第25話「女の子の気持ちよさ、教えてあげる」
あっという間にチェックインの時間になった。ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたいで、疲れた。でも、昨日までと違って幸せな疲労感だ。
母が予約してくれてた旅館は思ったより豪華で、気圧された。未成年の二人だけでのチェックインは少し緊張したけど、母がちゃんと手配してくれてたみたいで、あっさりと部屋に通された。少し部屋でゆっくりしたかったし、結構買い食いしてお腹は減ってなかったので夕食の時間は七時にしてもらった。
部屋は離れで、和室と洋室があった。和室にテーブルが置かれてて、洋室には大きなベッドが二つ。どちらの部屋も凄く広くて持て余してしまいそうだ。さらに、専用の露天風呂まであった。
「めっちゃ豪華。ママ、随分奮発したんだ」
「びっくりだね」
「とりあえず、汗かいちゃったし、温泉入る?部屋に露天風呂とかこんなのはじめてだよ」
「そだね」
言うとすぐにでも温泉に入りたくなって、私は服を脱いだ。ユミ姉ちゃんの前で裸になることにはもはや抵抗がなかった。私が下着だけになると、急にユミ姉ちゃんが抱きついてきて、強引にキスされた。
「凜ちゃん、かわいすぎて私我慢できなくなっちゃった」
そのまま畳の上に押し倒された。
「急にどうしたの?」
私は急展開にちょっと焦ってしまった。
「ゆっくり二人で愛し合う時間、なかったじゃん。もう、私限界なんだけど」
冗談めかして言うわけでもなく、切実な顔だった。ボクはそんな彼女がたまらなく愛おしく思った。
「でも、ボク汗臭いから恥ずかしいよ。汗流した方がいいでしょ」
「そのままでいい。そのままがいい。凜ちゃんの匂い大好き」
彼女はボクの腋に鼻を埋める。くすぐったくて、恥ずかしくて、でも何故か切ない気持ちになった。
「だめだって、恥ずかしいよ」
言いながら、ボクは抵抗はしない。彼女に身を委ねる。そして、愛されてるという自覚で胸が一杯になった。幸せ。
「恥ずかしがってる凜ちゃんも好き。全部好きだよ」
そう言いながら一つになりたいという合図を送ってくる。
「ちゃんと女の子になってくれてありがとう」
彼女はとても優しくて、ボクは少し震えた。男の子だった頃とは明らかに違う感覚。これが、感じるというヤツなんだろうか。
「作り物だよ」
「そんなことないよ。凜ちゃんはちゃんと女の子なの。私のかわいい女の子」
優しくされると、感覚がソコに自然と集まっていくのがわかった。どんどん、胸に切なさが蓄積していく。苦しくて、息を吸っても酸素が身体に入っていかないような感覚。息が荒くなる。でも、苦しいのに嫌じゃなかった。もっと、って求めたくなるような不思議な感覚だった。
「声、出ちゃいそうだったら無理しなくてもいいからね」
そう言われると、切なさが溢れて、吐息が漏れる。
「恥ずかしいよ」
「そうよ。でもね、女の子は恥ずかしくても反応しちゃうの。むしろね、恥ずかしいから気持ちいいのかもね」
何も考えずに当たり前のように彼女の前で裸になったのに、今はすごく恥ずかしい。でも、それも悪くないなんて考えていた。
「凜ちゃん、ちゃんと女の子になってるよ」
ボクはちゃんと愛されているという反応を示しているらしい。女として。自分ではよくわからないけど、ちゃんと女の子になった。ユミ姉ちゃんに愛されるためにこの身体になったんだから当たり前だ。少しだけ、がんばってきた自分が誇らしかった。でも、ちょっと恥ずかしい。
「だから、恥ずかしいってば」
もう、他の言葉が見つからない。切なくて、ドキドキして、頭と心臓が壊れてしまいそうだ。でも、壊れてもいいからやめないで欲しい。ずっと、ずっと彼女に愛されていたい。
「それってさ、気持ちいいってこと?」
「わかんないけど、ユミ姉ちゃん好き」
「私も、凜ちゃん大好きだよ」
そっとキスをしてくれた。唇まで気持ちいい。身体を重ねただけで、ちょっとした刺激で背筋が震える。月並みな表現だけど、電撃が走るようだ。
「ボクばっかり、恥ずかしいってば」
「今日は徹底的に凜ちゃんを責めるって決めてたんだから。徹底的に楽しむし、楽しませてあげるから覚悟してよね」
「ユミ姉ちゃんってドSじゃん」
「今さら気付いたの?こんな私のこと、嫌い?」
「大好き」
「だったらいいじゃん。やっぱり私達、相性ぴったりだよ。私には凜ちゃん以外にありえない。凜ちゃんも私以外にありえないでしょ」
「うん」
話ながらも、ユミ姉ちゃんは止まらない。私も逆らわない。それどころかもっと求めるように身体を彼女にきつく押し付ける。
「女の子の気持ちよさ、教えてあげる」
もう、知っちゃったかも。でも言葉が出てこなかった。何かせり上がってくるような感覚があって、頭に抜ける。なんだかわからない。イッたという感覚なのかもしれない。でも、ボクは呆然とするばかりだ。ユミ姉ちゃんも手を緩めない。
「女の子の快感は終わらないんだから」
頭がおかしくなりそうだ。でも幸せで、どうすればいいのかわからない。確かに気持ちいいんだけど、それ以上に幸せだった。
「なんか、全部どうでもよくなってきちゃうね。この時間がずっと続けばいいのに」
「ずっと続けて行こう。二人で一緒でいれば、ずっと幸せだよ。他には何もいらないよ」
何もいらない。確かにそうだって思った。父さんも家族なんて面倒くさい。秘密なんてどうでもいい。
「凜ちゃんのことは私がずっと守るから心配しないで」
嬉しくて、幸せで涙が零れる。女の子のボクは泣き虫だ。
「お父さんもお母さんもいなくて大丈夫でしょ?本当に凜ちゃんを大切にできるのは私しかいないんだから」
ボクはぼんやりしながら彼女の言葉を聞いていたので、この時は何も感じなかった。
お母さんもいなくて大丈夫。どうしてそんな言葉がここで出てきたのか、それを考えようともしなかった。ボクは女の子としてのはじめての悦びに完全に溺れていた。
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