第3話 使命と生きる理由
「魔法のやり方を、教えてください!」
「近いですわ、ニクス」
衝撃的展開から七時間(時間の概念は共通していた)が経ち、寝床で身体を休めるヘメラの精神世界内では、真夜中の茶会が開かれていた。
キッカケは、再度ゲームの話に戻った時のことだった。
『私、【聖女】なのでなんでも出来るのですわ、
『そういえばヘメラちゃんって、どうやって聖女に選ばれたの? 教会とかの抽選?』
前世では、病院で寝たきりで小説や漫画を電子書籍で読むくらいしか出来ず、ゲームの知識は全く無かった。
検査中に、仲良くなった看護師に
だからこそ、知らない事を素直に知らないと言えるのは自分の美点だと思いつつ、質問をする。——選ばれるのって、何を基準に?と。
『先ほども言いましたが、私は神に選ばれて【聖女】になったのですわ。この世に生を受けた時から【聖女】で、息絶え塵になるまでそれは変わりませんわ』
対して、ヘメラの答えは一貫して変わらない事に、悩ましげに首を傾げる。そもそも【聖女】は何をするのか自体は分かっているが、それでも一つ引っかかるものがあった。
それは————
『聞きにくいんだけど、神様って本当にいるの?』
神、についてだった。
早い話、ニクスは神を信じていない。居るのなら、
『いますわよ。というか、聖女は代々“神の代行者”と呼ばれる事もあるのですわ。…ちなみに先ほどの補足ですけれど、聖女は死ぬと新たな聖女が生まれますわ』
『つまり一世代に一人…ってコト?』
デリケートな話題も、アッサリと答えるヘメラ。NGな話題は無いのか、と驚きつつ次なる疑問に話題を変える。
『神の代行者?何それ…』
『その名の通り、神のように人々を導く。そして苦難や絶望があれば、それを打ち払うのが【聖女】の務めですの。空を飛んだり、癒しの神聖な術を使えますの』
端的に言えば民衆の想像するような神の力を自由に行使出来ますわ、と平然と言ってのける。
いつの間にか、二人が囲むテーブルには紅茶と今日いただいた夕食が配置されていた。
頬を緩ませながらかぶりつくヘメラを他所に、ニクスは懇願をしたのだった。
・・・・・・
・・・・
「魔法、ではありませんわ」
「えっ?」
神妙な顔持ちになったヘメラに、ニクスは面食らったように驚いた。横の積み重なった皿にも驚いたが、こちらは触れないようにする。
「私が使う術は、“聖なる神の術”、聖神術ですわ。その魔法、呪術、魔術は教会関係者の前では言わないように」
釘を刺すように、フォークでケーキを切り込みつつ口を開く。
至福の表情をしながら話すヘメラに、逆にどんな顔で話を聞けばよいのか分からなくなってきたニクスはそれに頷く。
「わ、分かったよヘメラちゃん。それで神聖術の方は…」
「良いですわよ、許可しますわ許可。はい、これで貴女も神聖術が使えますわ」
「軽っ」
思わず敬語を崩してしまうほど、即座に許可を出したヘメラに驚く。それで良いのか神の代行者よ。
ヘメラは、理由があると言葉を続ける。
「私、明日からやる事出来ましたの。ですから、この身体で民衆を導くのは、暫くの間貴女に任せますわ」
これはチャンスだ、とニクスは思った。
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