なるほど、だいたい分かった。

 まとめるとこんな感じだな。


 一日経過で、+10P。

 住民が一人増える毎に、+10P。

 俺のレベルが一上がると、+10P。

 任務を達成すると、+ボーナスポイント。

 拠点レベルが上がると、+ボーナスポイント。


 最初のボーナスポイントと、俺自身のレベルが12のため、合計220KPある。


 ちなみに俺は領主。

 住民ではないので、実質一日経過しなければ、住民を増やすか、任務を達成しない限り、ポイントが増えることはない。


 ま、こんなところに住民が来るかは置いておいて、早速始めるか。


 ◇


《現在の召喚可能な施設&設備を表示します》


 〈施設&設備〉<残り220KP>

 小屋  10KP

 井戸  10KP

 花壇  10KP

  畑  10KP

  堀  10KP

 土塀  10KP

  ・   ・

  ・   ・

 東拠ディスプレイランド 1,000,000KP

 西拠ディスプレイシー  1,000,000KP

 アニバーサルジパング  1,000,000KP

  ・   ・

  ・   ・


「あ、これ爺さんの時のやつだ……」


 100万のテーマパークとか完全に無視だな。

 それに花壇とか今必要ないし、KPとか見にくい。


 必要なものだけを厳選して見やすくしてほしい。


《マスター専用として再編成します……完了しました。再表示します》


 <マスターの必須品>

 村人の靴下  5

 村人のパンツ 5

 村人の服   10

 村人のズボン 10

 村人の靴   10

 革靴     100

 井戸     10

 料理ガチャ  10

 五右衛門風呂 20

 和式便所   20

 洋式便所   50

 家屋(小)  25

 家屋(中)  100

 

    <残220KP>

ーーーーーーーーーー



 <マスターの必須品>に変わってる……。

 別に革靴が好きなわけでもないけど、これって開拓だったよな……。


「ま、見やすくなったからいいか」

《何かご不満でもございますか?》

「い、いや、なんでもない……」


 さて、まずは飲み物が欲しい。

 試しに〈井戸〉を押すと、ディスプレイに詳細が映し出された。


 井戸:いつでも清涼な水を汲み上げることができる。

 効果:清潔・体力(小UP)・魔力(小UP)

 必要KP:10



 召喚するものには、それぞれ効果があるようだ。

 召喚をタップする。

 すると、目の前に古びた井戸が現れた。


「おぉ! すげえ綺麗な水だな」


 見た目とは裏腹に、どこまでも透き通った水が美しく輝いている。

 こんな場所に、一体どこから湧いてくるのだろうか。


 早速、桶の水を手ですくって飲んでみる。


「うッ! うううううめええええええええぇッッ!!」


 こんな美味い水は初めて飲んだ。

 まさか水で感動するとは思わなかったな。



《任務:〈No1〉を達成しました》

 任務:〈No1〉初めての召喚をしよう。

 達成条件:最初に何か一つ召喚する。

 達成報酬:100開拓ポイント。


《任務:〈No4〉を達成しました》

 任務:〈No4〉井戸水を飲もう。

 達成条件:井戸を召喚する。

 達成報酬:10開拓ポイント。



「お、任務クリアだ」


 こんな簡単に達成するのか。

 いや、ゲームなら序盤はサクッといけるが、中盤以降はほぼ無理ゲーみたいなものが多い。


 先行き不安なんだ。

 今は一に節約、二に節約だ。


 ◇


 現在の開拓ポイント:残320KP。

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