第3話 河原で出会った、この妖精の正体って?生徒会たちの言っていた「知ったかぶり」、みたらし団子バーベキューの魔法がかかったのか?

 「おや。これは、いけませんね!」

 「だ、だれだ!」

 河原で彼がふり向くと、メガネが光る、メタボな妖精が立っているのがわかった。

 「背中から、羽根が生えている?」

 妖精にしか、思えなかった。

 「ここで、火を使うとは!河原で、みたらし団子を焼いて食うとは!マニアックな不良男子、だね!」

 「ちぇっ…変なのに、つかまった」

 「君?何か、言った?」

 ずいぶんと腹の出ていた、中年男性な妖精だった。

 「…アゴも、たぷたぷじゃないか」

 「君、高校生かね?」

 「ええ、まあ」

 「スラ○ダンクの映画は、見たかね?」

 「はあ?見ましたけど…」

 「昔、連載されていたときは、青春の汗がテーマの漫画だったように思う」

 「…」

 「だがね。新作では、身体の動きがテーマで描かれていたように思われる」

 「…そうですか」

 「バスケも、当時とはルールが変わった。興味深い」

 「え?」

 「昔は、クオーター制じゃなかった」

 「…」

 「クオーター制も、良いねえ。君は、クオーター制のように人生が分割して楽しめたら良いと、思わないかね?」

 そこで彼は、大きな失敗をしてしまう。

 「ああ、はい、はい。クオーター制も、昔との大きなちがいですよね。知っていますけど…」

 ついつい、知ったかぶりをしてしまったのだ。

 本当は、良く知らなかったというのに。

 「下手に言い返さずに、相手に合わせなければならない」という気持ちが、先走っていたのか?

 「しまった…!知ったかぶりを、してしまったか?」

 あわてる、彼。

 もう、とぼけるしかない!

 「俺の知らないことばかりの話を、ありがとうございます、おじさん!」

 すると、妖精おじさんの顔が、パアッと明るくなった。

 「さらば!河原でみたらし団子を焼いて食う、不良な男子よ!」

 チャリンコにまたがって、どこかへ走り去っていく。

 「あれ、飛ばないんですか?」

 そういう、傷口を広げそうなことは、口に出さなかった。

 「何なんだよ…」

 翌日も、彼は、バスケ部にいっていた。

 「あ…、今日は、珍しいな。タケザワじゃない先生が、きているぞ」

 ジャージ姿のおじさんが、部員たちに、指導をしていた。

 「あのおじさん…あの人に似ているよな。高校の、ヤンザイっていう先生。腹、出ているしなあ。あいつまで、思い出す」

 あいつとは、河原で出会ってしまった、妖精おじさんのことだ。

 「こうして、ゲームを組み立てたほうが、良いでしょうね」

 「はい、ありがとうございます!」

 部員たちにアドバイスを送る、おじさん。

 「良いなあ。俺も、身体こわしていなかったら、ああいう、丁寧な指導を受けられたんだろうけれどなあ…」

 無視をされているようで、気分が悪くなってきていた彼。

 くやしい…!

 彼は、先生の前で、土下座をしていた。

 「あのう、俺…」

 「何ですか、君?」

 「バスケが、したいんです!今からでも、バスケ部に入部させてください!バスケ、やり直したいんです!」

 「そうか」

 「俺、あきらめきれません!」

 そのときだ。

 いつかに聞いたあの言葉を、聞くことができたのは!

 「そうだね、君?あきらめたら、試合終了ですよね?」

 「…あ、ああ!」

 良く見れば、おじさんの口元には、いつかに見たヒゲがたくわえられていた。

 「あ!やっぱり、あなたは、ヤンザイ先生!」

 彼のほほに、涙が流れてきた。

 「うん、うん。バスケ部に、きなさい!」

 先生が、ジャージを脱ぎはじめる。

 「あ、ああ…!」

これは、驚くのも無理はないだろうな。




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