第5話 ~武具店【よろずや】~
棚に並んでいる商品の種類は少ないが、一つ一つ丁寧に飾られている。
(まさに初心者向けの武器だな。とりあえず情報を開示してみるか)
注視して確認すれば一瞬で武具の性能が分かる。
ということで、一番近くにあった片手剣を手にとってみた。
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種類:鉄の片手剣
攻撃力:10
属 性:無
効 果:筋力+2 器用さ+2
条 件:筋力4
制 限:戦士系職業のみ装備可能
詳 細:鉄で作られた片手剣。
切るというよりも叩くことを目的とした武器。
所有者:武具店【よろずや】店主
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(なるほど……数値的には微妙だけど、重さも丁度良いし手に馴染む感じがするな)
柄を握って軽く振ってみると、風を切るような音が聞こえた。
試しに片手で持って振り下ろしてみると、刃先が床にぶつかって鈍い音を立てる。
(うん、悪くない感じだな)
その後もいくつかの武器を手に取って感触を確かめていると、隣に立っていたマリンが声をかけてきた。
「ねえ、そろそろどれを買うのか決めた?」
「うーん……そうだな……」
俺は手に持っていた槍を元の場所に戻し、大きめの剣へ手を伸ばす。
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種類:鉄の両手剣
攻撃力:25
属 性:無
効 果:筋力+5
条 件:筋力15
制 限:戦士系職業のみ装備可能
詳 細:鉄で作られた両手剣。
切るというよりも叩き潰すことを目的とした武器。
所有者:武具店【よろずや】店主
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「これは……重いな……」
持ち上げてみると、想像していたよりも重かったため顔をしかめてしまう。
その様子を見ていたマリンが呆れたように首を振る。
「制限はなくても、条件を満たしていないと装備できないわよ」
「わかってるよ」
そう言いつつマリンに視線を向けるが、何も持っていない。
俺を急かすわりには、買う物を決めていないようだ。
「なあ、お前は買わないのか?」
「え? なんで私が買わなきゃいけないのよ?」
「ん?」
不思議そうな表情で聞き返されてしまった。
(いや、俺がおかしいのか?)
マリンはどうやって戦うつもりなのだろうか。
数秒間見つめ合っていたら、マリンが思い出したかのようにポンと手を打った。
「あ、そっか! トールさんには見せたことなかったわね」
納得したようにうんうんとうなずくマリンが人差し指を立ててクルリと回す仕草をする。
指先に魔法陣のような模様が浮かび上がり、小さな光を放ったかと思うと、マリンの手には青い棒状の杖があった。
「……それは?」
見たことの無い現象に驚きつつも尋ねると、マリンは鼻高々といった様子で答える。
「ふふん! これが私の【創世の杖】よ!」
「マジかよ……」
マリンが高々に掲げた杖は先端に大きな透明の宝石が付いている以外はシンプルなデザインだ。
長さは俺の身長より少し短いくらいで、杖全体から神聖な雰囲気を感じる。
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種類:創世の杖
攻撃力:500
属 性:神性
効 果:魔力+50% 器用さ+30 知力+50
魔法効果100%上昇
条 件:知力80
制 限:聖職者のみ装備可能
詳 細:神々が作り出したとされる聖なる杖。持ち主を選ぶ。
創造神が愛用したとされる杖。特殊な能力があると言われているが不明。
神の加護を受けた者が使うと威力が増す。
所有者:マリン
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(チートアイテムじゃねえか!)
思わず叫びそうになったがなんとか堪える。
俺がアポカリプスオンラインの最後のボスを倒したときでもこんな武器は持っていなかった。
「どう? 凄いでしょ!」
得意げな顔で聞いてくるマリンに、素直に頷いてみせる。
「凄いな。他にはないのか?」
一応聞いてみると、マリンは残念そうに首を振った。
「私が持っている武器はこれだけなのよね」
(まあ、そうだよな)
この杖と同等の物があればとっくに俺へ渡しているはずだ。
しかし、創世の杖を持っているマリンがいればどんな敵が現れても怖くない気がする。
(頼りっぱなしは性に合わない。俺は今の最善を考えよう)
マリンの背中に隠れてモンスターと戦うなんてこと俺にはできない。
それに、俺の分の武具だけを揃えればよくなったので、予算にだいぶ余裕ができる。
(どうしようかな……じっくり選ぶか)
それからしばらく店内を見て回った結果、最終的に購入した武器は以下の通りとなった。
◆
鉄の片手剣:一本
鉄の両手剣:一本
革の胸当て:一枚
革の肘あて:一組
◆
俺が使うのは片手剣と防具だけで、両手剣は能力変換用で購入した。
この後に回復薬などの必需品を購入する予定だ。
「じゃあ、冒険者ギルドへ向かうか」
「やっと冒険が始まるのね! 待ちくたびれたわ!!」
支払いを済ませてから、武具店を出た俺たちは街中にある冒険者ギルドへ向かう。
大通りを歩いていると、正面から見覚えのある人物が歩いてきた。
「おっ!? 今日サボりの二人じゃないか!」
その人物はサイモンさんだった。
サイモンさんは俺たちを見つけると、手を振りながら駆け寄ってくる。
「よう、元気そうだな」
「こんにちは、サイモンさん」
「あんたも元気そうね!」
俺とマリンが挨拶すると、サイモンさんはニヤリと笑って口を開く。
「今日は二人でデートでもしているのか?」
「これからモンスター退治にいくのよ。朝からその準備をしていたの」
「そうなのか? てっきりデートかと思ったぞ」
「私がトールとデート? 面白い冗談ね」
楽しそうに話す二人を見ていたら、サイモンさんが険しい顔を俺に視線を向けてきた。
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